#6
燃えるような夕陽が海に沈む。車もコンクリートも、鈴真の横顔も赤く照らされている。何故だか胸の奥がぎゅっと傷んだ。
「だから人一倍勉強して、アルファらしくなろうと努力した。俺と同じような奴もいたんで、あまり辛くはなかったんです。オメガが苦しまない世界にしてやりたかった……そう思ってたのに、恋人とは何か修復不可能なぐらい衝突しちゃいまして」
自分はいくらでも無理できるけど、恋人には無理をしてほしくない。
その一心でがむしゃらに走っていた。けどそれは相手も同じで、無鉄砲で無茶をする俺に憤りすら覚えていた。
「……それで半年以上、口もききませんでしたねぇ」
「すご……。だ、大丈夫なんですか? 今は」
「おかげさまで、もう大丈夫ですよ! 向こうは向こうで成功して、俺の稼ぎなんか余裕で超えちゃったし。だから蓮川さんもこれからは御自分の為に、ね。お元気で!」
敬礼のポーズをとり、鈴真は車のドアロックを解除した。
「えっと、まさか運転して帰りませんよね?」
「しませんよ! 相方に迎えにこさせます」
鈴真の顔が赤いのは夕焼けのせいだけじゃない。だから怖々訊いてみたのだが、ちゃんと恋人に電話を掛けたのでホッとする。
いや、今は妻なのか? 妻が迎えに来る……でも昔鈴真が受け取ったのがエンゲージリングだとすると、彼はプロポーズされた方だ。なら相手はオメガじゃない?
何だか混乱してきたけど、恋人が現れる前に退散した方が良いだろう。
「それでは……。白崎さん、お元気で」
手を差し出すと彼は少し驚いていたが、すぐに握り返してくれた。
出逢いなんてそうそう記憶に残らないものだけど、彼と別れた途端、初めて会った時のことが蘇った。
けどそれも時が経てば薄れ、忘れて、今日のことも最後の頁に追いやられる。泡沫のような出来事として。




