成層圏の向こう側まで狙い撃つ男
ここは…宇宙空間。
ある男が砲台の残骸に立っていた。彼はパイロットスーツを着て、銃の形をしたコントローラーで照準を合わせる。これは、彼の精密射撃の技術をそのまま反映させるためだ。
「何やってんだろうな…俺は」
狙う敵は…焼け野原ひろし。本名は知らない。人型の機動兵器に乗っている。…家族の仇だ。
「でも…。こいつを倒さなきゃ…仇をとらなきゃ…俺は前に進めねぇ…。世界とも…向き合えねぇ…!」
向こうがこちらに気づいた。
「だからよ…」
相手の銃口がこちら向けられた。
「狙い撃つぜぇぇぇぇぇえ!!」
彼の放った砲撃は焼け野原ひろしの機体に直撃した。
が、それと同時にひろしは引き金を引いた。
その粒子ビームは彼の乗っている砲台を貫いた。
その衝撃で彼は宇宙に放り出される。
「父さん…母さん…エイミー…」
目の前に広がる星が、故郷で降っていた雪と重なる。
両親と妹で暮らしていたあの場所の。
「…わかってるさ。こんな事じゃ…変わらないかもしれないって。元には戻らないって」
「でも…明日は…未来は…。ライルの生きる…未来を…!」
家を離れて暮らす双子の弟が頭に浮かんだ。
彼の目に地球が映った。
「よお…お前ら。満足か?こんな世界で」
手を銃の形にして地球へ向ける。
砲台が小爆発を始めた。
「俺は…嫌だね」
―彼は砲台の爆発に巻き込まれた…。
「ロックオォォォォォン!!」
部室でDVDを見ていた俺、龍斗は思わず叫んでいた。
ふぅ
何回見てもカッコいいな。なんで死んじゃったんだよ。
つーか1人だと暇だな。
しっかし『狙い撃つぜぇ!』はカッケーな。
なんかこう狙撃的なのをしてみたくなってきたぜ。
「呼んだかい?」
突如としてドアが開いた。
「…誰?」
「俺のコードネームは…ロックオン・ストラトス。成層圏の向こう側まで狙い撃つ男だ」
「いやだから誰だ!」
「へー。狙撃部?」
「そうだ。さっき俺の名前を呼んだだろう?部室、ここの地下だから良く聞こえるんだ」
「地下?地下なんてあんのか?ってか地下でよく聞こえたな。何が『よく聞こえるんだ』だ」
「オーライ!なら部室来てみるか?」
「いや行きたいけどお前誰だ」
「ここが狙撃部の部室だ」
「いやすごいけども普通に射撃部でいいんじゃね?」
「狙撃の方がなんかカッコいいじゃないか」
「さいですか」
「なんなら見てみるか?俺の狙撃を」
「マジか!」
「オーライ!準備するぜ」
「さっきから思ってたがなんかお前キャラ作ってるだろ」
「ロックオンだからな」
ロックオンはゴーグルを付け、競技用のエアライフルを取り出した。
「…本物じゃないんだな」
「当たり前だろ」
彼は的に向かって構え、射撃体制に入った。
「狙い撃つぜぇ!」
的がこっちに近づいてきた。無駄にハイテクだな。
「無駄とはなんだ。それより…ほら」
「おおー」
彼の放った玉は見事人型の的の10の所、つまり頭のど真ん中を貫いていた。
「10点…?」
「いや、10x点だ」
…なんかよくわからんがすごいな。
「ところで…結局お前の本名はなんなんだ!」
「機密情報は口にできない…」
「…キャラ作りやめれ」
「いや…どうしても…」
「いいから生徒証見せろ」
「おおおい!刹那!」
「だれが刹那だ!」
生徒証を見ると…
「…佐藤光彩?」
「いや…ちょっ」
「いや…普通か!なんかニールとかライルとかそんなんだと思ったのに!」
「しょうがないだろ!不可抗力だ!」
「ってかお前絶対成層圏の向こう側とか狙い撃てねぇだろ。エアライフルで」
「うるさい!ノリだ!」
それにしても地下にこんな所があったとは…。なんなんだこの学校!
え?パクり?
なんのことですかな?