表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/224

第七章 試練はつづく Ⅳ

 ペーハスティルオーンも当然一気に飲み干し、コヴァクスも負けじと飲み干す。バルバロネも、飲み干した。

 他は、ちびちびと、舐めるように酒をすすった。

「さて話だが……」

 シァンドロスが腹のうちを語る。それと同時に、それぞれの出自を語り合った。ソシエタスの馬は、あの争いの最中どさくさにまぎれて殺されてしまった、という。

 バルバロネといえば、彼女自身が自分の出自をよく知らず。根無し草の傭兵団の中で物心つき、バルバロネと呼ばれていた、ということにシァンドロスは興味津々だった。

「その名、バルバロイ(蛮族)から来てるな。それにその褐色の肌、そなたはるか東方、タールコの東方に位置するタータナーノ国の出のようだな」

「らしいね」

「オレは、そのタータナーノに行ってみたい」

「は……?」

 バルバロネは、ぽかんとする。タータナーノに行きたいなど、それにはまずタールコが立ちはだかるというのに。

 バルバロネが育ったのは、金でどこにでも雇われる庸兵団で、時にタールコの側につき時に旧ヴーゴスネアの国々についた。タールコの側にいるとき、東方遠征に行かされそこで数名の捕虜を手にした。その一人がバルバロネだった。

 バルバロネは語る。

「女の身なもんだから、男に付け狙われてねえ。それがやだったから、斧振り回して傭兵稼業さ。はっはっは」

 酒が入り、悲壮感も吹き飛んで。あっけらかんと笑う。ニコレットは気の毒そうにしているが、バルバロネにはむしろ迷惑そうだった。

「その傭兵団も、戦争でしっちゃかめっちゃかにやられてお終い。それから、難民相手に小銭稼ぎ」

 と言いながら、金は銅貨一枚も受け取っていない。彼女もまた難民だったのだが、武器を手に取り戦うものだから、護衛の傭兵そのものだった。

「ま、その難民ももういないけどねえ」

 しみじみと語る。それを、シァンドロスは、興味津々に見聞きしている。

(おやおや)

 ペーハスティルオーンはさりげに、シァンドロスの様子に気付いた。王太子は、ニコレットに続き、バルバロネにもただならぬ興味を抱いたようだった。

(英雄色を好む、とはよく言うものだ)

「それで、王太子のお考えは、本気で言っているものでございますか」

 話が横にそれそうなので、ソシエタスはさりげに戻す。  

 コヴァクスらは、聞き漏らすまいと聞き入っていたが。話を聞き、しかめっ面のまま、

「うーむ」

 と酒を飲む以外のことはしなかった。

 考えつかなかった。

 一瞬、「馬鹿にするな!」と飛び上がりそうにもなった。が、どうにか堪えた。

「なまじ王侯貴族の力を当てにしても、ろくなことがないからな」

 自分こそ王侯貴族ではないか。しかしシァンドロスは、妙にそこらへんの自覚がない。それは新興勢力の王の王太子であるからだろうか。

「赤い兵団のようになる、とはそのことだったのですな」

「そうだ。ソシエタス、といったな。お前は話のわかる男のようだ」

「いえ……」

 シァンドロスの話を聞いて、コヴァクスは、ふうとため息をついた。

「やろう」

 もう、その一点張りである。他に道が、あるかもしれない、しかし見つけられない以上は、シァンドロスの提案を受けるしかない。

 コヴァクスは、これほどまでに今の自分の立場を、惨め、と思ったこともない。しかし、自由、とも少しながら思っていた。

 いわば、

「ままよ」

 と成り行きの勢いにまかせていた。

 もしドラゴン騎士団健在であるならば出来ないことではある。死者の国で父や母がどう思うかわからぬが、どうにも止められないものを、コヴァクスは感じて仕方がなかった。

 ニコレットは、無言。コヴァクスほどでないにしても、ほぼ同じ考えのようだ。

 しかし、シァンドロスの視線が気になる。

 それが気になって、静かにもの言わず視線を合わせないようにしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