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それは混乱とも
ライフルをベットで天井を見ながら、ついついこの先を考えて不安になってしまう。会社からも逃げ出してしまったし… だけれども結局は―、私まで居られなくなってしまっては、事務所はもう駄目だろう。この会社を買収したと云って、まったく聞かない派遣会社の社員が、次々やって来て、会社の事務員と入れ替わっていく。取引先との約束も守れなくなり、契約も履行されない。これはテロだ。社員の声はどこにも届かないまま、会社は取引先に支払いも出来ない事態に… そしてついには社員の給与支払いも覚束ない状況になっていく。新下坂の企業の多くはそんな状態で、ほとんど全ての人々が混乱していた。そして社長が出した答えは―、「会社はもう駄目だ。帰るところがあれば、そこに帰れ」
それが今となっては、社長から聞いた最後の言葉になってしまった。佐川田には帰るところはなかったが、混乱してしまっていた。