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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~  作者: 青雲あゆむ
第3章 昭和編

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32.トランジスタを作ろう

昭和2年(1927年)2月 東京砲兵工廠


「とうとうトランジスタの開発に、成功したよ」

「おお、やったな」

「これでまた一歩、目標に近づいたな」

「さすがやん」

「おっし、これでまたコンピューターの実現に近づいたな」


 それはとうとうトランジスタの開発に成功したという、中島の報告であった。

 あるかもしれない対米戦に備え、俺たちは国力の底上げに邁進していたが、その肝となるのが半導体、そしてコンピューターの実用化である。

 そのためにまず、高純度の単結晶を得やすいゲルマニウムに的を絞り、研究を進めていた。


 そしてこの度めでたく、点接触型のトランジスタが実現したのだ。

 まだまだ研究室レベルだが、史実では1947年に登場するので、20年も先取りしている。

 当然ながら、外に出すことはできないので、バリバリに情報は秘匿することになる。


 東京砲兵工廠の奥深くで、人員を限定し、ひっそりと研究しているのだ。

 基本的にその成果は、秘密特許として、国内だけで使用することになるだろう。


 その一方で、時代に沿った電子機器の開発も進めている。

 具体的には、真空管を用いた機器類だ。

 真空管はフレミングが1904年に発明したものから始まり、徐々に高性能化が進んでいる。


 しかし消費電力や発熱は大きいし、寿命は短い。

 それに小型化や耐震性に難があるので、トランジスタの実用化にともなって、置き換えが進んだ。

 (現代でも特殊用途で残ってはいるが)


 とはいえ、この時代では真空管こそ最先端の電子素子であり、その技術力は国運を左右する。

 そこで政府も重点開発分野に指定し、開発に取り組んでいる。

 もちろん民間の電気企業には、愛国商会がガンガン出資して、その開発を促していた。

 おかげで日本の電気・電子技術は、史実よりも格段に進んでいる。



 ちなみに俺たちが持ちこんだパソコンやスマホは、次々と寿命を迎えている。

 大事に使ってはきたのだが、さすがに経年劣化には勝てない。

 ひとつ、またひとつと動かなくなり、22年後の今では、パソコンが2台稼働するだけ。


 それも中島が部品を使いまわして、必死に修理してきた結果だ。

 さんざんお世話になってきたパソコンだが、いずれは全てご臨終になるであろう。

 そのため、めぼしいデータについては、紙に書きだして、保存されている。


 金属や化学材料の組成など、とても覚えきれない情報も多いからだ。

 それらは日本の工業力の発展にともない、徐々に展開されている。


 そしてパソコンがめったに使えなくなって、一番歯がゆい思いをしているのが、川島である。

 情報工学出身の彼は、元々コンピューターにはめっぽう強く、膨大なデータと様々な技術で、情報をコントロールしていた。

 そんな川島にとって、パソコンの使えない日々は、さぞ味気なかっただろう。

 そのため、今回のニュースには、一番よろこんでいるのだ。


「この調子で、早くコンピューター作ってくれよ、正三」

「無茶いわないでって。21世紀並みのモノを作るには、数十年は掛かるよ」

「う~ん、それならせめて、70年代ぐらいのモノを頼むよ」

「いや、60年代ぐらいがせいぜい、かな」


 川島の要求を中島がねぎっているが、はたして40年代には、どれほどのコンピューターが実現しているだろうか?



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昭和2年(1927年)3月 横須賀海軍工廠


「これが伊号1型潜水艦じゃ」

「「「おお~~」」」


 今日は横須賀海軍工廠で、平賀中将(26年に昇進)に潜水艦を見せてもらっていた。

 それが伊号1型潜水艦で、史実でもこの時期に竣工している。

 しかしその中身は少々ちがう。


 なにしろこの世界では、軍艦の建造は絞られている。

 そこで潜水艦については、ドイツから持ち帰ったUボートを徹底的に研究し、いくつかの計画を策定した。

 それは主に、以下のものである。


1.近海航海型:千トン以下、近海のみで使用

2.遠洋航海型:2千トン前後、2万キロ以上の航続距離を持ち、長期任務に従事

3.指揮偵察型:2千トン以上、水偵を搭載し、指揮偵察に使用

4.潜水空母型:3千トン前後、複数の航空機を搭載し、敵地を襲撃する


 1の近海型は呂号と呼ばれ、すでに建造されて運用法を検討している。

 そして伊号1型が2に相当し、今回、初号艦が就航した。

 その仕様は、以下のようになっている。


【伊号第1潜水艦】※カッコ内は史実の値

全長・全幅:97.5x9.2m

基準排水量:1970トン

出力   :水上7千馬力(6千)、水中3千馬力(2600)

最大速力 :水上20ノット(18.8)、水中10ノット(8.1)

機関   :ラ式2号ディーゼル2基、2軸

主要兵装 :53センチ魚雷発射管 艦首4門,艦尾2門、魚雷数22本

      7.7ミリ機銃x1


 史実に比べて性能が向上しているのは、日本の工業力が高まっているのに加え、俺たちが助言したからだ。

 もっとも、本格的に開発に参加したわけではなく、あくまでたまに見に来て、助言した程度である。

 すでに日本標準規格(JES)を提案して、20年も経つだけあって、日本の工業部品の品質はそれなりに高い。


 なにしろ官需品として納めるには、JESをクリアしていないといけないのだ。

 そのため多くのメーカーが規格を意識するようになり、工業製品の品質底上げに役立っている。

 おかげでその部品を使ったエンジンや電気モーターも、無理せずに性能が上げられるのだ。


 ちなみにこの状況により、軍も複数のメーカーから部品を仕入れられ、コスト削減に寄与している。

 その影響は地味だが、着実に軍事費の低減につながっているのだ。


 そして3番目と4番目のプランだが、こちらは航空機の開発が追いついていないので、まだまだ計画だけである。


「これって、聴音機やソナーも搭載されてるんですよね?」

「もちろんじゃ。中島くんの協力で、その辺の開発も進んでおる。おそらくイギリスよりも高性能じゃぞ」

「おお~、さすが正三」

「ウフフ、まあね」


 皆に褒められて、中島が照れている。

 しかし最近は電気関係の技術が向上し、彼の活躍の場が増えているのも事実だ。

 そして今後は、さらにそれが加速するだろう。


「いずれにしろ、これで潜水艦の運用研究も進みますね。しっかりと育成しないと」

「うむ、その辺はちゃんと手配しておる」


 平賀さんはそう言って笑い、自信を見せていた。

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