近衛騎士団長様にあこがれて
突然だけど、皆に推しっているかな?
……………うんうん。なるほどね。
まあ、訊いておいて悪いんだけど、そういう君たちの発言なんて私にとっては非常にどうでもいいんだよ!
それよりも私は、私の推しの話がしたい!
君たちはおとなしく私の話を聞いておいてもらえるかな!?
あっ。でも、その話をする前に私の自己紹介をしておこうか。
私の名前はフェノール。ちょっとした銀河帝国の第9皇女にして、どこにでもいるヲタクな転生者だよ!よろしくね☆
それじゃあ、推しの話に入ろ………え?何?もうちょっとちゃんと自己紹介しろって?どこにでも転生者がいるはずないだろ、って?
はぁ~。そう言うなら仕方ないなぁ。
私は前世だと一般の社会人、所謂OLをしてたの。どこにでもいる平凡な「年齢=恋人いない歴」な人間で、趣味はゲーム。特に乙女ゲームが好きだった。
で、私が転生してきたこの世界っていうのがその私が前世でやってた乙女ゲームの1つの舞台と同じ世界で、特に私がお気に入りだった作品の世界なんだよね~。
そして今度こそ推しの話になるんだけど、その推しっていうのがこの私が転生したゲームに出てくるキャラクターで、
「………フェノール様。先ほどから心ここにあらずと言った様子ですが、体調などに問題があったりしませんか?」
私の目の前にいるんだよねぇ。良いでしょ~?推しが目の前にいて、しかも自分の名前(ただし転生先の)まで読んでくれるなんて全ヲタクの夢だと思うんだよね。
目の前にいるそんな私の推しは、軽装の鎧を身に着けて腰には剣を携えている。まさにイケメン騎士って感じの格好!
そんな彼の名前は、
「ゴトー!!遊ぼう!!」
「あっ。戻ってこられましたか……………フェノール様。遊ぶとおっしゃられましても小官は護衛なのですが?」
「良いじゃん良いじゃん!私は皇女なんだから命令!私と一緒に遊ぶの!!」
「……………かしこまりました」
こいつ面倒くさいガキだな、みたいな顔をしつつも付き合ってくれるのが私の推し、ゴトー様!後藤みたいな名前で日本人っぽさはあるけど歴としたこの世界の人で、なんと私たち皇族を守ってくれる近衛騎士団の団長だったりする!!
調度よく私が皇族に転生できたから、近衛のゴトー様にはよく相手をしてもらえるんだよねぇ。
「ゴトー!抱っこ!」
「かしこまりました」
ちなみに私がゴトー様に遊んでもらうときは、できるだけゴトー様の顔をじっくりと見れたりボディタッチができたりするものを中心にしてる。推しの顔面が観察できて、触れ合いまでできるなんて最高の世界だぜ!グヘヘヘヘッ!!!
で、そうしてゴトー様に遊んで持ってる間に少しゴトー様の説明を追加でしておこうか。
このゴトー様、めちゃくちゃイケメンで近衛騎士団の団長っていう立場があってしかも実は前将軍だったりするんだけど、一度もゲームにおいて攻略キャラとして出てきたことはないの。乙女ゲームに出てくるイケメンキャラだというのに。
ゴトー様は隠しキャラみたいな存在で、登場するのはシリーズの2作目以降。出現条件は攻略キャラの好感度が0に近い状態で、エンディングの悪役令嬢との戦いにまでシナリオが発展すること。
攻略キャラの好感度を上げずにシナリオを進めるとかいうのは、やろうと思わなければ絶対やらないような難易度の高い事。なんだけど、それをして初めてゴトー様に会える。
エンディングで主人公が荒れ狂う悪役令嬢に攻撃を受けそうになるんだけど、そこにゴトー様が颯爽と現れて、
「いけませんね。いくらご令嬢でもそれ以上人を傷つける行ないをするのであれば、この近衛騎士団団長である小官が相手を致しますよ」
って言って主人公を守るように前に立ってくれるの!
しかもそこから主人公に振り向いて、
「安心しろ。俺が守ってやる」
って、ちょっとワイルドな感じを見せつつ言ってくれるんだよね!フゥゥゥ!!!思い出すだけでテンション上がっちゃうよ!最高ぉぉぉぉ!!!
職務で小官って一人称を使ったのに、主人公を安心させるときには俺って言うんだよ!気遣いもできて頼りがいまであるんだから、惚れないわけがないよね!!
