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仕事紹介します〜無職だらけの異世界で、人材ビジネス始めました〜

作者: 積と和〝
掲載日:2026/03/25

「次はセーラの番だよ」


母のその一言で、私の未来は決められた。

姉のサーシャが男爵家にメイドとして引き取られた。

次は妹の私の番と言いたいらしい。


私はセーラ、8歳。


だけど中身は違う。前世では日本で働くアラサーの事務員(OL)だった。総務で物品管理、帳簿、発注、在庫調整――目立たないけど、回らなくなると困る仕事をずっとやっていた。


(だからこそ分かる。この世界、仕組みがなさすぎる)


ここには「仕事の選択肢」という概念がない。


男は力仕事か戦うか。


女はメイドか農婦か、それ以下。


(……冗談じゃない)


私は家を出た。



町の中心部に行けば何かあると思った。


結果は――甘かった。


「雇う余裕はないよ」


「子どもにできる仕事はないね」


食堂、雑貨屋、布屋。どこも同じ。


試しに厨房を覗かせてもらった時、私は確信した。


(やっぱり、この世界の問題はここだ)


鍋の中には、例の茶色い煮込み。


皮も取っていない根菜をそのまま潰して、水で伸ばしただけ。味付けはほぼなし。砂のようなものが混じっているのは、精製が雑だからだ。


(これ、絶対改良できる)


そう思った矢先、馬車に轢かれそうになり――気づけば騎士に捕まっていた。



騎士団詰所。


出された食事は、やはり同じだった。


「美味いだろ?」


「……はい」


(これは革命案件だ)


私はその場で覚悟を決めた。



「掃除と料理ができるなら雇う」


そう言ったのは騎士ジャンヌ。


女性で、貴族出身らしい。でも――


(部屋がゴミ屋敷)


床は見えない。服は山積み。食器は放置。


「忙しくてな」


「なるほど(生活能力ゼロ)」


私は即決した。

ここを拠点にする。



まずは掃除。

ゴミを分別し、使える布は洗い、壊れたものは捨てる。

動線を作るだけで、生活効率が段違いに上がった。


「……部屋って、こんなに広かったのか」

ジャンヌが本気で驚いていた。



次は食事。

私は市場を回り、使えそうな食材を探した。


・硬すぎる根菜 → 細かく刻んで長時間煮る

・苦い葉 → 水にさらしてアク抜き

・木の実 → すり潰してペースト化


さらに、塩に近い鉱物を見つけて精製。


(簡易的な調味料はこれでいける)


出来上がったのは――野菜スープ。


「……なんだこれは」


「スープです」


「美味い」


初めて、ジャンヌが笑った。



だが、問題は供給だった。

野菜はほとんど流通していない。

理由は単純。


「動物に食われる」


(じゃあ防げばいい)



私は縄と木材で大きな網を作った。


畑の周囲に設置し、さらに簡単な支柱構造で高さを確保。


試験運用の結果――


「侵入ゼロだと……!?」


成功。


鳥も獣も入れない。

収穫量は一気に増えた。



ここからが本番だった。


私は「網の作り方」を売った。


ただし完成品ではなく、


・設計図

・講習

・一部パーツ供給


これで収益を得る仕組みにした。


(全部自分で作ったら回らない)



さらに人を集めた。


「細かい作業が得意な人、いませんか?」


集まったのは、力仕事が苦手な女性や子どもたち。

ほっとけば私と同じ、どこかに売られそうな人を優先した。


彼女たちに教えたのは――


・網の編み方

・簡単な縫製

・保存食の加工


例えば、余った野菜を乾燥させる。

薄く切って、風通しの良い場所に吊るすだけ。


これで保存期間が大幅に延びる。


「これなら冬も食べられる……!」



私は正式に「職業紹介所」を立ち上げた。


仕組みはシンプル。


・依頼を受ける

・適した人材を割り当てる

・成果物を買い取って販売


例えば――


■刺繍班

貴族向けのハンカチや装飾品を制作


■加工班

乾燥野菜、ナッツペースト、保存食


■農業班

網を使った安定栽培


それぞれに報酬を支払い、生活を安定させる。



「最近、酒場の客が増えたらしい」

ジャンヌが言った。


理由は簡単。


「料理が美味くなったからです」


食材が変われば、世界が変わる。



やがて王国内に網は広まり、野菜と果物は「貴族だけのもの」ではなくなった。


価格はまだ高い。

でも、手が届く人が増えた。



私はさらに一歩進めた。

「結婚相談、やります」


世話好きのおばさんたちを集め、情報を整理。


・仕事

・収入

・性格


前世のマッチング感覚で組み合わせる。

「この人とこの人、合うと思うんです」


結果――


成婚率、爆上がり。


「セーラ様は神か」


(違います、事務職です)



そしてついに、王家から呼び出しが来た。


「望む褒美を言え」


私は迷わなかった。

「領地をください」


「何に使う」


「仕事を作ります」



数年後。


私の領地には、


・整備された農地

・工房

・市場

・紹介所


すべてが揃っていた。

失業者はいない。

全員、何かしらの仕事をしている。



「見回りだ、セーラ」


「はいはい」


隣にはジャンヌ。

領地の騎士として、ずっと支えてくれている。

「今日の飯は?」


「新作です。乾燥野菜と木の実のシチュー」


「楽しみだ」



豊かな食生活のために働く。


それは贅沢じゃない。

生きるための、当たり前だ。



私は今日も仕事を紹介する。

誰かが生きていけるように。


そして――


みんなで、美味しいご飯を食べるために。

読んでくださりありがとうございます。

この物語を楽しんでいただけましたら感想や評価を頂けると嬉しいです。

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