爆発音が…
北森は酔っているのか、その語り口は段々と愚痴めいてきていた。
「部長、先週は酷い目に遭いました。平和学社と云う団体はヤクザ者と変わりませんでしたね」
「女性がやっぱり天下を取ってしまったら、もう無茶苦茶な話しになってしまうよ。綺麗ごとに聞こえるようにしたいのは解るけど、大儲けしたいだけだ。碌でもない話にしかならない。俺たちは碌でもあるからね」
「あっそれ、碌でもあるって粋ですね」
大狸の店内はいつもの酔客で満席だが、暖簾を叩いてやってきた。この大狸で多井と佐川田が空席を探している。
「おうっ、相席を頼みます」
大将がパフォーマンスなのか、両手を合わせて頭を下げた。大将はいつもこうだ。いつも満席になると考えなしで相席を頼む。ここの常連はそれを知ってて、みんな納得済みで飲んでいる。だから断る理由はない。それだけこの店の料理は旨く、それに大将が粋だからだろう。多井は悪怯れて頭を下げ、テーブルに腰をかけた。
「一杯どうですか」
犬谷はいきなり瓶ビールを突きつけた。
「ぶっきら棒ですね。この瓶ビールは頂きますけど…」
多井はそのコップのビールを飲み干し、ああ旨いと声を上げてから、犬谷に相席のお礼を云った。
犬谷は多井の下らない話しと馬が合ったのか、お互いとても愉快そうに酒を酌み交わした。
「たまには相席も悪くないです。相席で盛り上がったのは久し振りですよ」
「しかし、女は駄目ですね、これでもかってくらい諄いし、数日前の過ぎ去った話しを蒸し返す。変わった生き物です」
犬谷は確かにまったくです、と下品で野太い笑い声を、大狸の店外まで響かせていた。
そのとき―、カチッ ドン ガタガタタ……