表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/71

21.勃発、第1次大戦!

大正3年(1914年)8月4日 皇居


 欧州で緊張が高まる中、俺たちはまた皇居に呼び出された。

 この時すでに、欧州ではサラエボ事件が発生。

 これを受けてオーストリア・ハンガリー帝国が、セルビアに最後通牒を突きつけ、連鎖的に世界大戦へと動きはじめていたのだ。


「本当に君たちの言うようになっているな」

「ええ、今日中にはイギリスも、ドイツに宣戦布告しますよ」

「ドイツがベルギーに侵攻したのだから、そうなるだろうな……」


 伊藤さんと話しているように、史実でも8月4日にイギリスは、ドイツに宣戦布告している。

 なぜならベルギーは永世中立国として各国から承認されており、その中立を破るような蛮行は、近隣列強として座視できないからだ。

 しかしドイツは、この重大な欠陥を持つシュリーフェン・プランに従い、戦争を始めてしまった。

 もしもシュリーフェンがこの点をもっと考慮していれば、第1次大戦は大きく違うものになっていたであろう。


「問題は、日本がどう対応するかだな」

「うむ、大島くんたちの言うとおりなら陸軍、さらには海軍の派遣要請がくることになる」

「しかし今までの実績からして、そのとおりになるでしょう」

「でしょうな」


 山縣さん、井上さん、松方さん、そして大山さんが、それぞれ憂いを顔に浮かべている。

 ちなみに史実では1909年に暗殺された伊藤さんだが、韓国と距離を置いたので、まだまだ元気である。

 すると陛下(大正天皇)が、口を開いた。


「大島くんたちの考えでは、派兵すべきとのことだが、国民の命を危険にさらすほどの価値があるのだろうか? 聞けば、相当に激しい戦いになるのであろう?」

「ええ、1千万人以上が命を落とすという、ひどい状況に陥ります。史実で日本は、欧州への陸軍派遣は断り、小規模な艦隊の派遣のみにとどめます。それはそれでありだとは思うんですが、私はあえて派兵を勧めます」

「それはなぜだね?」

「まず第一に、日本は列強の一角として、血を流す覚悟と能力があることを、示すためです。そして第二に、最先端の装備や戦術を含んだ、戦訓を得るためです。さらに言えば、多くの日本人に欧州の空気を感じさせることで、日本人の意識を変革することも、期待できますね」

「ふ~む、言われてみれば、それなりに利点はありそうだな。今後のことを考えれば、多少の犠牲は受け入れるべきか……」


 そう言って陛下が、乃木さんと東郷さんに目を向けると、彼らも口を開く。


「おっしゃるとおりです。陸軍はより良い日本の未来のため、血を流す覚悟があります」

「海軍も同様です。最新鋭の金剛型戦艦でさえ、出してみせましょう」


 するとそこへ児玉さんが口をはさむ。


「うむ、私もそれには賛成だ。問題は、どのタイミングでどれだけ出すかだな。その辺、大島くんはどう考えている?」

「そうですね……大戦は4年後の、1918年11月に終結します。そして17年の4月にアメリカが参戦しますから、その前が望ましいですね。より高く恩を売れますから」

「フハハ、あまり早すぎもせず、遅すぎずもせずといったところか。そうすると、15年中に編成して16年には欧州へ送らねばならんな。派兵規模は……」

「最初は3個師団とか言われますが、とてもそれでは足りないでしょう。最低でも10個師団は送らないと、存在感は示せないんじゃないかと」

「10個師団……20万人か。それは凄いな。しかしそれではまた、借金が膨らむぞ」

「その辺は呼んだ国に、ある程度もってもらいましょう。残りは列強として認められるための、必要経費として割り切るべきかと。それに戦争に勝てば、ドイツの優秀な機械や技術などで、多少は取り戻せますよ」

