アス本拠地侵入大作戦編:作戦5
おじ過去編スターティン☆
「僕には最愛の妻ともうすぐ13歳になる娘がいた。」
私は視線をおじから外す。いた…か。
「1年前、アスとは別の企業で、僕は技術者として働いていた。職場の人たちは全員フレンドリーで僕も充実した時間を過ごすことができていた。家族間の関係も良好で、とても満足していた。だが突然会社が莫大な借金を抱えていることが判明。少し前に上層部の仲の良い人とバーで話した時は経営は順調だと言っていたのに結局そのまま流れるように倒産してしまった。家族を養うためには金が要る。すぐに次の仕事場を探したさ。ありがたいことに僕には前の会社で鍛えられた技術力があった。その技術を目当てに何度も引き抜かれそうになったが、僕はすべて誘いを断った。直感で、今の職場を手放さない方がよいと感じたんだ。まあ、結果としては変わってしまったけれど。求人サイトを漁って一番給料がいいアスにそのまま就職した。
…しかしこの判断は間違っていた。
僕は給料の高さだけで決めて会社の様子をあまり調べなかった。崩壊前の当時のアスは表向きには企業向けの普通の製品を販売していた。
『今日からよろしくお願いしますね。』案内人の研究者の第一印象は優しそうだった。これは前の会社のような良い会社かもしれない。しかし、そんな期待はすぐに偶像となって消えた。
アスは裏では今の日本では考えられないような高度な技術を組み込んだ怪しいものを制作していた。詳細はまだ教えられないらしいがオリエンテーション中、初めてそれを見た時、僕はこれはこの世界にあってはいけないものだとすぐに分かった。得意げに僕に語る研究者は止まらずさらにおそろしい言葉を口にした。
『きみ、もっとわくわくするもの見たくない?』
わくわく?ちょっと引いているのだが。
半ば無理やり引きずられたのでしょうがなく僕は歩き始めた。
『ごめんねー。ここ狭いんだよね。でもこれからもうちょっと広くなる予定だからー。」
アスの敷地は狭かった。これから工事の予定でもあるのだろうか。まぁ、羽振りがよいから金は持っているのだろう。この時まではまだ少しの恐怖心しかなかった。
大人2人が横並びして歩くには狭い廊下を通り、別室に移動した後、部屋の中を見た僕は腰が抜けた。そしてひどい吐き気を催した。
そこにはちょっとした空間と、たくさんの人間、そして、謎の機械の中で液体に満たされている大量の脳。
結局僕は吐いた。一人も人間は生きていなかった。加工リンゴのように全ての頭が真っ二つに切られていて、脳みそが頭の中になかった。脳を抜かれた人間たちはなぜか全員笑みを浮かべていた。
『すごいでしょ。』
こいつは何を言っているんだ。よくわからないがこれ以上関わってはいけない。危険信号を脳が出してる。入社初日だが退職届を…。
『もう君は知ってしまった。これからよろしくね、前橋友嗣くん♡』
いやだ。
「申し訳ないですが僕は…」
やばい。
『あ、怖気づいちゃった?大丈夫だよ。時期に慣れていくから。もう逃げられないよ。』
そう言いながら研究者は僕にタブレットを渡してきた。画面に映っていたのは
「なんで…僕の大切な家族が…。」
拘束されているんだ。と言葉を続けようとしたが喉からは、かひゅっという息しか出てこない。娘と妻が四角い部屋で眠っていた。もちろん我が家にこんな部屋はない。この組織はだめだ。逃げないと。家族を連れて。
「家族を返せ。」
『それはできないよ。大切な人質だからね。』
今、なんて…。
『この部屋に来る前にいろいろな製品を見たでしょ?それにこの部屋。アスの秘密を知ったものは申し訳ないがworkerの了承がなくても家族もここに住んでもらうんだ。これは絶対。秘密が漏れだしてはいけないからね。』
アスにはさらにものすごい裏の一面があった。…アスは極悪非道、僕は絶望した。ここからは逃げられないのだと理解した。
「家族に…会わせてください。家族は無事なんですよね…?」
『うーん。それはきびしいな。タブレット越しならいいけど、あんまりタブレットを見ようとする職員はいないよ?』
「大丈夫です。タブレットで。」
『君の家族への待遇は君の働き次第だよ。結果を出せば人質への接し方もよくなるの』
それから僕は死に物狂いで働いた。時には悪事にも手を染めた。働くたびにアスの汚れた部分を知って吐きそうだった。そして自分も真っ黒になっていることに気付いた。
「もう…家族には会えないな…。」こんな父親の姿を、こんな夫の姿を見せることはできない。何度も警察に通報しようかと迷った。しかし家族に暴力を働くのではないかと怖くて実行できなかった。
しばらくして僕は部長のポストを手に入れた。
一旦切ります!
もう書いてて辛いから爆速で仕上げ中




