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万能家だけど代償にコミュ能力を全て失いました  作者: ねんねこ
4話:友達が欲しいタイプの人見知り
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13.言葉選びが下手クソ(2)

 ――近すぎる。魔弓を使ったら、私も巻き込まれて大惨事になっちゃうな。

 という訳なので、グロリアは持っていた魔弓を《倉庫》へ収納し、ついでに愛用のナイフを取り出した。正直、手加減をしてうっかり殺してしまわぬよう注意しなければならない人間相手の方が余程面倒だ。

 その様子を見ていた槍持ちの女が周囲へと警戒を呼び掛ける。


「《倉庫》での武器切り替えが速い。近距離用の武器を今は手にしているけれど、思わぬ所から魔法が飛んで来るかもしれないわ。魔法は、魔法石さえあれば武器がなくても使えるのだから」

「これAランカーかな、もしかして・・・・・・。若いパーティはリーダーだけAランクで、後は平なのが基本構成だけど、コイツはBランカーじゃなさそうなんだよな」

「暴れさせ過ぎたせいで、臨時パーティでも組んでいるんじゃないかな。《レヴェリー》でしょ・・・・・・。Aランク上位パーティのロボ・ガウスが所属してるんだから。それにまさか、余所のギルドと混ぜ込む編成はあり得ないだろうし」


 やはりAランクパーティにもなると、ロボの名前くらいは余所の連中にも知られているようだ。それくらいなければ、指名制度の恩恵を受けられないので当然と言えば当然だが。


 手の中でナイフを弄びながら思案する。4人組は明らかに警戒しており、そうであるが故になかなか仕掛けてこない。柊木を置いてきてしまったが、彼はどうしているだろうか。ロボと合流するもよし、人影をグロリアと共に追うのもよし、という割と自由が利くポジションだったのだが。

 柊木が追いかけてきているのであれば、4人組にはお喋りしてもらって、彼の到着を待つ方が安全だ。だが大狼・変異種の残党処理に手間取っており、誰も来ないのならば可及的速やかに現状を終息させたい。ロボのパーティは不在人員が多すぎて、多対一に対処出来るメンバーがいないからだ。


 ――いいや、待つのは好きじゃないし、棒立ちして形だけの警戒態勢を取っている感じを見るに手練れというには程遠い人達みたい。こっちから仕掛けてやろう。

 普段の手癖でナイフをくるりと回転させ、逆手に持ち替える。手遊びは止めろと前所属でもたまに言われたが、今になっても直っていないよくない手癖だ。


 思考を終え、狙いをずっと黙って離脱の機会を窺う狙撃手へと向ける。面倒なのはこの木々が生い茂る場所で長距離武器種の居場所を見失う事だ。常にどこへ行ったか気を配らねばならず、ストレスも酷い。別に誰から相手取っても最終的には全員伸すつもりだが、一番精神衛生に良い相手から処理するべきだろう。


 態とらしく狙撃手へ肉薄する。こうして、弱い部分を叩けば他の役職が止めようとして群がってくるのがセオリーだ。ただし、イェルドが率いるようなSランクパーティ勢には同じ手段が通用しないので気を付けよう。

 案の定、槍を装備した女が鋭い声を上げる。


「そっちに行ったわ! 後衛から潰すつもりね・・・・・・!! 援護に行くわよ!」


 ――釣れたかな。

 視界の端で槍女が身を翻す。それと同時に、片手剣装備の男も反対側から走って来ているのが微かに見えた。そして、中衛の杖持ちが魔法を編み始める。何の魔法なのかは視界の関係で見えなかったが、敵味方一塊になっている間は撃ってこないだろう。


 近付いた狙撃手の出で立ちをざっと確認する。

 種族は恐らくヒューマン。魔法石は標準的なベルトに3つ付いているだけ。構成からして《倉庫》、《通信》等の最低限な魔法装備。ダミーでもぶら下げておけば良いものを、魔法の使用が苦手だとバレバレだ。

 ――武器の交換が恐らくは下手クソ。弾倉も《倉庫》内に格納しているのではなく、直に所持している。

 であれば今持っている武器を破壊すれば、次の武器を取り出すまで無力化できる。


「こ、このっ・・・・・・!」


 果敢にも長距離射撃用銃の銃口を向けてきたが、その銃口のナイフの刃をブチ込む。暴発の危険性が一気にアップした事により、男が怯み、躊躇した。

 すかさず左足を垂直に振り上げる。顎を狙って繰り出した蹴りは、おおよその狙い通りに男の顎を打ち抜き、鈍い音と共に一人を戦闘不能にする。思ったより良い手応えだったが、大丈夫だろうか。流石に骨が砕ける程の威力は無かったと思うが。

 というか――


「想像より弱い」


 ポロッと溢れた言葉だったが、目前にまで迫っていた槍持ちの顔色が変わる。


「人を煽って楽しいのかしら!」


 またバッドコミュニケーションだったらしい。戦闘技術は十二分に学んだので、コミュニケーションも誰か教えてくれないだろうか。切実にそう思う。


 繰り出された槍による突きはしかし、先程張ったままだった《防壁》によりほんの一瞬、されど一瞬だけ動きを阻まれる。視界で壁にヒビが入るのを見つつ、槍の柄を捕まえた。

 魔法、《光撃Ⅰ》と《水撃Ⅰ》の同時使用により、雷撃系の魔法へと性質が変化。槍の柄を通してその一撃を受けた女が声も無くその場に崩れ落ちた。魔物と違って、人間には基本的に魔法耐性が無いのである。ただし、魔法を防ぐ頭脳があるので、やはり戦闘技術はこういった荒事には必須項目か。


 残りは2人。そろそろ人が捌けてきたので、中衛が魔法を撃って来る頃合い――

 そう思って振り返り、意外な光景にグロリアは動きを止めた。


 倒れ伏す、今まさに次の獲物にしようとしていた中衛の杖持ち男性。そして、振り返った丁度その瞬間――いつの間にか現れた柊木の峰打ちによって、片手剣装備の男が地に伏したのだった。


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