「なるほど。単純な損得勘定ではないわけか」

「ええ、それから海軍は、戦艦を送るなら16年の5月までにやるべきです。5月末に大きな海戦があるんですよ」

「うむ、例のやつだな。また後で、詳しく教えてほしい」

「ええ、もちろんです」


 すでにユトランド沖海戦について聞いている東郷さんが、大きくうなずいている。

 すると陛下がその場をまとめるように、声をかけた。


「どうやら結論は出たようだな。各自、出兵する方向で、計画を立ててくれ」

「「「御意」」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


大正4年(1915年)12月 東京砲兵工廠


 その後、史実どおりにイギリスが対独参戦し、本格的な世界大戦が始まった。

 そしてやはり塹壕戦ざんごうせんに突入し、西部戦線は膠着こうちゃくする。

 この時点で連合軍の各国からは、日本への派兵要請が相次いだ。


 そこでとりあえずドイツに宣戦布告し、山東省や南洋諸島のドイツ権益の接収には動いたものの、欧州派兵については言葉を濁した。

 ”欧州ははるかに遠く、日本には兵を派遣するほどの国力がない”、と言って。

 代わりにインド洋やアメリカ西海岸に艦隊を派遣し、通商路の保護に積極的に動いている。


 しかし欧州ではその間にもバカスカと人が死に、状況がどんどん切迫していく。

 やがてせっぱ詰まった英仏が、”物資はこちらで持つし、その他の戦費も半分は出すから派兵して”、と言って泣きついてきた。

 さすがにこれは断りづらく、元々、派兵するつもりもあったので、御前会議で欧州派兵が決定される。


 その内容は、陸軍は10個師団、海軍は巡洋戦艦2隻、巡洋艦4隻、駆逐艦20隻という、大部隊だった。

 しかし陸軍の10個師団20万人は、日本としては大兵力ではあるものの、欧州ではそれほどインパクトはない。

 なにしろ大戦全体では、7千万人が動員されたのだから。

 それでも日露戦争の経験を持つ、わりと近代的な軍隊の加勢は、それなりに喜ばれた。


 そして何よりも喜ばれたのは、世界最強クラスの巡洋戦艦2隻を含む艦隊の派遣だ。

 なにしろ金剛と比叡は、14インチ砲を8門も持ち、27ノット以上を叩きだす駿馬しゅんめである。

 さらにはUボートの脅威も知れ渡ってきたところへ、駆逐艦が20隻も投入されるのだ。


 実はこの樺型かばかた駆逐艦は、戦前から設計を進めており、造船所にも投資を行っていた。

 おかげで史実の倍の隻数を早期に建造し、欧州へ送り込むことが可能になったのだ。

 それを知った連合軍首脳からは、一刻も早く送ってくれと、猛烈なラブコールを受けた。

 ちなみにこの樺型駆逐艦は現地で大活躍し、後にフランスから12隻もの発注を受けることになる。


 そんな欧州派遣軍は続々と編成され、欧州へと旅立っていった。

 そして俺たちは砲兵工廠で、今後に思いをはせる。


「派遣軍は今、どの辺かなぁ」

「早いとこは、もう着いてるんじゃないか?」

「だな。海軍なんか、もう活躍してるらしいぞ」

「そっか。それにしても、ユトランド沖の海戦とか、どうなるかな?」

「う~ん、史実よりは有利だろうけど、どうなるかは分からないな。金剛型はなんだかんだいって、弱点かかえてるから」

「そうやんなぁ。さすがに戦艦の装甲にまでは、口出せへんかったからな」

「それは仕方ないよね。だけど1人でも多くの人たちが、帰ってこれるといいね」

「そうは言っても、実際はひどいことになるだろうな」

「だよね~……ほんと、なんで戦争なんかするんだろ?」


 中島がせつなそうに言うと、みんな黙りこんだ。


「まあ、人間は馬鹿だからな。馬鹿なりに、やってくしかないさ。とりあえず俺たちは俺たちで、できることをやろうぜ」

「ああ、そうだな」

「賛成~」

「それしかないわなぁ」

「まったくだ」


 この時代に来て11年めの年は、こうして暮れていった。

改めて調べてみると、伊藤博文は韓国の併合に反対なだけでなく、満州への進出にも反対してたんですよね。

彼がもっと生きていれば、日本の将来は遥かにマシになっていた可能性があります。

おのれ、テロリストめ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志モノの新作を始めました。

逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~

孫権の兄 孫策が逆行転生して、新たな歴史を作るお話です。

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