私、この世界に転生できてよかったぁぁぁぁぁ!!!!
………ただ不満があるとすれば、
「ねぇねぇゴトー。肩車ぁ~」
「かしこまりました。危ないのであまり暴れないようにしてください」
私の前のゴトー様は、仕方がないと言えば仕方がないんだけどお堅い感じなんだよね。全然ワイルドな俺様系な感じのところは見せてくれないの。
そこは残念。
まあ、そこは私も寛大なファンだから我慢してあげるけどね!我慢できる私へのご褒美に、ゴトー様のうなじを吸おう!うひょぉぉぉぉぉ!!!!!色気のある匂いぃぃぃぃぃ!!!!!
「フェノール様。おやめください」
「いいじゃん。ゴトー、私がこうするから最近良い匂いのシャンプー使ってるんでしょ?」
「単に以前のものを使い切っただけですが………なぜ小官の髪の匂いを把握してしまっているのでしょうか」
ゴトー様は子供の育て方を間違えたとでも言いたげな雰囲気で俯き、額を片手で抑える。
こうして護衛兼遊び相手をしてくれてるゴトー様と護衛されている側の私なんだけど、関係性が分かる話はシリーズ4作目にチラッとしか出てこない。というか私、フェノールという存在自体が非常に出番が少ないんだよね。
出てくるのは同じく4作目で、主に登場機会があるのは攻略対象の1人にして私の兄であるこのルートに入ったとき。ちょっと主人公を応援するセリフを言ったり、ラストの悪役令嬢断罪のシーンで主人公をかばう発言をする。
……………それだけなんだよね。別に親友ポジとかでもなく、ただ「応援してるよ!」とか「主人公が罪を犯したはずがありません!」とか言うだけのキャラなんだよ、私って。
ただ、それでもゴトー様登場の特殊エンディングの時に名前が出てくるから転生先として当たりではあると思うんだよ!
だって4作目の中でゴトー様が、
「倒れている近衛隊とフェノール様を守りながら50人以上を相手に戦って勝利した、あの『神風』か!?」
って言われてたから!
ちなみに『神風』っていうのはゴトー様のこの国での二つ名みたいなもので、他にも他国だと『惑星の悪夢』とか『地上特化殺戮兵器』とか呼ばれてるんだよ!
物騒な名前だけどその名前に負けず劣らず、地上戦においては最強って言ってもいいくらいの存在なんだって!すごいよねぇ……………と、そんなゴトー様の凄さはいったん置いておいて。ここのゴトー様が言われていた言葉の中で大事なのが、
フェノール様を守りながらという部分。
つまり私が何か危険なことに巻き込まれて、そこで私を守ってくれながらゴトー様が戦ってくれるってこと。
……………はぁ?何それ?最高過ぎて死ねるんだが???
推しに守ってもらうとか最高以外の何でもないよね。
「どうせならお姫様抱っこしながらが良いかな?」
「肩車をご所望されたのはフェノール様なのですが?」
おっと。私の心の声が漏れてゴトー様から面倒くせぇこいつ、みたいな声色で反論されてしまった。変なこと言わないようにしないと。反省反省。
で、そんな風に襲われる可能性が高くてゴトー様に守ってもらえる可能性が高い私なんだけど、それを利用したいと思っているんだよね。
具体的には、私を守ってもらった褒美として私をあげる、ってことをしようかなと思ってるよ!
ほら、私はまだちっこいけど皇族だから、褒美には十分すぎると思うんだよ!皇族と結婚できる権利なんてなかなか手に入れられないと思うし、きっとゴトー様も喜んでくれるはず!
ただ、その時に障害となるのが、
「ふふっ。相変わらずフェノールはゴトーが大好きなんですね」
「あっ。お母さま!」
私に声をかけてくる1人の女の人。私の母親。
私を肩車していたゴトーが礼儀的な関係で私を下ろしてひざまずく。
「ダリヤ様。お仕事は?」
「ひと段落しました。疲れたので子供たちにいやしてもらおうと思いまして」
「そうですか。お疲れ様でございます」
私の母親、名前はダリヤ。
なんとシリーズ1作目で主人公の親友ポジだったりするキャラクターなんだよね。1作目でメインの攻略キャラになってる王子の妹なの。
なんとこの国のトップらしくて、女性の皇帝なんだって。しれっと1作目で王国だったのにいつの間にか帝国になってる辺り、国の領土を広げられるだけの才能を持ってたみたい。
本当は1作目のエンディングだとその王子が国王になるはずなんだけど、何か歴史が変わって2作目以降だとずっとダリヤが国王だったり皇帝だったりになるんだよねぇ。
というかどの作品のエンディングで起きる未来も、たいてい次の作品になると起きてなったことになってるんだよ。
この辺りは本当に謎。うかつに原作知識チートって喜べない理由がここにはあるんだよぉ………あっ!でも、私がゴトー様に助けてもらうのは絶対ある未来だからね!?それが起きないとか私絶対に認めないからね???
