表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泡沫コンフリクト  作者: 七賀ごふん
白崎鈴真

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

#8



鈴真は可笑しそうに吹き出し、仕事道具を片付けて蓮川を手招いた。

子ども達が駆け回る校庭を眺めながら、二人で校舎を出る。鈴真も長期でここにいるつもりはなく、今夜には急いで東京へ戻るつもりらしい。

「蓮川さんとお会いした頃からずぅ……っとこんな毎日ですよ。今はホテルだけじゃなくてオメガの保護施設も運営していますし、自分の時間なんて一切ありません」

「えぇっ、そんなウワサ全然聞きませんけど!」

「でしょうね。そっちの代表は俺じゃないので。あっ、いや……私」

「“俺”でいいですよ。色々驚きましたけど、白崎さんは今の方が素が出てる感じですね」

「素? ……そうですか?」

「そうです。なんていうか、今の方が活き活きしてる。婚約者さんとは順調ですか?」

尋ねると、彼はいつかと同じように顔を赤くし、そっぽを向いた。そして問いには答えず、訝しげに腕を組む。

「……わざわざ会いに来られた理由は何ですか」

「そりゃもちろん、新しい本の打ち合わせです」

はっきり言うと、彼は一瞬固まり、涙を浮かべながら笑った。


「相変わらずシビアで仕事熱心ですね~、貴方ってひとは」

「まぁまぁ、一応俺も野心がありますから。今大人気の飛鳥影昌を超える本を貴方に書いてほしいんですよ」


どれだけ多忙であっても、彼の名は知っているだろう。表情を窺っていると、鈴真は険しい顔をし、ため息をついた。

「残念ながら、彼の本は未読です。どんな本を書いたんですか?」

「比較的、アルファを持ち上げる話が多い印象ですね。オメガに自由と権利を、みたいな話は全くなかった」

「そんなの……俺が読んで、喜ぶとでも? 俺はアルファ至上主義者じゃない。見え透いたご機嫌取りだ」

「え」

どういう意味か聞こうとする前に、鈴真は颯爽と自販機に向かってしまった。蓮川も慌てて後を追う。

鈴真は缶コーヒーを二本持ち、一本を蓮川に手渡した。

「……ありがとうございます」

「いいえ。仕事の話に戻りますけど、そうだな……。あと一冊だけ書きます。それと申し訳ありません、当面は執筆活動を終了します」

「ええぇ!」

「俺はオメガの支援活動がメインですから。俺の連絡を待ってる学生や、困ってる子ども達がたくさんいるんですよ。蓮川さんなら分かってくださると思うんですけど」

「いや分かります、大事だと思いますけど……。収入は? 活動に必要な資金はどうするんです?」

「大丈夫です。冷凍コンテナみたいな場所でしかやり取りしないけど、ちゃんとアテがありますから」

鈴真は手を振り、意味不明なことを言ってにこやかに校舎へ戻っていった。後ろから見えた彼の左手には、以前とは違うマリッジリングが嵌められていた。


よく分からないけど、それなりに順風満帆ってことか。

必死に捜して会いに来ただけに、脱力してしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