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異世界で聴いた赤とんぼの歌

砂漠化が進行するカルタンという国がある

俺はそこに生を受けた

しかし、俺にとってはこれは二度目の生ということになる

俺には前世の記憶がある

日本の片田舎で生まれ、育ち、事故で死んだ


二度目の生を受けたカルタンは地球のどこかではない

もっと別の世界だった



カルタンの東には魔族が生息する土地がある

砂漠化はその周辺が特に激しい

砂漠化と魔族との関係が疑われている


魔族は人間を襲い、攫っていく

そのためか、その土地に近づくものはほとんどいない

それでも魔族は人間の集落にまで現れることがあった

人々は魔族の襲撃を恐れながら暮らしていた


しかしそんな中、魔族の脅威を退けた人物がいた

勇者と呼ばれるシラールという少年だ

彼はわずか16歳という年齢で人々のために立ち上がった

襲い来る魔族を「浄化」と呼ばれる彼特有の能力により消滅させ、魔族の土地へと入り、魔族を絶滅寸前まで追い込んだ

しかし、戦いの傷が原因で病で亡くなったという

勇者の葬儀は国を挙げて行われ、現在はその墓が王城の片隅に存在している


それから年月が経ち、魔族は再び勢力を取り戻そうとしている

対抗する手段も見出されぬまま、再び人々は魔族の脅威に晒されている

そんな中、全ての始まりとなるある出来事が起こった


それは一つの歌だった


『♪夕焼け小焼けの赤とんぼ~』


王城からの使者が各地を巡って、この歌を人々に聴かせているようだ


「この続きを知っている者は名乗りを上げよ」


俺は耳を疑った

俺はこの歌を知っている

しかし、これは日本の歌だ

なぜ、この異世界にこの歌が存在する?



俺の名はクラヴィス

二度目の生を受けて24歳になる

日本の事などもう忘れようとしていた

しかし、その懐かしい歌は俺に日本での暮らしを思い出させた


「俺は、その歌の続きを知っている」


王城からの使者にそう告げた


「ならば、付いてこい」


そして、俺は使者と複数の兵士達に連れられて王城に赴くことになった

初めて訪れる西洋風の王城

この世界の文明レベルは中世ヨーロッパあるいは中東だろうか

城の敷地はそれなりに広い

ヨーロッパの宮殿ほどはありそうだった


その一室で待たされた

その部屋には10人以上の人達が集められている

まさか、この人物達も歌を知っているのか?

俺のように前世の記憶を、それも日本の記憶を持っている人達がこんなにいるのか?


そんな時、一人の女が部屋に駆け込んできた


『みんな、逃げるんだよ!』


日本語?

