龍斗―小学生
俺の名前は神山龍斗。私立野中高校の1年生だ。高校の名前は初見かな。覚えとけよ。
そして俺はまた、無為を楽しく過ごすための部、通称『無楽部』の部長も務めている。
家族は父、母の3人だった。今は寮で一人暮らしだ。
俺は今、昔を思い出している。
アルバムなんて見つけなきゃよかった。
この写真は小学生のころのかな。
まだ小学6年生だった俺は、まだ、正義とは何かわからなかった。ナタクのパイロットみたいだな。
ただ悪いものは悪いと言うことはできた。自分なりに善悪の判断はできていた。
そんな若かりしころに起きたちょっとした騒動を、俺はよく覚えている。
ある日、俺はいつもどうりにメッセンジャーバックを引っさげて(ランドセルじゃないのが俺のこだわりだった)学校からの帰路についていた。
すると、なにやら騒がしい一角があった。
物陰から伺ってみると、同級生の女子が中学生の不良っぽい連中に絡まれていた。
まだ清き少年だった俺は、細かいことはわからなかった(これが『なんぱ』という奴か!ぐらいは思った)。
だがその女子は嫌がっていた。俺はこれが悪いことだと理解した。
だから俺は助けた。正義を振りかざすつもりはなかった。
ただ助けたかっただけだ。
俺はこのころから無双の強さを発揮していたので、チンピラどもを倒すのに時間はかからなかった。
最後は礼儀正しく名乗っておいた。
「俺は石神小学校の神山龍斗だ!覚えとけ!」
気付くと女子はいなくなっていた。逃げたのかな。
次の日、朝一番で呼び出された。
先生曰わく、
「昨日商店街の近くで乱闘騒ぎがあったそうなんだが、何か知らないかね?」
俺は
喧嘩ならあったけどそれは俺が一方的に駆逐しただけなんで、『乱』闘ではないと思う、という感じなことを話した。
怒られた。すごく。
向こう軽いけがをしたこと、向こうもことは穏便に済ませたいと言っていること、以後気をつけなさいということを言われた。
女子を助けたことは言わなかった。それを誇るつもりはなかったからだ。
そして先生らは俺のことを怖がってるみたいだった。
このことが生徒に広まることはなかった。
俺は不満だった。
なんで人助けをして怒られなきゃいけないのだろうか。親はほとんど無関心だった。
そんなある時、下駄箱の中に手紙が入っていた。
ラブレターかな、などと冗談を呟きつつあけてみる。
差出人はあの時助けた女子だった。
この前は、助けてくれてありがとう。
今までお礼言えなくてごめんね。
先生に怒られたでしょ。これも言い出せなくてごめん。私がちゃんと説明すればあんなに怒られなかったよね。
でも本当にありがとう。
とってもかっこよかったよ。
見てたんだ。まさか今も…と思い周りを見渡してみる。
すると、急に隠れた影があった。
俺はこのとき『正義』の意味を少しだけ理解した気がした。