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03.独立するのが辛すぎる(3)

 ところで、とイェルドが不意に話題を転換する。


「グロリアはセレクションの事を知っているな?」

「はい」


 セレクション・パーティ。外ではレヴェリー・セレクションなどと呼ばれている、《レヴェリー》の上位10パーティの事を指す。

 上位3つはSランクパーティで埋まっているが、4位以下はAランクパーティで構成されている。上位Aランクパーティなどはこのセレクション・パーティについて指す事が多いだろう。


「そのセレクションに、入って欲しいとゲオルクさんがそう言っているようだ」

「私の意志でそんな事は決められないのでは」


 ――止めろ止めろ! そういう目立つ所に一朝一夕で食い込もうものなら、どこから不満が出るか分からないし、シンプルに目立つでしょ。

 そんなグロリアの心中になど当然気付かないイェルドはにこやかな態度のまま話し続ける。


「そうだな。しかし、セレクション・パーティの管理者でもあるゲオルクさんが打診しているから案外すぐ入れ替え戦に出ろと言われるかもしれない」

「……はあ」

「クエストをこなしてくれ。流石に《相談所》の元メンバーで構成されているから、という理由だけで入れ替え戦の参加権は与えられないだろう」

「分かりました」

「それに流石に結成したばかりとはいえ、パーティに2人しかいないのはギリギリ過ぎる。俺の方でも募集はしてみるが、まずはメンバーを増やした方がいいな。せめて4……いや、5人。というか、俺も他人事じゃないからなあ……」


 グロリア自身がイェルドのパーティから抜けたので現在は人数が4人だ。早急に補充する必要があるのは、彼も同じである。

 そもそもパーティ運営で5人は少ない。普通に二桁くらいメンバーを抱えているパーティもたくさんある。イェルドや新規立ち上げのグロリアのパーティが異常なのだ。


 ――メンバー集め、苦戦しそうだなあ……。

 グロリアとベリルがかつての仲間である事は最早、周知の事実。完成しているコミュニティにゼロから突っ込んでくる度胸があるギルド員などそうはいないだろう。というか、やんちゃしていた時代の名残で嫌煙されてしまうかもしれない。

 セレクション入りについては知らない。入りたいと思わないし、これは一旦忘れる事とする。どうせ月のノルマも消化しなければならないし、メンバーを増やす事の方が先決だ。


「ああそれと、新しく結成したパーティの月ノルマについてだが。本来なら来月から割り振られるはずなんだがな、ゲオルクさんが取っておいてくれている」

「暇なんですか、ゲオルクさん」


 余計な事をしやがって、は流石に言ったらマズイと思ったので呑み込む。

 しかしこの無茶苦茶な感じにはイェルドもまた苦笑している様子だ。


「張り切りすぎだよな、ゲオルクさん。こんな特別待遇、どうかと思うが……。試験を首位通過した時点で分かっていたし先回りしていたんだろうな。そういう風に思っておこう」

「……」

「いやまさかとは思うが、月ノルマ達成で入れ替え戦の参加権を捻じ込もうとしているのか……? それは無茶じゃないか?」

「前回の入れ替え戦はいつ行われたんですか?」


 あり得そうで恐ろしいので尋ねる。前回が最近などであれば、数か月は開催されないはずだ。

 ちなみに入れ替え戦と言うのはゲオルクの采配で定期的に開催される推薦されたパーティとセレクション10位パーティの模擬戦だ。勝った方が10位となるのでそう呼ばれている。

 正直、独立していない状態ではセレクションも何も無いので今までまるで興味が無かった。Sランカーの傘下にいる時点でずっとセレクションだし、気にする必要性も無かったのである。


 ともあれ、前回の入れ替え戦について考えていたイェルドは渋い表情をした。嫌な予感、的中かもしれない。


「前回は半年も前だ。ああ、やけに入れ替え戦を渋ると思っていたんだ。グロリアの昇格を待っていた……は、流石に言い過ぎか? だが半年前あたりからグロリアに受験を強く勧めるようになっていたような」

「個人に肩入れし過ぎかと。気にし過ぎではないですか?」

「……いや。ゲオルクさんは、そういう所がある。あの人の商魂はエルフから見ると理解不能な域に到達しているくらいだ。考えてもみれば、ほぼ《相談所》の再編であるお前達のパーティを下位Aランクパーティと同じ値段で売るのは……大損とも言える。俺でもそう思うのに、ゲオルクさんがそれを考えないとも思えない」

「……」


 ――どう転んでも参加権とかいう呪いの権利を手に入れさせられるって事!?

 現状、パーティは2人しかいないのだがそのままでも敢行するか、または見ず知らずのメンバーを勝手にパーティへインされそうな勢いだ。恐すぎる、その必死さ。

 何よりイェルドのやや悪い顔色が全てを物語っている。本当にトンチキな方法で参加権を握らされそうだと。


「……しかし、俺達がそんな事を考えていてもどうしようもないな。ゲオルクさんはサブマスター。彼がそうだと言えば、そうなる。悩むのは無駄だ。あまりにも強引なら口を挟むが、グロリアのセレクション入りは応援したいし」


 こうして、一先ずはパーティ作成の書類を完成させるという事で落ち着いた。


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