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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~  作者: 青雲あゆむ
第3章 昭和編

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48.大和型戦艦を造ろう

昭和11年(1936年)4月 海軍艦政本部


 1934年末の軍縮条約破棄によって、アメリカは海軍の増強に動き出した。

 それは軍縮条約で溜まっていたうっぷんを晴らすような、強烈なものである。

 具体的には、戦艦4隻、空母2隻、巡洋艦5隻、駆逐艦14隻、潜水艦5隻という、壮大な計画だ。


 法案が成立すると、ルーズベルトは大々的に宣伝し、景気の浮揚効果を狙った。

 すでにニューディール政策として、大々的な公共事業を行なっていたものの、思うほど効果を上げていないため、新たな事業が求められたのだ。


 これに対し日英仏も、黙っているわけにはいかない。

 第2次ロンドン軍縮条約を踏まえながら、各国なりに建艦計画をぶち上げた。

 特に日本は検討中としながらも、過激な計画を公表してみせる。


 それは4万5千トン級の戦艦4隻を中心とする、大建艦計画だった。

 詳細は機密としながらも、”18インチ(45.7センチ)砲の採用もあり得る”、という情報を意図的にリークした。

 すると米国から、大きな反応が返ってきた。


「フハハッ、アメリカも18インチ艦を造るときたか」

「まあ、狙いどおりではありますね」


 そう言っているのは、平賀譲大将と、藤本喜久雄少将である。

 (兵制改革で、技術士官も大将昇進が可能になっている)

