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再出発後、初めての大捕物

「どう?もう此所にも慣れてきた?」


『バーテクス』の一員として活動し始めてから今日でちょうど1週間。

パーティーリーダーであるカタリナがそう言ってくる。


「さすがに1週間もすればね。クエストも今のところは順調だし。さすがはトップパーティー!」


冒険者通信が発行しているパーティーランクでトップを独走しているだけのことはある。


「じゃあ、そろそろ例のクエストにでも挑もうかな?」


「例のクエスト?」


クレアの発言に首を傾ける。


なんのことだろう?そんな話していたっけ?


「この前、此処から遠くない場所にある『魔の森』まで行ったこと覚えてる?」


「それは勿論。」


謎の遠吠えが聞こえた森のことだ。

あの時は最終クエストのために訪れた。


「そこで危険度Sの魔物、メイルウルフが現れたらしいの。それで馬鹿なパーティーが討伐に行ったんだけどね……」


馬鹿って……。

随分とひどい言いようだな……。


「優秀なアーチャーがいなかったとかで、メイルウルフの足止めができず、そのまま攻撃を一発も当てられないまま退散してきたんだって。」


「へぇ……」


アーチャーがいなくてクエスト失敗かー……。


あいつらも俺が抜けたことでそんな状況になってなきゃいいけどな。


今更、『帰ってきてくれ!』とか頼み込まれても困るだけだし。面倒くさいし。


「それで、その『パワーオブワールド』……間違えた……馬鹿なパーティーの代わりに私たちにメイルウルフ討伐の依頼が来たんだって。」


おいおい……。


馬鹿なパーティーってあいつらのことだったのかよ。


だから、「パワーだけじゃダメだ」、「アーチャーにも仕事がある」ってことを常々伝えていたのに。


……絶対に俺のとこへ来んなよ?

もう縁は切ってるんだからな?


「……で、どうかな?」


「問題ない。行こう!」


俺はクレアの躊躇いがちな質問に即答する。


実質『パワーオブワールド』の尻拭いをするわけでそれは癪だけど……ある意味、あいつらに一泡吹かせられるチャンスだ。


新天地で生まれ変わった俺のアーチャーとしての境地……見せてやる。


「じゃ、依頼用紙はもう書いてあるから出発すっか。行くぞー。」


「……動きが早いな。」


用意周到すぎるアカリの言葉に苦笑しながら、俺たちは『魔の森』へと出発した。





出発してからおおよそ2時間が経過した。

未だにメイルウルフの痕跡ひとつも見つけられていない。

日も落ちかけているし、早いとこ終わらせたいな。


「あー。暇だなー。」


アカリが態度悪そうに呟く。


「そうは言っても仕方ないでしょ?根気よく探し続けるわよ。」


「せめてあっちから出てきてくれりゃ手間が省けて楽なんだけどな。」


確かになぁ。


捕り物が自ら突っ込んできてくれるほど楽なことはない。


……いや、待てよ?


「……メイルウルフを呼び寄せられるかもしれない。」


「え?マジ?」


アカリがぐいと迫ってくる。


ここまで興味津々といった様子はここ一週間で始めてみたな……。


「メイルウルフって音と臭いに敏感な生物ですよね?なら、この鏑矢でおびき寄せられるんじゃないかって思って……」


メイルウルフは体中を硬い岩石のような体毛で覆っており、それは頭部も例外ではない。


そのおかげでメイルウルフは自らの鎧のような体毛のせいで瞳を外に出すことができず、視覚に頼ることができないのだ。


そういうわけでメイルウルフはその弱点を補うため聴覚と嗅覚に優れている。


つまり……ヒューンと音の出る鏑矢ならメイルウルフの聴覚を逆手にとり、『獲物がいるぞー』という誤情報を与えられるのである。


「ナイスだよ!!」


クレアから称賛コメントを頂く。


ご褒美に頭まで撫でてくれた。


うれしい。


「よし……やってみてくれ!メイルウルフが来たらすぐにアタシたちが足止めする!その隙に『五大矢』を打ち込め!」


そんな即興の作戦を伝えられる。


ひどく単純だが……効果は期待できそうだ。


「では……いきます!」


俺は矢筒から一本の鏑矢を取りだし、愛用している弓へとつがえ、それを天高くに向かって放った。


ヒューンと風を切るときに発する鋭い音が辺り一帯へと広がる。

その時だ。


『アオオオオオ!』


この間も耳にした遠吠えが聞こえる。


しかも、それはずんずんと俺たちの方へと近づいてきている。


「っ!来たな!」


メイルウルフが木の影から姿をみせた……と思ったときにはアカリがメイルウルフの足の鎧を大胆に叩き潰していた。


恐ろしいまでの早業。

目で追う暇もなかった。


「クレア!バフをお願い!」


「オッケー!『アッパー』!」


クレアが詠唱すると俺たち全員の体が光に包まれ、何やら力が涌き始める。


支援魔術師としての魔法のひとつ、『アッパー』の効果だ。


「いくわよ!『スラッシャー』!」


カタリナが手に持つ剣が黒く光り始める。


直後、その剣が振るわれると同時に黒い光波がメイルウルフへと向かっていった。


『ゴアアアアアア!』


光波はメイルウルフの体中に傷をつける。


しかし、鎧のせいでHPは大して減少していない。


今こそ俺のスキルの真価を発揮するときだ。


痛みでうめき、動かないメイルウルフにつけられた赤い丸へと俺は矢を慎重かつ可及的に打ち込む。


1、2、3、4……


「5!」


5発目を命中させた数秒後、試験のときのアイアンゴーレムと同じようにHPが一瞬にしてゼロになり、強大な魔物であるメイルウルフは地面へと崩れ落ちた。


「やった!さすがね!」


「よっしゃ!」


「よくやってくれたよ!」


三者からのお褒めの言葉を受け、俺は改めて新天地へと来たことの喜びを噛み締める。


「皆が本来は隙のできないはずのメイルウルフに隙を作ってくれたからだよ!」


「じゃあ、早くも"パーティー力"ってやつを発揮したわけね!」


カタリナの言葉にパーティー全員が「うんうん」と頷く。


本当に……ここに来れてよかった。


そんな風に思える初陣だった。



こんな感じで1日空いたりすることがあると思いますが、気長に待っていただければ幸いです。



(いつもの一言)



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