「フェノール、大丈夫ですか?危ない目をしてますけど」
「あっ。うん大丈夫」
おっと。また自分の世界に入り込んでしまってたね。
ただ、自分の娘に対して危ない目っていうのはひどいんじゃないかな?遺伝だよ遺伝!ダリヤか、もしくは今まで一度も私が顔を見たことない父親かどっちかの影響だよ(急に複雑そうな家庭環境)
「あっ。そうだお母さま!またお話聞かせて!!」
「お話ですか?もちろんいいですよ。どんな話が良いですか?」
「ゴトーと一緒に戦う話!!」
ゴトーと一緒に戦う話。
それは、私がゴトー様と一緒に戦うファンタジーをセシルが考えて行なうTRPG………ではなく、実際にセシルがゴトー様と一緒に戦った時の話。
「はいはい。その話ですね…………ふふっ。フェノールはゴトーが大好きですね」
「うん!大好き!!」
私はゴトー様に抱き着きながら、当たり前すぎる質問に大きく頷く。
なんでか知らないんだけど、乙女ゲームのキャラクターのはずなのにダリヤとか1作目の悪役令嬢とか主人公とか、ゴトー様と同じ艦隊で戦ってたりするんだよね~。
だから全員従軍経験者で元同僚、みたいな?
大きな戦争でもあったのかとかは分からないんだけど、ダリヤの兄である1作目のメイン攻略対象な王子は戦死したことになってるし。
本当にこの世界は謎だらけだよ。乙女ゲームなのに物騒すぎやしないかい?
「あっ。そうだお母さま!」
「ん?どうかしましたか?」
「私ゴトーとお買い物行きたい!!」
「ああ。またですか?良いですよ。いつものことですし」
で、私がゴトー様に助けてもらった後に婚約までする上で、ダリヤは確実に邪魔になる。だって、一応私みたいな皇女とかって政略結婚に使うだろうし。
だから、どうやって婚約をもぎ取るかが私達が幸せになる上で大切になってくるわけだね!
「ダリヤ様、お待ちください。たしかその日は会議が」
「ああ。そういえばそうでしたね。ごめんなさいフェノール。その日はゴトーは私が借りますね」
「えぇ~」
ただ、今までそこそこの年月行動を共にしてきてたみたいで2人には信頼関係がある。ダリヤ自身も大事な会議の時とかは護衛にゴトー様を重宝しているみたいだから手元に置いておきたいと思うし、私と関係を作れば絶対に引き留めておけると思うんだよね!!
まあ、いつ襲われるのかは分からないけど、今のうちにダリヤの心を操作できるよう情報とか価値とかを操作しておく必要があるだろうね!頑張らないと!!
と、まあ色々とダリヤのゴトーへ対する信頼感を会話でくみ取ったりしたけど、私の買い物へのゴトーの同行はだめになってしまった。
私としても買いたいものがあったから、1人寂しく移動していくことになる。
護衛はいるんだけど、さすがにゴトー様みたいに気軽に触れ合える人はいないんだよねぇ~。やっぱりゴトー様は特別なんだよ!!
「暇だし、今のうちに情報をまとめておこうかな」
聞かれても問題ないことを呟きつつ、私はゴトー様の情報を頭の中でまとめる。
この世界に転生して数年たつ中、ゴトー様の情報も色々と新しく手に入れられている。
ゴトー様が空気のある場所だと人間では最強っていうことがわかったり、彼女はいなかったり、平民の出自だったり、彼女はいなかったり、彼女はいなかったり!!!(ここ大事)
ただ、ゴト-様も秘密主義なところがあるみたいでゴトー様のファミリーネームを聞いたときなんかは、
「職務中は家名を捨てておりますので」
とか言われちゃったんだよね。
いや~。でもそれはそれでかっこいいよゴトー様!家族より職務に集中するってことだよね!!はぐらかしたんじゃなくて、職務へ真摯に取り組みたいって意思表示なんだよね!?つまり私が1番大切だよ愛してるよフォーエバー!ってことだよね!!!
