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40.日本海軍の状況

昭和6年(1931年)5月 日本


 次は海軍の状況を見てみよう。

 海軍は日露戦争後、大胆な戦艦の建造キャンセルを実施した。

 その対象は、1905年以降、造られる予定だった筑波、生駒、薩摩、安芸、河内、摂津、鞍馬、伊吹である。


 どうせドレッドノート級の登場で、旧式化する運命だったので、中止を認めさせるのはなんとかなった。

 (東郷さんたちは、メチャクチャ苦労したらしいが……)

 これら8隻のキャンセルで、おそらく8千万円ほどは、資金が浮いただろう。


 しかし戦艦の整理は、まだまだ終わらない。

 金剛型を史実どおりに造ってからは、さらに8隻の超弩級戦艦を葬り去ってやった。

 それは史実であれば、扶桑、山城、伊勢、日向、天城、赤城、高雄、愛宕と呼ばれた艦である。


 これらが1隻4千万円とすれば、実に3億2千万円が浮いた計算になる。

 (もちろん、そう単純ではないが)

 その代わりに長門型を4隻(長門、陸奥、土佐、加賀)造ったので、列強も日本の戦艦戦力を侮れないだろう。


 この時点でワシントン軍縮条約が結ばれ、主力艦と空母の建造に枷が掛けられる。

 約15年にもおよぶ、ネイバル・ホリデイ(海軍休日)の始まりだ。


 しかしそうなったらなったで、条約で規制されない巡洋艦や駆逐艦の開発・建造に、各国は邁進する。

 当然、日本もいろいろ造った。

 史実における、1930年時点の就役艦艇数を見てみよう。


戦艦:10隻

空母:3隻(2隻)

重巡洋艦:8隻(8隻)

軽巡洋艦:22隻(1隻)

駆逐艦:54隻(43隻)

潜水艦:23隻(22隻)


合計:120隻(76隻)


 カッコ内はワシントン条約後に建造された艦だ。

 つまり重巡や駆逐艦、潜水艦のほとんどは、条約後に造られていることになる。


 で、この世界ではどうなったかというと、


戦艦:10隻

空母:2隻(1隻)

重巡洋艦:4隻(4隻)

軽巡洋艦:20隻(4隻)

駆逐艦:50隻(40隻)

潜水艦:15隻(14隻)

護衛艦:20隻(20隻)


合計:121隻(83隻)


 とまあ、こんな感じになっている。

 正規の軍艦は少ないが、代わりに護衛艦艇が増えている。

 これは第1次大戦の戦訓により、海軍内に海上護衛総司令部が設置された影響だ。


 同司令部は1920年ごろに設置され、海上護衛に有効な装備を研究し、その強化に努めてきた。

 今はまだ少ないが、いざという時には一気に増強できるよう、準備を重ねている。


 そして通常の艦艇もそれなりに建造しているが、各種それぞれに、まずは試験的な艦をいくつか造り、成績の良好なものを量産していた。

 当然ながら量産性や、損傷を受けた時の生存性など、性能以外の部分も、検討を進めている。


 ちなみに1930年のロンドン軍縮条約だが、ほぼ史実どおりの結果になった。

 史実では練習艦にされた比叡が、香取に代わったぐらいだろうか。

 もちろん、国内で”統帥権干犯問題”なんてのも起きていない。


 そんな中で、鳳翔に続いて1928年に建造された空母が、蒼龍だ。


【蒼龍】

全長x全幅:251.4x33.4m

基準排水量:2万トン

出力   :12万馬力

最大速力 :32.5ノット

機関   :ロ号艦本式ボイラーx8基

      艦本式タービンx4基、4軸

搭載機数 :80機

主要兵装 :38口径5インチ(12.7センチ)高角砲x8基

      25ミリ連装機銃x14基


 排水量は鳳翔の倍にもなり、搭載機数はほぼ4倍だ。

 さらに速力も、大きく向上している。

 それは史実の蒼龍よりも、むしろアメリカのヨークタウン級空母を模倣したものである。


 鳳翔同様に生産性に配慮し、格納庫は開放型。

 機関にはシフト配置を採用して、生存性も格段に上がっている。

 さらには舷側エレベーターも採用しているので、航空機の入れ替えも容易になった。

 ちなみに機体を露天繋止ろてんけいしすることによって、搭載機数を増やしている。


 この蒼龍の使い勝手を検証してから、準同型艦の飛龍も建造中だ。

 さらには拡大発展型の、エセックス級に相当する空母の建造にも、取り掛かっている。

 エセックス級相当が量産できるようになれば、アメリカ海軍にも十分に対抗できるだろう。


 これらの艦艇を開発・建造するとともに、日本海軍はその運用研究にも熱心だ。

 第1次大戦で得られた戦訓を基に、技術や理論の進歩に合わせて、見直しを繰り返している。

 まあ、戦争なんかないに越したことはないのだが、備えは必要だよな。

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