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小太りの男

 安宿のライフルから歩いて十分のところの、1階2階が店舗のマンションに、風俗グループ銀憂閣の事厶所はあった。佐川田はモバイルフォンで告げられたように、3階のインターホンを緊張して押す。今日の面接で明日からの運命が決まってしまう。当然だが緊張を隠せなかった。インターホンの向こう側から、掠れた男の声で中に入るように指示があった。

 誰もいないエントランスホールに不気味さを覚えたが、ここは臆さずに3階に向かって行く。オバサンと云える年代の女性が事務所に案内してくれ、応接セットのソファーに座るように指示してきた。そこには小太りの男がバインダーを持って待っていて、彼は名を多井(おおい)と名乗った。

 多井はバインダーのメモを見ながら、いくつか問い(ただ)してきた。年齢だとか、運転歴とか、土地勘とかも。しかし意外にも、多井は前職だけは訊いてこなかった。それがこの業界ルールだろうか。それでも免許証の期限だけはどうしても訊いてきた。

 佐川田は今度は自信を持って、期限切れですと応えた。多井はよしっと応えて納得したような表情を見せていた。

「じゃあ、今日から、明日から、どっちが良いですか。会社の寮に住んでもらうことになります。この上の階ですね。あとは給料は天引きして、十二万円だから。あと、うちはそんなに厳しくないけど、運転のほかに雑用も頼む事ありますけど、構わないですよね」

佐川田ははいっと返事をすぐに返した。

「それでは採用します。それで―、今からどうします」

「これから安宿に戻って荷物を纏めようかと…」

「それ―、明日じゃ駄目なの?これから食事に行くけど、一緒にどうてすか」

 多井は不意の問いに、佐川田は少し怪しみすぐには応える事が出来ず、黙ったまま多井の顔をジッと見てしまっていた。

 多井はまた問いかけた。

「どうします?」

 佐川田ははいと返事を返して、今度は大きく頷いた。



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