フランスのF事件
これは私が十年以上前に実際に体験した話です。
今もパソコン関係に詳しいとは言えない程度の知識しか持っていませんが、当時の私は今よりももっとパソコンに対する知識がありませんでした。
そんな私がある時、仕事の都合で新設したインターネット回線にパソコンを繋ぐ作業をしなくてはならないことになりました。
プロバイダに接続するためにIPアドレスやらなんやらを入力しなくてはならないのですが、渡された資料を見ながら悪戦苦闘しておりました。
そして自力では入力の方法がわからない事態になったので、プロバイダのオペレーターに電話して通話を繋いだ状態でサポートを受けながら設定するとこになりました。
途中までは指示を受けて順調に進んでいました。
ですがオペレーターの指示でキーボード入力をしていた時にそれは起こりました。
「それでは次はFを入力して下さい。」
「え?Lですか?」
「いえ、Fです。〝フランスのF〟。」
賢明な読者の皆様ならこの〝フランスのF〟何を意味しているのか文脈からわかることでしょう。
ですがこの時の私は慣れない作業でいっぱいいっぱいだったこともあり、この〝フランスのF〟の意図を正確に理解することができませんでした。
(…〝フランスのF〟?聞いたことが無いぞ?キーボードには半角やら全角やらといった入力方法があると聞いたことがある。もしやそれと同じでどこかしらのキーを押してからFを押すと〝フランスのF〟に変換される機能があるのでは………よく見るとローマ字って書いてあるキーも存在している!ならば私が知らないだけでフランス風のなんか傾いたような感じのオシャレな書体に変換されるキー存在していたとしてもおかしくは……ない!)
瞬時にそう考察した私はキーボードの上に素早く視線を走らせました。
(どれだ!フランス風のオシャレな感じの書体に変換するキーがどこかにあるはずだ!………なんてことだ、半角/全角とかローマ字とか書いてあるキーは直ぐにわかったがフランス風の変換キーはどこにもない!素直に表記しないで省略して表記してあるタイプかもしれん。となるとこのFnって書いてあるはキーとかはあからさまに怪しい。…待て、良く見るとF1〜F12ってキーまでありやがる。これでは特定は無理か…それに、もしくは同時に二つ以上のキーを押しながら入力するテクニカルなタイプの可能性もありえる。…〝フランスのF〟一筋縄ではいかない手強い相手のようだな。だがまぁ、私はパソコン初心者だ。ここは意地を張らずに素直にオペレーターさんに〝フランスのF〟の入力方法を聞くのが正解か。)
「すみません〝フランスのF〟は入力の仕方がわかりません。どうやって入力すればいいですか?」
「えっ……と、ですから〝フランスのF〟を入力していただければOKです。」
(なんだと!この口ぶりだと〝フランスのF〟は変換を必要としない単独で存在するキーなのか?!)
焦りと共に再びキーボードの表記にくまなく視線を走らせる。
だがやはり、何度探しても〝フランスのF〟なるキーはキーボード上に存在しなかった。
(…詰んだ。〝フランスのF〟…手強い相手どころか手に負えない相手だったようだ。)
敗北感に打ちのめされながら状況を打破すべくワンチャンに賭けて聞いてみることにした。
「すみません。やっぱり〝フランスのF〟は入力方法がわかりません。これって…普通のFじゃだめですか?」
「えっ……と、はい。普通にFを入力して頂ければ大丈夫です。」
(ノーマルのFでもいいんかい!!!だったらなんで〝フランスのF〟なんて特殊な入力を要求して来て…………もしかし…フランスの頭文字のF…か…?)
ここにきて某探偵漫画のコ○ン君ばりに謎の光が脳内を駆け抜け、私はようやく己の勘違いに気が付いた。
正直、顔から火が出そうなぐらい恥ずかしかった。
「F、入力しました。次はなんですか?」
「はい。でしたら次は…」
そして私は何事もなかったかのように先程までのトンチキな質問を完全に無かったことにして、淡々と入力を進めていくことにした。
ちなみにその後、最後の入力キーはOだったのですがその時のオペレーターさんの指示は「次は大阪のOを入力して下さい。」でした。
(いやそこは、オーストラリアとかオランダとかじゃないんかい!!!だったらFもフランスじゃなくて福岡とか福井とかでも良かったやろ!福岡とか福井だったらオシャレな書体のFとは結びつかないから間違えなかったのに!)
などという理不尽な叫びが喉まで出かかりましたが、グッとこらえてパソコンの設定を無事に完了させました。
皆さんも今後、何かの拍子にオペレーターから〝フランスのF〟を入力して下さいと指示された時は、一度冷静になって対処するようにして下さい。
筆者のガチの体験談です。
キーボード入力にはオシャレなフランスっぽい書体になる入力はありません。
覚えおいて損は無いと思います。
それでは本年もよろしくお願いします。




