俺の能力
アイリーンに連れられて来たのは小さな小屋だった
中には何人かの人がいた
その中でも一際目立つ女性がいる
ウェーブのかかった長い髪のグラマラスな女性
彼女の名前はハータというらしい
年齢はこの世界で51歳
自称、辺境に住む占い師ということらしい
一応それを生業にしているものの、実際には客なんてほとんどいない
「彼女は私が見つけ出した」
アイリーンはそう答えた
そのまま続ける
「私は二度目の転生以降、魔族を倒せる転生者を探している。そんな中で彼女に出会ったんだ」
そう、このハータこそが転生者のギフトの詳細を知ることが出来る存在
ある意味、アイリーンにとっての希望と言ってもいい存在だった
勇者に匹敵する能力の持ち主を探すには必須の存在ということになる
俺はアイリーンに促され、ハータに近づいた
ハータはその俺の手を取った
「それじゃ、見させてもらおうか」
そう言うとハータは目を閉じ、意識を集中する
「・・・・・」
しばらくの沈黙の後、彼女は目を開いた
「なるほど。これは自分では気づきようのないギフトだ」
それを聞きアイリーンはハータに尋ねる
「どういう能力なんですか?」
ハータはしばらく考えた後にゆっくりと語りだした
俺のギフト
それは他人から能力をコピーできる能力
相手との同意があることで、他の転生者の持っている能力を自分の能力とできる
「しかし、制約はある」
ハータは続けた
どうやらコピーできるのは無制限というわけではない
多くて3人、もしかしたら2人程度の能力をコピーすればそれ以降はいわゆる”容量”の限界になってしまうらしい
それに、一度コピーした能力を消すことはできないらしい
それを聞いて、アイリーンは独り言のように呟いた
「つまり、クラヴィスはこの世に存在する転生者の能力をコピーすることでどんな能力でも複数持つことが出来る。しかし無制限ではない・・・」
ハータは俺に能力の詳細を告げたあと念を押してきた
「お前の能力は、もしかしたら世界を救えるほどの力を持っている。しかし、選択を間違えれば取返しの付かないことにもなる能力だ」
なるほど
つまりもし、俺が勇者のような能力の持ち主を探し出し、その相手の同意を得れば、俺も勇者並の力を手に入れることができるということか
しかし、もし見つけることが出来なければ、俺は無能力と変わらない・・・
「わかった。ありがとう」
俺はそう答えた
「これからどうするんだ?」
アイリーンは俺に聞いてくる
「そうだな。とりあえず、今この場にいる人の能力を聞かせてもらおうか」
それが俺の第一歩だ
アイリーンとハータを除けばその場にいた他の転生者は3人
これがアイリーンが二度目の人生で集めた人達
一人目はフェリックスという名の男だった
年齢は俺と同じくらいだろうか
「俺の能力は予知夢だ。自分でもコントロールは出来ないが、ふと未来の夢を見ることがある。それが1か月後か1年後か、それはわからない。しかし夢に見た結果は必ず起こる」
そう言ったあと、少しとぼけたように続けた
「実を言うとな、お前の夢も見たんだ。だからお前にいつか会うことはわかっていた。それが今日だったとはな」
なるほど
未来を知ることができるが、自分でコントロールは出来ず、狙った日のことを知ることは出来ないようだ
二人目はラルフと呼ばれる男だった
年齢は俺より少し上か?
「俺の能力は身体能力の強化だ。自分の身体能力を2倍以上に、いやその気になれば10倍くらいにまで高めることができる。しかし高めれば高めるほど持続時間は短い。一度限界が来るとしばらくは能力も使えないし、動けなくなるほどに疲れる」
なるほど
詳細も聞いてみたが、最大まで高めると1分くらいで力尽きてしまうらしい
しかし、どんな場面でも使えそうな能力ではある
三人目はイーダという女性だった
年齢はやはり同じくらいか?
「私の能力は透視能力。壁の向こうも見ることができる。頼まれればあなたの骨だって見ることができるわ。日本で言うとレントゲンの替わりにもなるわね」
そう言って微笑んできた
それはそれで役に立つかもしれない能力だ
俺はしばらく考えた後、答えた
「わかった。ラルフの能力を俺にコピーしてくれ」
それを聞いてアイリーンは反論してくる
「ちょっと待って。そんなに簡単に決めていいの?あなたは世界を救える可能性を持っている。しかもチャンスは2度か3度くらいしかないのよ。後から手に入れたい能力を見つけても取返しが付かないかもしれない」
「ああ、確かにそうだ」
俺は冷静に答えた
しかし、やはりこれで良いのだと思う
理由はいくつもある
まず、俺はこれから魔族と戦えるだけの能力を持った転生者を探すことになるのだと思う
しかし、出し惜しみして厳選している間、俺は無能力者と変わらない
その間に何か起きた場合、一切の対処もできなくなる
無能力であるよりは、何か一つでも能力を持っていたほうが良いだろうと思う
それに、これから先、どんな能力者と出会うのかもわからない
魔族と戦うのに役に立たない能力ばかりと出会う可能性もある
そもそも他に転生者がどのくらいいるのかもわからない
わからないものに賭けるのはリスクも大きい
それともう一つ、決定的な問題として、俺は一度この能力を使ってみたかった
使い方も確かめておきたかったし、実際に使ってみたら思ったものと違ったという可能性をこの場で消しておきたい
それを聞いてハータは納得したようだ
「なるほど。お前の言うことは尤もだ」
そして、俺はラルフに頼んで、その能力をコピーしてもらった
俺達は男同士で見つめ合った
ラルフが告げる
「俺の能力をコピーしてくれ」
俺は頷いた
次の瞬間、自分に不思議な力が宿るのがわかった
これがギフトか
そう、俺は身体能力の強化という能力を手に入れた
実際にその能力を使ってみたのだが、想像以上だった
その気になれば10mくらいはジャンプできる
しかし、確かに持続時間は限られていたし、使い切ったらしばらく動けなかった
それでもこれから先、必ず役に立つであろうことは想像できる
俺はこれから魔族を倒せる能力を探さないといけない
今の力ではまだ無理だ
カルタン王マルベックに成り代わっている魔族
いや、それ以外にも多くの魔族が存在する
だから、勇者の能力に匹敵するような何かの力を探し、うまくいけば勇者二人という状態を作りだし人々を救っていくんだ
ここから、俺の新たな旅が始まる




