あとがき
このたびは、ドラゴン騎士団戦記をお読みくださり、ありがとうございました。
この作品は、筆者・赤城康彦が世界史に興味をもったことがきっかけで書きはじめたファンタジー小説です。
ファンタジーといえば、魔物や魔法がつきものですが。実在の歴史をもとに架空歴史小説を書きたかった筆者は、魔物や魔法を一切出さなかったのであります。
さて、付録というか。実在の歴史をもとにしているのですから元ネタがあるわけで。そのネタを明かしてゆきたいと思います。
舞台は東欧ハンガリーから中東ペルシャ、いまのイランあたりまでをモデルにしています。が、すべてを舞台に取り入れているわけではなく。アフリカ大陸やアラビア半島など割愛している部分もあります。
オンガルリはハンガリーがモデルで。ヴーゴスネアは旧ユーゴスラビア。ヴーゴスネアから分裂した国々ですが、ソケドキアはマケドニア、リジェカはクロアチアにある都市リエカ(Rijeka)からとっています。他はオリジナルの名前です。
エラシアはギリシャ。
タールコおよびアスマーンはオスマン・トルコをモデルにしています。
古来、東欧から中東は東西に帝国の興亡があり、中世になるとキリスト教圏とイスラム教圏が覇を競い合っていました。
それは東西の文化や様々な人種民族が入り交じることを意味していました。
筆者もそれを再現しようとしたのですが、さてそこまで力及んだかどうか……。
ドラゴン騎士団は実在する騎士団で、wiki
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E9%A8%8E%E5%A3%AB%E5%9B%A3)
で調べてもらえればわかります。
主人公兄妹の、小龍公コヴァクスと小龍公女ニコレット。これが色々とごちゃまぜなんですが……。
この名は、ハンガリー人女性レーサー、コヴァクス・ニコレット選手(通称Niki Kovacs)からとったものです。
実は、筆者は車やバイクも大好きでユーチューブでよくレース関係の動画を見てるんですね。そこで、コヴァクス・ニコレット選手のことを知ったのでした。
その父、大龍公ドラヴリフトはオリジナルですが。母であるエルゼヴァスは、かのエリザベート・バートリーをもじったものです。
お察しの方もいると思いますが。物語の中で、若い娘の血をもって美しさをたもっていると言いがかりをつけられてましたが、それはエリザベート・バートリーの逸話をもとにしたものです。
また、大龍公に小龍公、小龍公女という称号は、日本史の南北朝時代に活躍した武将で、大楠公と呼ばれた楠木正成と、小楠公と呼ばれた息子、正行をヒントにし。
また、小龍公はルーマニア語ではドラキュラといい。龍の子を意味します。ドラキュラと、また串刺し公と呼ばれたヴラド・ツェペシュの父は実在したドラゴン騎士団に所属し、ドラクル、龍公と呼ばれていたんですね。そのため、その息子であるヴラド・ツェペシュはドラキュラ、小龍公と呼ばれていたんですね。
ドラキュラは元来、吸血鬼を意味する言葉ではなかったんですね。
まあほんとに、ごちゃまぜですね(^^;
あと、クネクトヴァとカトゥカですが。これはスロヴァキア人の女性歌手カタリナ・クネクトヴァ(Katarina Knechtova)からとっています。ヨーロッパではエリザベート・バートリーのことが映画化されて、その主題歌を歌っていたんですね。これもユーチューブで知りました。
シァンドロスは、これは古代中国の武将、項羽と、東欧からインドにいたるまでの大帝国を一代で築き上げたアレクサンドロスを合わせたものです。
項羽とアレクサンドロスは、個人的な感想ながら、どこか似ているような気がするんですね。国名のソケドキアも、項羽の国、楚とアレクサンドロスのマケドニアを混ぜ合わせたものです。
もし項羽が劉邦に敗れることなく天下を獲っていたら、東洋のアレクサンドロスと呼ばれたかもしれないなあ、と。
イヴァンシムとダラガナ。これは、サッカーのイビチャ・オシム氏(通称イヴァン)とドラガン・ストイコビッチ氏からとったものです。ともに日本で大変有名ですが、ヴーゴスネアのモデルとなったユーゴスラビアの出身なんですね。
赤い兵団はストイコビッチ氏がかつて所属していたレッドスター・ベオグラードをヒントにしたものです。
そして一大決戦となったガウギアオスの戦いは、アレクサンドロスがペルシャ軍を破ったガウガメラの戦いをもとにしています。ガメラに対してギャオス、というわけでした。
様々なことを元にしながら書き上げた当作品ですが、一番のコンセプトは、歴史で遊ぶ、でしょうか。
ただ、ユーゴスラビア内戦は遊ぶには時代も近く重過ぎるものがありましたが。人類の歴史について自分なりに思うこともあったので……。
以上、それらを元にしながら、思った以上の長編になってしまいました。
このような大長編を書くのも初めてだったため、途中で書きあぐねて一ヶ月以上も更新できなかったこともありましたし。
途中で投げ出したくなる誘惑にも、何度も誘われたものでした。
それでも、どうにか最後まで書き上げることができたのは、至らぬところも多々あるこの小説を読んでくださる読者の皆様のおかげです。
このあとがきをもって、あらためてお礼を申し上げます。
当作品をお読みくださり、まことにありがとうございました。