探し求めていた能力
少女は王城からの使者に連れられていった
俺にはそれなりの確信がある
もし転生者だったら転生前の年齢はわからないものの、もし転生者じゃなかったとしたら、あんな年齢の少女が利益目的に嘘を付くとは思えない
つまり、あの子は本当に転生者である可能性が高い
「アイリーン、あの子を助けるぞ」
俺はそう告げた
アイリーンは同意する
「もちろんだよ」
そうだ、リスクがあってもアイリーンが拒否するわけがないんだ
俺を助けてくれたのも彼女なのだから
少女を助け出す隙を伺うものの、城の兵士が数十人は護衛で付いている
俺一人で助け出せるかどうかは五分五分だ
何日か様子を見ても隙があまり見つからない
そうこうしているうちに王城まで近づいてくる
もうチャンスはそうは無い
「どの瞬間が一番チャンスがあるんだ?」
俺はアイリーンに聞いた
「一番リスクがあるように思えて、一番チャンスがあるのは、護衛がいなくなる時。つまり、城の中で待たされている時なんだよ」
なるほど
俺の時と同じということか
「わかった。やろう」
もはや、あの少女が転生者であるかどうかは確認しなくてもいい
まずは連れ出す
後のことはそれから考えればいい
俺とアイリーンは夜を待ち、城に潜入した
向かった場所は俺がアイリーンに助けられた場所だ
そこに到着すると例の少女は一人でいた
『助けに来た。一緒に来てくれ』
俺は日本語でそう語り掛けた
「え?」
少女は驚いているようだ
間違いない
普通、首を傾げるところだからだ
連れ出そうとした時
「侵入者がいるぞ!」
そう兵士が叫んでいるのが聴こえた
まずい
気付かれている
「アイリーン、彼女を連れて逃げるんだ。ハータのところに連れていってくれ」
俺はそう指示した
アイリーンは一瞬戸惑ったもののすぐに首を縦に振った
俺は二人を逃がすために集まってくる兵士を何人か蹴散らした
しかし、二人が安全なところまで逃げられたと確信すると城から脱出した
俺の後を兵士達が追ってくる
しかし、俺は街中の高い巨木に登り、やり過ごした
兵士も高所までは探さなかったようだ
俺はほぼ力を使い果たしていたから、そこで一晩過ごした
翌日、俺は周囲が安全である事を確認し、ハータの小屋へと向かった
そこには無事に辿り着いたアイリーンと少女の姿があった
その少女の名前はロザリーとのことだった
年齢は10歳とのことだ
しかし、話を聞くと明らかに転生者だった
日本語での会話も出来る
さっそくハータは彼女のギフトの詳細を調べた
「なるほど。この娘は短時間だが死者の魂を呼び出し、自分の体に宿すことができるみたいだね」
それを聞くと、その場にいた人物が同時に返答した
「イタコだね」
「イタコだわ」
「イタコか」
そういや、転生者は東北地方の出身ばかりだと言っていたな
「助け出すことが出来たのはよかったけど・・・・」
アイリーンが少し苦笑いのように語る
「これは、魔族に対抗する力ではないようね」
そう
俺とアイリーンは魔族を倒すために俺がコピーできる能力者を探しているんだ
しかし・・・・
「いや、違う!」
俺は少し大きめの声で答えた
もしかしたら、これは・・・・
「俺が探していた能力そのものなのかもしれない」
周囲にいる人達からは「?」の表情が伺える
俺は自分の考えをその場にいた全員に告げた
それは突拍子もない考えなのかもしれない
しかし全員が真剣に聞いた
すなわち、俺がコピーする能力
勇者のような魔族に対峙できる能力
その見本とも言うべき存在が一人いた
「まさか、勇者シラール?」
アイリーンが反応する
「そうだ。これはまだ確信はないが、彼女であればシラールの魂を呼び出すことができるかもしれない」
可能性はある
もし俺がシラールの力を本人の同意の元にコピーすることができれば、魔族に対抗できる力を得ることができる
俺はロザリーに尋ねた
「勇者シラールの魂をこの場に呼び出すことはできるか?」
ロザリーは試みた
しかし、どうも駄目みたいだ
なぜ駄目なんだ?
「もしかしたら、本人の思い入れのある何かとか、そういう”物”が必要なのかも」
イーダがそう答える
となると、勇者シラールの故郷に行ってみれば何か遺品があるのかもしれない
あるいはリスクはあるが、王城の敷地内にある勇者シラールの墓の前であれば・・・・
結論から言うと、後者は駄目そうだ
方法として試せそうにない
王城周辺には俺とアイリーンの似顔絵付きの手配書が出ていた
さすがに前回のは目立ち過ぎたようだ
ロザリー一人で向かわせても意味はない
だからもう一つの方法に賭けるしかない
俺とアイリーンはロザリーを連れてシラールの故郷を目指すことにした
シラールの故郷はアルグス村と言った
王都からそれほど離れてはいない場所にあった
村人に話を聞くとシラールの生家を教えてくれた
ただし、今は誰も住んでいないらしい
教えられた場所に行くと、ほとんど廃屋状態で、いつ崩れてもおかしくないほどだった
家の中には目ぼしい物は無かった
しかし、もしかしたらこの場所そのものがシラールを呼び出せる”物”である可能性がある
俺はロザリーにシラールの魂を呼び出せるか試みてもらうことにした
「どうだ?いけそうか?」
俺はロザリーに聞いた
「・・・やってみます」
ロザリーは魂を呼び出した
ロザリーの身体が鈍い光を放つ
「・・・誰なんだ?」
ロザリーが突然話し始める
成功したのか?
『シラールなのか?』
俺は日本語で話した
ロザリーは頷く
『シラール。俺は他人の能力をコピーできる能力を持っている。この国を救うためにお前の能力を必要としている』
そこまで言うとシラールが同じく日本語で返答した
『なるほどね。僕もそのことが気がかりで成仏できずにいたんだ。そうか、僕の能力をコピーしたいということなんだね?』
『そうだ』
『わかった。僕の能力をコピーしてくれ。そしてこの世界の人々を救ってくれ』
俺は決意を込めて答えた
『必ず!』
そう言うと、俺の身体に不思議な力が宿るのがわかった
俺の名はクラヴィス
ギフトは他の能力者の能力をコピーする
コピーした力は身体能力強化、・・・・および浄化
俺に新たに宿った能力は人間には効果がない
それでも、魔族に対しては、触れれば一撃で倒せるはずだ
そう、俺はかつての勇者の力を得た
魔族に対抗する手段はこれで整った!




