表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/179

04.合同クエスト説明会(1)

 ***


 キリュウを捜すプチ冒険を終えたグロリアはギルドのロビーに戻って来ていた。特に良いクエストが無ければお暇して、自主休日にしようかと思うのだがどうだろうか。


 などと考えていたせいかもしれない。

 視界の端で見覚えのある姿が身を翻したかと思えばこちらへ足早に近づいてきた。こんな自分に用がある者などパーティメンバーが、或いは数少ない同期くらいである。


「グロリア!」


 ――ジネット・トイノヴァ。同期の片方だ。

 彼女の思わぬ大きな声に周りのギルド員達が自然と顔を上げて、そしてそそくさとロビーから去って行く。自意識過剰というだけなのかもしれないが、若干傷つくので本当に止めて欲しい。別にギルドに災厄を振り撒いたりなどしないし、した事も無い。

 当然周囲の反応になど気にも留めないエルフの同期は手を振って依然としてグロリアを引き留めている。やがて、会話をする距離感にまで歩み寄って来た。


「久しぶりね、グロリア。元気していた? 睡眠はよく取るのよ。食事も大事だから毎日三食摂るようにした方が良いわ」

「久しぶり。手厚いね、ジネット」


 開口一番に健康の話を始めた彼女は満足げに微笑む。笑顔が眩しい。


「ところで、最近よく魔物の変異種討伐に駆り出されているようね。怪我はしていないかしら? どこか痛む所や、調子が悪かったら何でもいいから私に相談するのよ。全てを聞き取った上で、貴方のリーダーに分かりやすく解説してみせるわ」

「そんなに強い変異種には当たってないから」

「そうなの? けれど貴方の基準はアテにならないわね」

「……用事は?」


 世間話を長々とするような性格ではない彼女なので、グロリアは首を傾げてそう尋ねた。そうね、と同期は頷く。


「実は私達、同じクエストに呼ばれているそうなの。今丁度、楓さんから貴方を捜して会議室に連れてくるように言われているのだけれど、一緒に来てくれる?」

「……? 分かった」


 ジネットはSランクパーティのメンバーだ。そして言わずもがなグロリアもそうであり、そこが組むクエストは大変珍しい。討伐がおよそ不可能とでも思われる魔物だったり、最早小国くらいの力を付けた盗賊団などが相手だったりするのだろうか。

 自らで思い浮かべた恐ろしい予想に身震いする。尤も、そんな感情は隣のジネットに全く伝わらないので当然彼女も用件をそこで止めたりなどはしないのだが。


 ***


 ジネットに手厚く案内され、空き部屋と言う名の別室に到着する。既に自分以外のメンバーは揃っているようだった。

 ――これは……緊張する布陣だ!

 戦々恐々としながらもグロリアはメンバーを失礼にならない程度にチラ見する。


 まずは我らがイェルドのパーティ。全員揃っており、先程少し会話をしたキリュウの姿もあるし、最近見掛けなかったユーリアもいる。様子が若干おかしいジークも健在で、当然ながらリーダーのイェルドも微笑みを浮かべて佇んでいた。

 そこにグロリア自身とジネットがくわわって――一人、知らない顔がいる。

 ジネットはSランクの紅葉パーティの一員だ。一人でイェルドのパーティ内にいるとは考えづらいので、この見ず知らずの女性は紅葉パーティの構成員なのかもしれない。


 ――ただ、この人……。

 新顔の彼女は恐らく混血だ。頭には鬼人の物と思われる一対の角。しかし肌はすけるように白く、尖った耳を持つ。こちらはエルフの特徴だ。あまりにもそれぞれの種族柄が出ているので分かりやすい。鬼人とエルフは折り合いが悪い事が多いので、珍しい混ざり血と言えるだろう。


 そんな彼女に対し、やはり顔見知りであったらしいジネットが声を掛けた。


「楓さん。彼女が私の同期、グロリア・シェフィールドです。あまり多くを話さない人柄だけれど、どうか気を悪くしないでください」

「あら、手厚いのね。ジネット。そうだったわ。あたし達、初対面じゃない。こんにちは。世にも珍しい66期のグロリアちゃん。あたしは楓。紅葉パーティのメンバーよ」


 やはり予想通り、ジネットの仲間だったようだ。失礼が無いようにしなければならないとガッチガチに緊張しつつグロリアは僅かに頭を下げる。


「こんにちは」

「挨拶が出来る子は嫌いじゃないわ。本当に無口なのねぇ」


 ――無口って言うか、何を話せばいいか分からないだけなんだよなあ……。

 今日も今日とて心中の呟きは誰にも届かなかった。


 紅葉のパーティの基礎的な知識としては鬼女と名高いSランクの紅葉が束ねており、女性のみで構成されているというのが有名な話か。花園などと夢見る者もいるが、実際は鬼人が束ねているだけあって武闘派集団らしく謎の多いパーティだ。

 あとこれは極めて個人的な話だが――どうも、自分とリーダーである紅葉の相性はあまりよろしくない気がする。というか鬼人との相性が良くない。彼等彼女等は強さを追い求め続ける種族。どうしてだか目を付けられてしまうのだ。柊しかり、グイグイ来られると本当に困るので、今回もリーダーである紅葉本人が出て来ない事を祈るしかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