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無人島砂漠化ガクチカ育成物語  作者: 緒猿乃こえ
第一章 無人島に来たけど全部砂漠化。それでもこの場でガクチカを育成する
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6.ガクチカの夜明け・じゃがいもを埋めよう

 「TUCHIDA」からの助言を受け、じゃがいもの焼畑農業に挑戦することになった。ただ、まずは、どこを畑にするか考えなくてはならない。

 土が良くないと育つものも育たない。これは植物もガクチカも同じだ。

 朝食の菓子パンを食べ終わり、パンプキンと「TUCHIDA」を連れて、昨日まで林があった場所へ足を踏み入れた。テントからおよそ二十メートルほどの場所から焼けた草木が広がる。

 砂浜の砂のようにサラサラしていては焼畑農業には適さないと思うが、この場所はどうだろうか。


「ワンワンッ」


 パンプキンが吠えながら土を掘っている。その土の様子からしてサラサラではなく、畑の土特有の柔らかさを持っていると見た。これはいける。


「TUCHIDA、じゃあここにじゃがいもを埋めるね」


 そう言いながら俺は芽が出始めているじゃがいもを一つ、土に埋めようとした。しかし、「TUCHIDA」に止められた。


「そのような埋め方ではよくありませんよ、宮重ミドリさん。今から私が言う通りやってみてください」


「分かった」


「では、まず、芋を一片三十グラムから六十グラムほどになるように、半分から四等分程のサイズにカットしましょう」


「おっけー、ちょっと待って。テントに戻ってナイフ取ってくる」


「かしこまりました。お待ちしております」


 テントまでダッシュし、荷物の中からナイフを取り出して、今度は歩いて「TUCHIDA」達の元へ戻る。万が一、ナイフを持ったまま転倒でもしたらどうなることやら。何かしら怪我することに繋がりかねないので、ここは慎重に行く。そんなに急ぐ必要はない。なんせ時間はたくさんあるのだから。


「持ってきましたー。じゃあカットします」


 じゃがいもを四等分に切って「TUCHIDA」に見せた。


「なかなか良いですね。それでは次のステップに進みましょう。次は、三日ほど待って、その後埋めていきます」


「おいおい、ちょっと待った」


「え、今から埋める流れだったじゃん。ここから三日待つの?」


「再検索。インターネット上の他のサイトの情報によると、少なくとも一日は乾燥させる必要があるようです。しっかりと乾燥させることはどうやら必要不可欠のようです」


「まじか。じゃあとりあえずこの場所に植えることだけは確定ってことで、今日はこの芋を日当たり良いところで一気に乾燥させるまでしか進めないな」


「そういうことですね。お疲れ様でした」


「お疲れ様でした、じゃあ困るんだけどね……どうにかさっさと乾燥させることができれば……」


 あ、まずい。またこいつを頼ることを思いついてしまったぞ……。別に悪いことじゃないんだが、人為的に乾燥させていいものか、というところだけ疑問だ。


「TUCHIDAの力でこの芋乾燥させられたりする?」


「品質の低下につながる可能性は拭いきれませんが、物を乾燥させること自体は可能です。じゃがいもの乾燥にTUCHIDAシリーズが使用された前例は無いため、うまく行く可能性は未知数です。それでも宜しければ乾燥を試しますか?」


 珍しく弱腰じゃないか「TUCHIDA」!でも、前例がないなどと言われれば、これもガクチカに転用できる気がしてきて、試す以外の選択肢は無かった。


「じゃあお願いしてもいいかな?」


「承知いたしました。それではテントの前が丁度日当たりも良いので、そこに芋を並べてください。日光の力と私の力を合わせることでより早く乾燥させられると予想します」


「了解。テントに戻って早速始めようか」


 俺はテントの前まで戻ってくると、丁寧にじゃがいもを並べた。乾燥させる時間は短縮できたとしても、埋めるまでに待ち時間が発生してしまうことに変わりはない。

 さて、乾燥させている間、何しようか。なるべくたくさんのガクチカを短期間で得て、さっさとこの島から地元に帰りたい。なんというか、若干ホームシックになりかけている。犬とAIがいなければ、島に着いてから一泊する間もなく帰っていたかもしれない。全く誰も居ないというのも落ち着かないものだなと思う。

 じゃがいもを乾燥させるのに結局二日かかってしまったが、この間のガクチカ育成についてはまた後程取り上げることにしよう。





 結論から言おう。この焼畑農業は失敗に終わる。だが、ガクチカを成すために必要なのは成功ばかりではないと俺は知っている。ガクチカにはストーリー性が無くてはならない。成功ばかりの経験を聞きたいわけではないはずだ。

 失敗をどう()()()()()()

 ここがガクチカの中で最も重要な点と言っても過言ではないと俺は考えている。だから、いいんだ、失敗しても。


 ただ、なぜ失敗したのか、そしてどう乗り越えたのかを明らかにせず、過ぎていってしまってはガクチカに繋げることはできない。また、全て真実を語る必要もない。ガクチカとは、学生時代に経験したことなどを、()()()()()()()()()()()()だ。友人たちが口を揃えて言っていた。だから、俺も存分に誇張してやる。但し、明らかな嘘で話を固めないこと。これをやると後々話が繋がらなくなり、自分を苦しめることになる。だから程よく誇張する。


 これから話す俺の「ガクチカ育成・焼畑農業編」には二つのエンディングを用意した。一つは、ありのままを話すもの。そして、もう一つはガクチカ用に誇張したものだ。



 とりあえず、先にガクチカ用の方から話していこうと思う。

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