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第八章 革命 Ⅰ

 翌朝。

 ほどよく飲み、食べて、ゆっくりと休養をとり朝日が昇るとともに目を覚ます。

 久々の、爽快な朝だった。

 シァンドロスはさっぱりした顔をして、整列する神雕軍の前に立つ。

 その横にコヴァクス、ニコレット、ソシエタスにバルバロネ、クネクトヴァ、カトゥカ。これらは、コヴァクスとバルバロネをのぞき、神妙な顔をしている。

 神雕軍の兵士がそれぞれの愛馬の手綱を引き、主に託せば、シァンドロスらは威勢よく愛馬に跨り。それに神雕軍の騎士も続く。

 シァンドロスの愛馬、グリフォンも意気軒昂に鼻息は荒い。

「いざゆかん」

 わずか五十余の人数であるのに、まるで大軍でも指揮するかのようにシァンドロスは大喝して、先頭で駒を進める。

 ゆくさきは、グロヴァーニク地方。

 そこはリジェカの南西方にあり、街もあるが山もあり、その山には、山賊がこもり周囲に威を撒き散らしているという。

 リジェカの王ポレアスは軍隊を派遣したものの、敢え無く敗退。グロヴァーニクの太守は王に付き従い手柄を立てることばかり考えて、権力争いのための戦争にやっきになって、グロヴァーニクの盗賊たちはほったらかし状態であるという。

 そんなことだから、跳梁跋扈のしたい放題。

 それでどうなったのか。

 それは、いやというほど見せ付けられた。

 シァンドロスが語ったことは、こうだ。

 なまじ王侯貴族の力を借りれば、恩返しを強要され、無益な戦争に駆り出されかねない。それを防ぐためには、独自の軍事力をもつしかないが、その軍事力をどうやって手に入れるのかと言えば。

「このご時勢。盗賊山賊など目隠して歩いても探り当てられるほど溢れている。それらを倒せば、武器や食料が手に入る。さらに、力あるものが新たに現れたとなればその下につきたいという者も出、軍隊をも手に入れられよう。それがオレの考えだ」

 これは下手をすれば、盗賊山賊働きをしていた悪者を仲間にしかねない、いや盗賊山賊そのものの考えではないか。

 騎士のすることではない。

 危ない考えであると、ニコレットは危惧をしめしたが。

「改心すればよし。せねば、斬れ」

 これでおしまいである。

 万が一負けたら、など考えず、自分たちが勝つという前提でものを考えている。

 大胆不敵というのか。

 いや、これしきのことで大胆など言っては、シァンドロスは「そんな小さいことで」と笑うであろう。

 しかし、でも、と反論を試みたものの、兄コヴァクスが、「やろう」の一点張りなものだから、反論反対のしようがなかった。 

(お父さま、お母さま、お許し下さい)

 心の中で父母に詫び、ニコレットは兄の後ろをついていった。

 兄の背中から、なにか、炎でも噴き出すのではないかと思わせるものがただよっている。

 五十余の軍勢は、疾風のように駆けた。

 わずか五十余にすぎぬ小勢でありながら、自信に満ち溢れ。

 それは人を生み文明を生んだとされる神話の地、エラシア地方に伝わる神話の英雄たちの物語の真っ只中にいるかのように。

 いや物語の真っ只中どころか、自分たちを神話の英雄としているかのように。

 見よ、シァンドロスの輝かしい顔を。

 まだらの駿馬グリフォンは、シァンドロスを乗せ後ろを置いてゆきかねぬ勢いで疾駆する。それに対し兄はどうだ。焦りと悲壮感でいっぱいになり、必死になってシァンドロスの後ろを駆けている。

 一人は夢の中に、一人は霧の中に。

 色違いの瞳は、兄と王太子の背中を交互にみつめる。

 不意にシァンドロスは後ろを振り返った。

「意気込め。勝利の女神ナイケニーは祝福の接吻をしたくてうずうずし、我々を待ちわびているぞ」

 それは兵士たちに語りかけているとともに、コヴァクスにも語りかけていた。

(まあ)

 勝利の女神ナイケニーを、まるで娼婦のように言うのか、とニコレットは内心呆れた。

 気を張り詰めているコヴァクスの心をほぐそうと、シァンドロスなりに気配りしたのだろが、コヴァクスは無言。

「ふっ……」

 ひたむきに前を見つめるコヴァクスに、シァンドロスはやれやれとおかしそうに前に向き直った。

 その直前、ニコレットを見つめた。

 ニコレットはそれを無視した。その次にバルバロネに視線が移り、バルバロネはいたずらっぽく笑い返した。

 戦乱で荒れた荒野を駆けて、グロヴァーニクが近づく。

 その間、見たくないものを何度も目にした。

 戦乱で荒れた土地に、難民たち。

 コヴァクスや神雕軍が駆けるのを目にした人々は、目を丸くし、何事かと驚き呆然と見送ってゆく。

 となれば、リジェカの役人なり太守なりの耳に入るであろう。

「我々は義によって、グロヴァーニクにはびこる山賊どもを退治しにゆく。待っていろ!」

 コヴァクスはあらん限りの声で叫んだ。

 やましいことはない。なら堂々としておればよいのだ。

「そうだ、義によって、賊をたおす」

 シァンドロスも続いて叫んだ。

 そしてそのあとは……。

 さすがに言わない。

 まさか堂々と、

「現リジェカ政権をたおし、自分たちがリジェカの王になる」

 とは言えなかった。それを言えば賊や政敵に向けられている矛先が自分たちに来るのはわかりきっていた。

 まだ力を十分もっていない、まずは手ごろな賊を平らげ、それらを吸収して力とするのだ。

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