なんて、思っていた時だった。
ガクンッ!と私の乗っていた空中浮遊する車のようなものが揺れる。
「な、何!?」
「フェノール様!まだ衝撃が来る可能性があります!お気を付けください!」
困惑する私のそばへ、護衛が体を近づける。いつでも私のことを守れる体制にしたみたい。
直後私たちの乗る車がまた大きく揺れて、ドォォンッ!という音が近くから聞こえてくる。
「こ、今度は何!?」
「確認します。お待ちください………っ!?護衛車両が数台破壊されています!襲撃です!!」
「しゅ、襲撃!?」
嫌な予感はしたけど、まさか襲撃だとは思ってなかった。完全に油断していた。
だって、ゲームでのフェノールは五体満足だったから。襲撃なんてゴトー様に守ってもらうときくらいしかなかったはずだから。
こんな襲撃が来るなんて、全く考えてなった。
「うわぁ~油断してたなぁ……………」
この襲撃、おそらく私の想像する限り原因は私。
まあ、私といっても身柄がどうこうとかいう話ではなく、私が原作と違う動きをしてしまったことが問題だったんだと思う。
たぶん原作のフェノールはこの時に1人で外出なんてしなかっただろうし、だからこそそれを狙った襲撃もなかった。
「……………もしかして、詰んだ?」
残念ながら私にチートは原作知識くらいしかない。
前世で格闘技なんてやってなかったし、この世界でも無双できるような力は持っていない。私の戦闘力は子供な見た目同様皆無。
護衛も相当な凄腕ではあるんだけど、
「すごい数の敵だなぁ……………」
私が窓の外を見て見れば、そこに映るのは襲撃者だと思われる敵の大軍。襲撃用の戦闘力を持っていると思われる車が100台以上浮かんでいる。
私の護衛も20台近くはあるけど、5倍以上の差をどうするのかは難しいんじゃないかなぁって追うんだよね。
と、思ったんだけど、
「あれ?意外と善戦している?」
「そうですね。まあ、いくら弱者が集まったところで近衛隊である我々が負ける道理など存在しないのですが」
近衛の人たちは意外なことに超善戦。襲撃者が見る見るうちに減っていく。
意外といけんじゃん。さっすが近衛。
「っ!フェノール様!」
「ん?……………ふぎゃ!?」
勝てるのでは?とか思ってまた私が油断した瞬間。車体が大きく揺れる。私の視線の端では、襲撃犯が自爆して近衛隊の人たちを大勢巻き込みながら命を散らしていた。
流石に護衛の人たちもその自爆には耐えられないみたいで、一瞬にして流れが変わって、
「フェノール様、お逃げくださ、グハァ!?」
「う、うわぁ……………」
人数差が10倍じゃ収まらなくなってきた段階で、人数差の力が現れ始めた。私の乗る車に一緒に乗っていた近衛の人も、お腹を剣で貫かれて地面に倒れ伏す。その人に限らずみんな死にかけだよ………。
そしてそんな死にかけになっている人たちに守られていた私も、
「さぁ来てもらおうか姫様」
「死にたくないならおとなしくしてろよ?」
「さ、さすがに逃げられないか~」
襲撃者たちの手が伸びてくる。私の口でも塞ぐつもりなのか布を持った手が伸ばされて、ドサリと地面に落ちた。
「「「「え?」」」」
私を含め、周囲の全員が驚愕する。襲撃犯の人たちも何が起こったのか分からなかったみたいで困惑した表情に。
なぜか腕が切り落とされても誰にも原因が分からないのだから。
でも、
「う、うそ。全滅しちゃった………」
状況を理解する間もなく、私の視界に入っていた襲撃犯全員の両手両足が斬り飛ばされて地面に倒れる。出血多量で死にそうな状況になっていて、あちこちから悲鳴が上がり始める。
襲撃犯も護衛も全滅した、とってもカオスな状況。
そんな中唯一無傷だけど何もできない私に、
「……フェノール様。お怪我はないですか?」
声がかけられる。
「っ!?ゴ、ゴトー!!」
ゴトー様の声。
それと共に私は理解する。ゴトー様の強さを。
何かと物騒な二つ名を付けられてたゴトー様だけど、その名前を付けられるくらいにはゴトー様はすごい人だったみたい。それも、触れることすらなく大勢の四肢を切り落としたんだから。
理解できないような人外な攻撃を目撃して恐怖を憶えないわけじゃない、
でも、それより、
「ゴトー!!!怖かった……………」
「遅れてしまい申し訳ありません。ご無事なようで何よりです」
傷ついた気持ちを慰めてもらえるからそっちに集中しなければぁぁぁぁぁ!!!!!
