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知らないのか? 日本人は割と高い頻度でポップするんだぜ

 モンスターひしめくダンジョンで命懸けの冒険に今日も挑む者がいる。


「はあー、おりゃあああああああ」


 そんな危険なダンジョンの奥でモンスターのことごとくを破壊して進む狂人(?)ジークが今日も元気に冒険をしていた。


「これでラスト!」


 最後に残ったゴブリンの首を刎ね、辺りのモンスターを一掃し終えたジークは剣に付いたゴブリンの血を払うと、辺りに散らばったドロップアイテムを拾い始めた。


「ふう。もうこいつら程度じゃろくに経験値もらえないな。さっさとボス倒して今日は帰るか」


 そう言いながらジークはドロップアイテムを十分に集めた頃合いで再びダンジョンの奥へ勢いよく走り出した。


 しばらく真っ直ぐの通路を走っていると少し先の突き当たりを右に曲がったところから女の子の叫び声が聞こえてくる。


「きゃあああああああ」


「何だ? ゴブリン相手にやられそうになってる奴がいるのか?」


攻撃されている少女がいた。


(変だな。一方的にやられている割に無傷だ。まあいい、とりあえずこいつらをぶった斬るか)


 ジークは目の前の状況に違和感を覚えながらも、腰に付けた剣を引き抜きゴブリンへ肉薄する。


(——疾風迅雷、ダブルスラッシュ)


 ジョブに則したスキルを発動したジークの斬撃がゴブリン三匹を瞬く間に斬り刻む。


 その速さたるや少女が瞬きをした間にゴブリンがドロップアイテムに変わっていた程のものだった。


 おまけに返り血すら自分はおろか少女にも一滴も付けさせない徹底ぶり。


「ふう、大丈夫か?」


 手慣れた様子で剣を鞘に戻し、ジークは倒れた少女へと手を差し伸べた。


「あなたは……」


「俺はジーク。しがないただの冒険者だ」


「冒険者?」


 ジークの手を取り立ち上がった少女はジークの自己紹介に疑問を持っている様子。


 より詳しく言えば冒険者についてだろう。


 そんな様子の少女を見てジークはすぐに彼女の素性を理解した。


「冒険者を知らないのか? もしかしてお前、日本人なのか?」


「うん、そうだけど。なんで分かったの?」


「この世界にはお前みたいに突然現れる人間が今までにたくさんいたんだ。そして、そいつらは決まって日本から来たって言うんだよ」


 頻繁にこの世界に現れる日本人は周囲に誰かしらの現地人がいる場所でしか現れないと言われている。


 日本人は決まってすぐにこの世界に馴染み、帰りたいなどとは決して言わないらしい。


 そして、日本人の特筆すべき最大の特徴は何かしらの特異なジョブを獲得している点である。


「って、そんなことよりお前の名前聞いてなかったな」


「そうだったね。わたしはカノン。えっと、一応学生かな」


 制服も着ていないのに変かな、と明らかに部屋着な服を着た綺麗な黒髪黒目を持つ少女——カノンは恥ずかしそうに微笑んだ。


「カノンか、よろしく。まだ聞きたいことはたくさんあるだろうが、話は後だ。まずはダンジョンを出るぞ」


 こうしてジークはカノンを連れてダンジョンの奥へと進むのだった。




「ここがダンジョンボスがいる部屋だ」


 色々な事を話しながら危なげなく道中のモンスターを倒し、ボスモンスターのいる部屋の前に着いたジークとカノンの二人。


「心の準備は良いか? 俺の後ろにちゃんと隠れとけよ」


「うん。がんばって隠れるよ」


 ボス攻略の手筈を大まかに決めた二人は開いた扉を進み、このダンジョンのボスボス——ホブゴブリンと対峙する。


『ギャガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』


「ハッ、相変わらずうるさいデカブツだな」


「やっぱりがんばれないかも……」


 ジークは何度目かの攻略でホブゴブリンの咆哮に慣れ親しんだ様子で剣を構える。


 一方、戦いとは無縁な世界から来たカノンは初めて見る自分より大きなモンスターに恐怖でいっぱいになり、半泣きでジークの後ろに必死で隠れるのだった。


「心配するな。すぐに倒す」


 怯えるカノンを安心させるようにジークは一言そう言うと、ホブゴブリンへと一直線に向かっていった。


『ゴエェェェェェェェェェェェェェ!』


 体長約三メートルの巨体が物凄いスピードでジークに迫る。


 手に持ったジークを超える大きさの棍棒がジークの頭上から振り下ろされる。


「いつも通り雑な攻撃だな」


 言いながらジークは今日十回目のホブゴブリンの初撃をするりと避け、棍棒を持つ腕に刃を立てる。


『ゲルゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』


 腕を斬られ、痛みに叫びながら棍棒を落としてしまうホブゴブリン。


 そこに追い打ちをかけるようにジークはその巨体目掛けてスキルを発動させた。


「ダブルスラッシュ!」


 一度の斬撃が二重になってホブゴブリンの右脇腹から左肩にかけて斬りつける。


 しかし、ホブゴブリンと言えど腐ってもダンジョンボス。


 道中のゴブリンのようには簡単に倒させてくれないのだ。


「やっぱこの剣じゃ効かないか」


 ジークが放った攻撃はホブゴブリンの体の表面を少し傷つけただけで、HP(ヒットポイント)を少ししか削れていなかった。


『ゴパギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』


 ジークの攻撃を受け止めたホブゴブリンは目の前の無防備なジークの頭を鷲掴みにした。


 そして、ミシミシと音を立てる程の力で握り潰そうとするのだった。


「もう一回、ダブルスラッシュ!」


 頭を掴まれながらも再びスキルで攻撃するジーク。


 だが、悲しいかな。ホブゴブリンの体にはやっぱりちょっとしたダメージしかは入っていない。


 そんな絶体絶命な中、ジークは慌てることもなくなんてことない感じで次の行動に移った。


「もうしょがないか、てーい!」


 状況に反して気の抜けた掛け声と共にジークはホブゴブリンの顎に拳でアッパーをかましたのだった。


 痛烈な攻撃に今までの攻撃以上にHP(ヒットポイント)をゴリゴリと削っている。


 後ずさるホブゴブリンの足にジークは使わなくなった剣を突き刺し逃走を阻止する。


 そして、その場に釘付けになったホブゴブリンの顔面に思いっきり拳を繰り出した。


 繰り出した拳によってホブゴブリンは首から上が全て跡形もなく吹き飛ばされていた。


 当然、ダンジョンクリアである。


「ジークって剣士なんだよね?」


 ジークはドロップアイテムを拾い集めアイテムボックスに入れると、後ろまで来ていたカノンの声に振り返る。


「もちろん、さっき話した通り俺のジョブは剣士。ほら剣も持ってるし」


「でも、なんか剣よりパンチの方が強くなかった?」


「そりゃまあ、俺の筋肉が剣を凌駕してたってことだな。ハハハ」


「ええ、どういう体してるの」


 ジークは筋トレのし過ぎでSTR(攻撃力)が無駄に高い。


 おまけに持っている剣のスペックも低いため雑に殴った方がぜんぜん強い。


「まあいいだろ。筋肉は剣より強しって言うしな!」


「言わないよ」


「ともかく、さっさとダンジョン出ようぜ」


 剣士としてちょっとアレで脳筋なきらいのあるジークはそれらを気にした様子もなく、カノンを連れてダンジョンを脱出するのだった。

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