追放
新連載です。
「ジン。お前はクビだ。」
「……は!?」
あるダンジョンを攻略し、ギルドへと成果報告をしに行った時の出来事。
ギルド幹部かつ自らのパーティーリーダーであるクリスからこの上なく端的な解雇の申し渡しをされ、俺は我が耳を疑った。
「いったいなんで……?」
「そんなこともわからねえのかよ!……くそっ!いいか、よく聞け!お前はパワーが無さすぎるんだよ!」
パワーがない。
それは俺の欠点を表すには最も適した言葉だった。
アーチャーとして一撃必中を狙う俺は精密さに優れる代わりに、敵を叩ききるようなパワーは持っていない。
「俺たちは最高峰のギルドの中でも最高クラスのパーティー・『パワーオブワールド』だぞ!?どんな強い敵も持ちうるパワーで叩き潰してきた……なのに、お前はどうだ!?」
「……!」
強い口調で言われ、怯えからか、何歩か後ずさりしてしまう。
「パワーは戦いにおける最高のものだ!他は必要ない!百歩譲ってスピードは良しとしても……精密さなんて冒険者として何にもならない無能の証だ!器用さが特技なら縫い物でもしてろ!」
「だ、だけど……俺だって頑張って……」
俺にもアーチャーとして後衛から敵の急所を撃ち抜き、動きを止めたり、止めを刺したりとパーティーに貢献してきた自負がある。
一方的に「無能だ!」と言われても、納得できるはずがない。
「お前が何の役に立ったと言うんだ!断じて何の役にもたってない!アーチャーなんて魔法使いの下位互換なんだよ!」
俺の誇りでもある役職を嘲られ、少しばかりの怒りが胸のうちに湧いてくる。
だが……それを所構わず、振り回さないくらいの分別は俺にもある。
そんなグツグツとした気持ちを無視し、代わりに比較的柔らかい反論をした。
「だけど、俺のスキルは……『絶中』は敵の急所を完璧に突いて……」
「ああ!?あのクソスキルかよ!?」
「……」
持ちうるスキルまで否定され、俺は何も言い返すことができない。
それほどまでに心を傷つけられた。
「……他の人はどう思ってるんだ?」
パーティーは4人構成。
リーダーであるクリスと今まさに解雇されようとしているの他にも二人、いることになる。
彼らの意見はどうなのだろうか……。
「……当たり前だ!これはパーティー全員で決めたことで、お前などに肩入れする奴など俺たちのパーティーには一人もいない!」
はっきりと『誰からも必要とされていない』という事実を突きつけられる。
(みんなも俺なんて要らないと思ってるのか)
悲しいが、そんな結論に達せざるをえない。
……俺にとって、このパーティーではやたらとこきつかわれたり、休みなく働かされたりもしたが、それでも共に魔物を倒した時の達成感や喜びを分かち合ってきた仲間。
心の中で、悔しさと悲しさがグチャグチャに入り交じった。
「わか、った……俺はパーティーをやめるよ……」
「それだけじゃダメだ!このギルドからもやめろ!」
「……なっ!?」
ギルドをやめる。
それは職場を失うことに他ならない。
「このギルドからアーチャーを全面的にリストラすることが決まってんだ!他のパーティーのアーチャーだってクビにされてるんだぞ!?お前ごときが特別扱いで残れるわけないだろ!」
反抗したい気持ちは山々だ。
……けれども、上司に当たる幹部に楯突くことなどできるわけがなかった。
「……わっかったよ!」
怒りに任せたように、そんな台詞を捨て吐く。
そして、俺はすぐにクリスへと背を向け、勤め続けてきたギルドを出ていった。
………………。
…………。
……。
……その夜、ジンの頭にはこんな声が脳内に響いた。
『"絶中"がレベルアップ。"五大矢"になりました。』
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