ゴトー様が私を抱きしめて頭をなでて慰めてくれてるよ!甘い匂いと柔らかい手触りに包まれて……最&高!!
「極楽浄土~」
「……………フェノール様。そのような言葉をどこで覚えられたのでしょう」
おっと。思わず口にした言葉の所為でゴトー様からジト目を向けられてしまった。悲しんでるはずなのにこんなこと言ってたらおかしいよね。お口にチャックしとかないと。
あと、だれが変な言葉を教えたんだみたいな顔もしてるねぇ。
「………とりあえず、帰りましょうか」
何か言いたそうだけど、それでもゴトー様は耐えてまずは帰ることを促す。
あくまでも今のところ傷ついた私を気遣ってくれてるみたい!くぅぅぅ優しいねぇぇぇ!そこに痺れる憧れるぅ!!
「ゴトー。お姫様抱っこで運んで」
「……かしこまりました」
あっ。さすがに気遣ってもらうにしてもお姫様抱っこはやりすぎだったかな?ゴトー様が一瞬こめかみを抑えたような気がしたよ。
……気のせい、だよね?うん。気のせいってことにしよう。私は襲われて、目の前で人が血を流すのを見てショックを受けてるいたいけな少女なのだ~。
ほれ、もっと撫でたまえ。
「お嬢様。横抱きをするのはかまいませんが頬に頭を擦りつけないでください」
「や~」
ゴトー様の要求に私は首を振ってこたえる。
当然ながら、帰る車の中でもずっとお姫様抱っこだよ!シートベルトとかあるはずなんだけど、まあ国家権力で無視してる感じかな?ゴトー様なら羽のように軽い私を落とすなんて絶対にありえないし、安心してお姫様抱っこされていられる。
けど、すぐにそんな時間は過ぎ去って、
「フェノール!怪我はないですか?」
「うん。お母さま!」
帰り着いてしまう、
あぁ~せっかくゴトー様にお姫様抱っこしてもらってたのに、こんなに早く終わっちゃうんんてなぁ。体感だと5秒くらいだよ!抱えてもらったらすぐ終わったって感じ!!またあとでしてもらわないと気がすまないね!!
と、そんなことを考えている私の頭へダリヤは手を伸ばして、
「良かったですね。お父さんに助けてもらえて」
「うん!……………うん?」
勢いで頷いたけど、何か珍しい単語が聞こえた気がするよ。いや、でも、そんなわけないよね?
困惑する私の前で、
「あれ?ゴトー、もしかしていってないんですか?」
ダリヤの視線がゴトー様に向けられる。
そうして視線を向けられたゴトー様は、立場が上のダリヤが相手であるにもかかわらず、
「ああ。そうだな。長女の件があったから言ってなかった………まあ、さすがに今のでバレただろうがな」
「ふふふっ。それはごめんなさい…………確かにあの子はべったりで護衛が難しかったですからねぇ」
タメ口で、俺様系の片鱗が見る話し方でダリヤと会話をしている。
急展開を前に現実を受け入れたくない私だけど、ゴトー様は口を開いて、
「フェノール。俺がお前の父親だ」
う、嘘だあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!そんなこと認めたくない!だって、私のゴトー様がすでに結婚してて子供までいるってことでしょ!?しかもその子供が私ってことでしょ!?
それ、どうあがいても私はゴトー様と結ばれないじゃん!?
というか、ゴトー様のセリフ、
「スター〇ォーズかよぉ……………」
力なくつぶやいてがっくりと肩を落とす私。
だからこそ気づけなかった。
私の出したスター〇ォーズという単語にみんな首をかしげる中、ゴトー様だけは「あぁ。そういえばそうだな」みたいな顔をしていたのを。
おまけ
主人公「ゴトー!抱っこ!」
推し「かしこまりました(うちの子きゃわ~~~)」
主人公「極楽浄土~」
推し「……………フェノール様。そのような言葉をどこで覚えられたのでしょう(もしかして、ヤバいくらいの天才っぽいな)」