#5
完璧主義者な第一印象は、わりと最初のうちに取り払われていた。彼はどちらかというとずぼらで、尚且つ人見知りだ。オメガを護る手前アルファらしくあろう、と無理をしていたように見える。
「初めてお会いした時は白崎さんのことすごくアルファらしいと思ったけど。今はアルファらしくないです。もちろん良い意味で」
「オメガに見えるってことですか?」
「いやそこまでは……でも何でかな。結婚指輪を見ても、あまりピンとこなかったんですよ。失礼なこと言ってすみません……」
あまり恋愛に生きてるようには見えなくて、仮に結婚式を上げるなら花嫁サイドに居そうな人だった。
駐車場に到着し、蓮川は鈴真に向き合う。日は傾き、空は薄い夕焼けに染まっていた。
「はは、そうかもしれませんね。蓮川さんと初めてお会いした頃、俺がつけていたのはマリッジじゃなくてエンゲージリングですから」
「それ……って」
「うん。貴方にはいくつか嘘をついてます。それも申し訳ないと思っていた一因」
鈴真は深く息をつき、瞼を伏せる。
「俺は貴方と、たくさんの人に嘘をつきました。許してほしいなんて口が裂けても言えない……でもやること自体は本を出す前から変わりません。贖罪の為に、これからもオメガの為に生きる。オメガと診断されたパートナーの為にも」
「……」
「それと蓮川さん。貴方のパートナーが不自由しない世界を作れるようにね」
愛車の白いセダンの手前で、彼は大きく背伸びした。
「子どもの時から、アルファらしくないって言われてました。診断書を見せないと信じてもらえなかったぐらい。おまけに要領は悪い、機転が利かない、体調も悪くなる……俺はアルファじゃないのかもしれない、と思って生きてきた」




