高潔すぎるお忍び
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専属護衛にジャックを指名したフォルカード。
今回は国王陛下から「民の生活を見てこい」との無茶振りが。
汚れに満ちた下界(街)で、王子の白衣は保たれるのか!?
国王陛下の命令は絶対だった。
「フォルカードよ、次期国王として民の泥にまみれた生活を知るのだ」
……陛下、俺の服は一箇所でも汚れたら死ぬ呪いがかかってるんですよ。
「殿下、こちらがお忍び用の平民の服(古着)にございます」
差し出された茶色の服を見て、俺は気絶しそうになった。
(……古着? 無理だ。誰が着たかもわからん、しかもこの毛羽立ち、ダニが、菌が、死の軍勢が押し寄せてくる……!!)
「……断る。俺は、この『聖礼装』でいく」
「しかし、それでは目立ちすぎてお忍びになりません!」
「俺が歩けば、そこが道になる。……それだけのことだ」
(訳:それ以外着られる服がこの世に存在しないんだよ!)
結局、俺は真っ白な正装のまま、ジャックだけを連れて城下町へ繰り出した。
「「「お、おおお……!!」」」
街に出た瞬間、どよめきが起きた。
泥だらけの路地裏、魚の生臭い市場。そこに降臨した「汚れ一つない純白の王子」。
民衆は後光が差しているかのように錯覚し、勝手に道が開けていく。
(……ジャック、頼む。誰一人として俺に触れさせるな。すれ違う時の風圧で埃が飛んでくるのも防いでくれ!)
そんな中、空気を読まない「汚れの塊」が現れた。
名はバンブー。身長二メートルを超える、ならず者の大男だ。
「おいおい、綺麗な坊ちゃんじゃねえか。その服、売れば一生遊んで暮らせるな……!」
バンブーが、酒臭い息を吐きながら、脂ぎった手で俺の胸元を掴もうと迫る。
(くるな。くるな。その手! 爪の間の黒いのは何だ!? 雑菌の王か!?)
俺の心臓は爆速で警鐘を鳴らし、怒りと恐怖が限界突破した。
「……汚ねえんだよ、近寄るなッ!!」
それは、王子としての威厳ではなく、一人の「命の危機を感じた男」のガチすぎる悲鳴だった。
だが、その鋭すぎる眼光(必死)と、一切の妥協を許さない拒絶の言葉に、バンブーは蛇に睨まれた蛙のように硬直した。
「お前のような……そんな『澱んだもの』を俺の視界に入れるな! 己の醜さを自覚して、まずはその魂(と体)を洗い流してこい!!」
(訳:風呂入れ! 服洗え! 除菌しろ! 寿命が縮まるだろうが!)
バンブーは衝撃を受けていた。
今まで出会った貴族は、自分を「虫」のように見るか、「恐怖」で見るかだった。
だが、この王子は違う。自分という存在を、根底から「正そう(洗おう)」としている……!
「殿下、お手を汚すまでもありません」
背後に控えていたジャックが、一歩前に出る。
彼はバンブーの巨体を、まるで「洗濯板の上の汚れ」を落とすかのような滑らかな動きで、地面に組み伏せた。
「……ジャック、あとは任せる。俺は……少し気分が悪い」
(訳:吐きそう。あの男の酒の匂いで服に匂いが移りそう)
「ハッ! ご安心を。この者、徹底的に『清めて』おきます」
ジャックはバンブーを噴水へと引きずっていき、ものすごい手際で文字通り「洗濯」し始めた。
数分後。
全身を磨き上げられ、心まで洗われた(物理的に)バンブーは、その場に膝をついた。
「……こんな、こんな俺のために……これほど真剣に『清め』を……。あんた、いや、殿下! 俺は今日から心を入れ替えて、アンタの盾になる!」
……なぜか、凶悪なごろつきが忠実な下僕にクラスチェンジしていた。
ジャックも感銘を受けた様子で俺を見ている。
「流石は殿下。悪党の魂にこびりついた汚れまで見抜かれるとは……。私も一生ついていきます」
違う、俺はただクリーニング代(命)をケチりたかっただけなんだ。
どっと疲れが出た俺たちは、陛下が指定した「民の溜まり場」……冒険者ギルドへと到着した。
扉を開けた瞬間、俺は文字通り崩れ落ちそうになった。
そこは――汗と酒、血と泥、そして何かわからない獣の臭いが充満する、この世で最も「死(汚れ)」に近い場所だった。
(……詰んだ。ここ、絶対除菌スプレー効かない……!!)
ごろつきのバンブーが仲間に加わりました。
汚物を見るような目(本音)を、高潔な慈悲と勘違いする才能。
さあ、次は地獄のギルド編です。王子の白衣は真っ白のまま保てるのか!?
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