この女、日本語で話している


「どういうことだ?逃げるって?」


俺は思わず聞き返す


『やっぱり日本語がわかるんだね』


再び日本語で返答が返ってくる


『話はあとだ。私が話している言葉が理解できる者は、とにかく付いてきて』


一片の疑いはある

この女を信用しても良いのだろうか

しかし、日本語が話せるという一点において、この女の言葉には何かしらの重みを感じる

ここは信じたほうが良いのかもしれない


俺はこの謎の女に従うことにした

しかし、女に付いていったのは俺だけだった

他の人達は首を傾げている


「彼らは?」


俺は思わず女に尋ねた


「ああ、彼らはおそらく褒美か何かを目当てにして嘘をついていた人達だね。あなただけが本物」


今度はこの国の言葉で返事が返ってきた


「逃げるって?」


俺は聞き返した


「それは、話せば長くなる。今はとにかく安全な場所まで逃げないと」


その女の表情は真剣そのものだった

俺は女の後に続き、見張りの目を掻い潜って城から抜け出した



「ここまで来ればもう大丈夫」


女はそう言った

女の名前はアイリーン

23歳とのことだ

俺の一つ下ということになる


俺はアイリーンにいろいろ聞きたいことがあったが、何から聞けばいいのかわからない

逆にアイリーンに先に尋ねられた


「あなたのギフトは何?」


「ギフトってなんだ?」


俺は思わず聞き返す


「転生者には、何か特別な力のようなものを持つ人が多い。私達はそれをギフトと呼んでいる」


そんなの初めて知ったぞ

アイリーンは続ける


「あなたも他の人には無い何か特別な力があるんじゃない?超能力のようなものとか」


「いや、俺にはそんな特別な力はない。普通の人間だ」


「そう・・・・。しかしそれはあなたが気づいていないだけなのかもしれない」


いろいろ情報が入りすぎて、何を言えばいいのかわからない

咄嗟に疑問に浮かんだことを聞いてみた


「転生者って、日本人だけなのか?他の国の人は?」


意外な質問だったのか、ちょっとびっくりしたようだったがアイリーンは答えてくれた


「そう、転生者は日本人ばかりみたい。それも東北地方の一部の地域の人達ばかりだった」


人達ばかりだった?


「じゃあ、他の転生者にも大勢会ったのか?」


「それほど数は多くないけどね。それでも過去に何人かには会った。ほとんど殺されてしまったけどね」


殺された?

どうやらそれが逃げろと言っていた理由と関係ありそうだ

アイリーンは続ける


「おそらくその地域特有の風習みたいなものが転生に関係しているんだと思う。それが何なのかはわからないけど」


俺の中では次々と新たな疑問が浮かんでくる


「殺されたって。もしあの場から逃げ出さなかったもしかしたら俺も?」


「そう、間違いなく処刑されてた。あの歌の続きを答えたら間違いなく」


「なぜ処刑されないといけないんだ?」


そこから先は驚きの連続だった

なんと今この国を治めているカルタン王のマルベックは魔族が成り代わっているとのことだ

魔族は転生者を恐れている

その理由は単純だった


かつて勇者と呼ばれたシラールという少年も転生者だったのだ

あのような勇者が再び誕生することを最も恐れている

だから、転生者を見つけ出し、排除しようとしている


シラールが病で亡くなったあと、王に成り代わった魔族はシラールの家族に問いただした

シラールという少年の生い立ち、特徴

その中でシラールが幼少の頃から歌っていた歌を知った

謎の国の言語で歌う謎の歌

それを手がかりに転生者という答えに辿り着いた

そして、各地から転生者を探し出し排除しようとしている


「私も転生者」


アイリーンはそう告げた

おそらくそうだとは思っていたが、やはりな


以前、アイリーンは俺と同じように王城の使者にその歌を知っていると答えたそうだ

そして処刑された


「でも、私にはギフトがあった。二重転生というギフトが」


二重転生?

俺の疑問に答えるかのように続ける


「二重転生というのは、もう一度転生できる能力。一度処刑された私は再びこの世界で生まれ変わった。つまり今の私は以前の私とは別人なわけ」


「・・・・・・・」


重い話だ

それと同時に彼女がいろんな事情に詳しい理由も納得がいった

二度目であれば、同じ過ちは繰り返さないだろう

それと同時に、二度目の人生によって自分が処刑された理由にも辿り着いたのだろう

俺は本当に彼女に命を救われたんだ


「一応、聞いてみたいんだが・・・」


俺は恐る恐る尋ねた


「アイリーンは次死んだらもう転生できないのか?」


「出来ない。これがラストチャンス。だから私はこの命を使って人々を助けたいと思っている」


「・・・・」


「でも私はもうほとんど無能力と言ってもいい存在。だからこそ他の転生者の助けがいる。再び勇者シラールのような人を見つけ出し、魔族を倒そうとしている」


それも俺を助けてくれた理由の一つってわけか


「しかし、俺にはギフトみたいなものは無いようなんだが」


「それはあなたが気付いていないだけかもしれない。他にもそういう人がいた。例えば、私みたいに一度死んで初めて気付いたりね」


確かに、例えば釣りの達人みたいな能力があっても、釣りをしたことがなければ一生気づかないわけか


「だから、これから一緒に来て欲しいところがある。私が二度目の生によって見つけ出したものの集大成のようなもの」


なんだ、それは


「他の転生者達が集まっている場所。そこには他人のギフトを探ることができる人もいる。それはそれで変わったギフトでしょ?」


まあ、それは確かに


「そこに行けば、あなたのギフトの詳細もわかるかもしれない」


なるほど

いずれにせよ、他に選択肢は無いようだ

少なくとも、命を助けてもらった分は何か返さないとな

俺に何か出来ることがあるのだろうか

そんな疑問を持ちながらアイリーンの後に続いた

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