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泡沫コンフリクト  作者: 七賀ごふん
白崎鈴真

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6/9

#6



アルファとオメガは減っていく。音も立てず、最期はひっそりと消える。

まずは自分探しの旅に出て、本当にやりたいことを見つけよう!

そう綴られたブログが公開された日から、本当に自分探しの旅に出る大学生が急増した。それもほとんどがアルファで、自身のSNSで発信している。

白崎鈴真に影響された人達が、自分の肩書きを捨てて好きなように生きている。


これは良いこと……なんだよな?


吉報も凶報も、日々の業務に追われる蓮川の元へ舞い込んできた。中には「息子の人生を狂わした」等とクレームしてきた者もいた。それは出版社ではなく本人に直接言ってほしいところだが、当の鈴真は消息不明だから仕方ない。

連絡は一週間に二、三とれるものの、自分の仕事に奔走して滅多に人前に現れなくなったのだ。その為世間を騒がせた青年は、今や都市伝説のような扱いを受けている。


「白崎鈴真とは何だったのか? ……だって。面白いなぁ~この記事。人物っていうより異常現象みたいな扱いされてますよ」


晴れやかな午後、同じ編集部の同僚が雑誌を手にひょこっと顔を覗かせてきた。他社の週刊誌だが、四ページに渡って鈴真の特集が組まれている。

「なまじ顔がいいからアイドルやモデル扱いなんだよなぁ。蓮川さん、最近白崎さんと連絡とってるんですか? 新しい本の話は?」

「それが全く音沙汰なしで……最近は施設にも顔を出さないから、執筆どころじゃないんだ」

「あらら。そんな本格的に仕事してるんじゃこっちに戻るのは難しいかな。まぁこれから一世を風靡するビッグチーズもいますよ。ほら」

同僚は目の前のモニターを傾け、ある人物を映し出した。

「飛鳥影昌。イケメンでどっかの若い俳優さんみたいだけど、なんと社長なんですよ。オメガを積極的に雇用してる、人材派遣の社長。そして、彼自身オメガ」

調べてみると二ヶ月前に一冊自伝を出してる上、他社と新たな本の企画が持ち上がっているらしい。これは良い新人を逃がしてしまった。またオメガは容姿が整った者が多いが、彼は特に……眉目秀麗という言葉がぴったり当てはまる。

「確か彼も白崎さんと同じぐらいの歳なんですよ。経営者としての手腕がすごいみたいだから、下手すると白崎さんより人気が出るかもしれませんね」

「それは、アルファより優れたオメガだから?」

「ええ。そっちの方が意外性あって、話題になるでしょ? オメガ達の希望の星になるかもしれないし」


なるほど、確かに。

オメガに劣るアルファ、じゃ格好がつかないまま終わるが、逆なら世間のイメージを覆す事件だ。

飛鳥影昌という青年はオメガの社会的立場の改善を訴えかけ、多方面の業界から支持を得ている。やっていることは鈴真と似ているが、その活動もオメガがやるから感動と説得力がある。悲しい話、鈴真がどれだけオメガの為にスピーチをしても世間は同じ受け止め方はしないだろう。


オメガは自分の苦しみを理解してくれる人を欲している。自分と同じ苦しみを味わった人間に話を聞いてほしいのだ。


白崎鈴真は彼の存在に陰り、薄れるか。

煙草を吹かし、彼が書いた本を棚から取り出した。羅列する文章は綺麗事だし、オメガが読んだらどう思うか分からない。しかしアルファの自分からすれば、中々どうして悪くない内容だ。

いつか滅ぶ人種。どちらか一方ではなく、どちらとも、というのが妙に納得できる。

自然の世界でも言えることで、敵がいない種族は勝手に自滅するのだ。




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