表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カラフルな蝶

作者: 海山 里志

 昔々、世界には色がありませんでした。そのことを憂えた王子様は、国中に御触れを出しました。

「世界に色をもたらした者に褒美をやる。世界を美しく染め分けよ」

 国中の皆が沸き立ちました。ですが色はどこにあるのでしょうか。皆途方に暮れました。

 やがて風の噂が流れてきました。東方の日出る国に色とりどりの花が咲く花園がある。その花々に触れると色を運ぶことができると。

 灰色の花畑に住む真っ白な蝶がその噂を聞きました。蝶は花を巡るのが好きです。蝶は身一つで日出る国を目指しました。

 何日も何日も蝶は東に飛び続け、ついに蝶は日出る国に辿り着きました。そこには噂の通り、赤、青、黄色、紫……、色とりどりの花々が咲き誇っていました。

 蝶はまず赤い花に留まりました。白い翅に赤色が差しました。次いで蝶は青い花に留まりました。翅に青色も差しました。そして黄色い花に留まり、紫の花に留まり、その他様々な花に留まって、蝶の翅はカラフルに染まりました。蝶は満足して国へ帰りました。

 国へ帰ると蝶は周りに色を配りながら宮殿を目指しました。国の東方が色で溢れ、中央が色で溢れ、西方が色で溢れ、王都が色で溢れました。王子様は喜んで蝶を呼び寄せました。蝶が宮殿に到着すると、王子様は言いました。

「よくぞ色をもたらしてくれた! 約束通り褒美をやろう。何がほしい?」

「褒美はいりません。今回の旅で、世界は色で満ち、私は満足しています」

「そう言うな。私はお前に感謝しているのだ。何かお礼をさせておくれ」

「それでは宮殿の赤いバラを一株ください。それが王子様のお役に立てた証となるでしょう」

「いいだろう。すぐにお前の故郷に届けよう」

「ありがとうございます」

 蝶は深々と頭を下げて宮殿を辞しました。

 そういうわけで蝶の故郷には真ん中にバラの植えられた花畑があるのです。その花畑には、抜けるような青空の下、色とりどりの花々が咲き誇っていました。その光景を見て、蝶は満ち足りた気持ちになりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