 史実では31年に予備役入りしている平賀さんと、35年に亡くなっている藤本さんだが、どちらもいまだに現役だ。

 これも俺たちが史実の流れを平賀さんに話し、妙な確執が生じないよう、努力してきた結果だ。


 史実では脳溢血で亡くなっている藤本さんも、俺たちのあいまいな健康指導で、今のところは大丈夫そうだ。

 平賀さんとの確執がなくなって、ストレスが減ったのも大きいかもしれない。

 そして藤本さんは溶接工法に積極的で、その普及に貢献してくれている。

 ちなみに彼とは普通の付き合いで、俺たちが未来人とは話していない。


「この調子で戦艦の建造に邁進してくれると、いいですね」

「うむ、その間に我らは、空母部隊を建設するわけじゃな」

「そうそう。金剛と長門も、ようやく改装できますね」

「フハハッ、楽しみですな」


 俺の言葉に、平賀さん、後島、藤本さんが楽しそうに応じる。

 なにしろアメリカの軍縮条約離脱によって、時代はすでに事実上の無条約状態へ向かっている。

 そんな中、日本は空母を追加すると同時に、既存の戦艦も改装し、艦隊護衛の基幹とする計画を建てていた。


 まず新型の空母だが、日本はすでにエセックス級に相当する空母を、1933年に1隻就役させていた。

 正規空母の翔鶴だ。


【翔鶴】

全長x全幅:265.2x28.4m

基準排水量:2.7万トン

出力   :15万馬力

最大速力 :33ノット

機関   :ロ号艦本式ボイラーx8基

      艦本式ギヤードタービンx4基、4軸

搭載機数 :95機

主要兵装 :38口径5インチ(12.7センチ)連装高角砲x4基

      38口径5インチ高角砲x8基

      25ミリ連装機銃x30基


 鳳翔、蒼龍の建造・運用によって得たノウハウをつぎ込んだ、意欲作である。

 当然ながら、艦内構造には直線部分を多用し、構造部材を規格化することで、量産性を確保している。

 もちろん格納庫は開放式で、生存性にも多大な配慮をはらっていた。


 特に危険なガソリンタンクは、船首側、船尾側の中央部に1ヶ所ずつ配置した。

 これを4重の隔壁と海水で囲い、戦闘時には周囲に二酸化炭素を充填するという、念の入れようだ。

 さらに減ったガソリンは海水に置き換えて、気化ガソリンが極力発生しないようにも配慮している。

 これは史実のアメリカ式を参考にした手法で、鳳翔や蒼龍でいろいろ検討した結果、やはりこれが最も実用的だとの結論に至った。


 航空機の搭載も露天繋止を基本として、95機を実現し、もちろん舷側エレベーターを採用。

 また5インチ高角砲と25ミリ機銃で、対空戦闘能力も高めている。

 さらにレーダーに連動した射撃装置と、近接信管も開発中である。


 レーダーについてはイギリスに共同研究を申し込み、八木・宇田アンテナとマグネトロンを用いたシステムを開発中だ。

 さすが、イギリスの技術力はなかなかのもので、史実よりも開発が早まっている。

 ちなみにこの辺の技術がアメリカに渡らないよう、釘を差してあるのは言うまでもない。



 そして空母機動部隊の守護神として、既存戦艦の改装にも取り掛かった。

 金剛型と長門型戦艦をドックに放りこんで、順次強化しつつあるのだ。

 改装後の諸元は、こんな感じになる予定だ。


【金剛 改装後】

全長x全幅:219.4 x 31m

基準排水量:31700トン

出力   :14万馬力

最大速力 :30ノット

機関   :川崎重工製 重油専焼缶x8基

      三菱重工製 ギヤードタービンx4基、4軸

主要兵装 :50口径14インチ(35.6センチ)連装砲x4基

      38口径5インチ連装高角砲x8基

      25ミリ連装機銃x20基



【長門 改装後】

全長・全幅:224.9 x 34.6m

基準排水量:39000トン

出力   :16万馬力

最大速力 :30ノット

機関   :川崎重工製 重油専焼缶x8基

      三菱重工製 ギヤードタービンx4基、4軸

主要兵装 :50口径16インチ(40.6センチ)3連装砲x3基

      38口径5インチ連装高角砲x10基

      25ミリ連装機銃x20基


 それぞれバルジを設けて排水量が増しているが、機関も増強して30ノットを可能としている。

 また機関は民生化を進めており、川崎と三菱の製品を採用する。


 さらに対空兵装を強化し、長門型に至ってはいよいよ16インチ砲を搭載だ。

 しかも史実で45口径だったのを、50口径に長砲身化している。

 (金剛も50口径を採用)


 まだレーダー関係は間に合ってないが、それが揃えば、まさに世界最強クラスの戦艦になるだろう。


「それに加えて、大和と武蔵か」

「しかし本当に18インチ砲でなくて、いいんですかね? アメリカが18インチ艦を作る可能性は、高いでしょうに」

「もう戦艦同士で殴り合いをする時代じゃありませんからね。それに16インチ砲でも、威力を増す方法はあるし、長門と砲弾は共通化したいですから」

「たしかにそのために空母を量産するわけですからね。でも本当に航空攻撃で、戦艦が沈められるんですか?」

「それはもちろん。そういう兵器も開発してますからね」


 大和が18インチ砲でないことに、不安をもらす藤本さんを、俺たちがなだめる。

 なにしろ航空戦力の優位性が高まるこの時代に、2隻だけ18インチ砲戦艦を造るのは、あまりにも効率が悪い。

 それぐらいなら16インチ砲にして、長門と砲弾を共用するのが、ベストと判断したわけだ。


 ちなみに4隻つくると言ってるのはブラフで、代わりに空母を建造する予定である。

 現状、計画されている大和型戦艦の仕様は、こんな感じだ。


【大和】

全長・全幅:245 x 34.6m

基準排水量:45000トン

出力   :18万馬力

最大速力 :30ノット

機関   :川崎重工製 重油専焼缶x8基

      三菱重工製 ギヤードタービンx4基、4軸

主要兵装 :50口径16インチ3連装砲x3基

      38口径5インチ連装高角砲x12基

      25ミリ連装機銃x40基


 そのモデルとしては、やはりアメリカのアイオワ級になるだろうか。

 あれほど全長は長くないし、速力も30ノットに抑えているが、その戦闘力は決してひけを取らない。

 これに翔鶴型空母が多数そろえば、アメリカとも互角に戦えると、俺たちは判断していた。

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