カラフルな蝶
昔々、世界には色がありませんでした。そのことを憂えた王子様は、国中に御触れを出しました。
「世界に色をもたらした者に褒美をやる。世界を美しく染め分けよ」
国中の皆が沸き立ちました。ですが色はどこにあるのでしょうか。皆途方に暮れました。
やがて風の噂が流れてきました。東方の日出る国に色とりどりの花が咲く花園がある。その花々に触れると色を運ぶことができると。
灰色の花畑に住む真っ白な蝶がその噂を聞きました。蝶は花を巡るのが好きです。蝶は身一つで日出る国を目指しました。
何日も何日も蝶は東に飛び続け、ついに蝶は日出る国に辿り着きました。そこには噂の通り、赤、青、黄色、紫……、色とりどりの花々が咲き誇っていました。
蝶はまず赤い花に留まりました。白い翅に赤色が差しました。次いで蝶は青い花に留まりました。翅に青色も差しました。そして黄色い花に留まり、紫の花に留まり、その他様々な花に留まって、蝶の翅はカラフルに染まりました。蝶は満足して国へ帰りました。
国へ帰ると蝶は周りに色を配りながら宮殿を目指しました。国の東方が色で溢れ、中央が色で溢れ、西方が色で溢れ、王都が色で溢れました。王子様は喜んで蝶を呼び寄せました。蝶が宮殿に到着すると、王子様は言いました。
「よくぞ色をもたらしてくれた! 約束通り褒美をやろう。何がほしい?」
「褒美はいりません。今回の旅で、世界は色で満ち、私は満足しています」
「そう言うな。私はお前に感謝しているのだ。何かお礼をさせておくれ」
「それでは宮殿の赤いバラを一株ください。それが王子様のお役に立てた証となるでしょう」
「いいだろう。すぐにお前の故郷に届けよう」
「ありがとうございます」
蝶は深々と頭を下げて宮殿を辞しました。
そういうわけで蝶の故郷には真ん中にバラの植えられた花畑があるのです。その花畑には、抜けるような青空の下、色とりどりの花々が咲き誇っていました。その光景を見て、蝶は満ち足りた気持ちになりました。