森の中に転移したんだが、周りに何もないし、どうすれば良いのだろう?
俺が目を覚ますと、湿った土が手に触れた。
無駄に思い瞼を持ち上げて、辺りを見回すと、周囲は枯れ木だらけの場所だった。
確か昨日は、執筆しながらエナドリを3本空けた処までは記憶があるんだけど見知らぬ天上…、いや、天上すらない。
異世界転移の話を書いてて、自身が飛ばされては、使用がない。
でも、ここはどこなのだろう。
口の中には、妙に苦かったエナドリの余韻しかないし、服もいつものジャージである。
財布もスマホも、身分証もないし、もっと言えば、生命の息吹もない。
さて、ここからどうしたものか…。
虚構の主人公達ならば、奇策に天運、ご都合主義なんかで、ストレスフリーに、人生を謳歌して行く。
だが、今の俺はストレスフルだ。
腹も減っていれば、喉も乾いた。
なぜああも、エナドリを飲むと、喉が渇き頭が鈍く痛むのだろう?
許容量を超えていたのだろうか?
カフェインをカフェインし過ぎて、天寿を全うしたのだろうか?
考えても、考えても、こんな場所じゃ答えなんて返って来ないな。
そういえば、最近の両親は、何か追い詰められた雰囲気だったな。
俺が生活費をせびると、泣きそうな声を出していた気もするが、気のせいだろう。
まだまだ家には、蓄えはあったはずだ。
それにしても、何もないな。
良くもまぁ、こんな空しい場所を探したモノだ。
鳥1匹いないし、緑なんかもない。
湿った臭い土しかないし、ここはどこなのだろう?
そういえば、昨日の親父は妙に機嫌が良かったな。
何か良い事でもあったのだろうか?
最近は、親孝行も出来ていなかったし、あんなに嬉しい表情は、こっちも嬉しくなる。
俺が酒を飲めないから、晩酌に付き合えなかったのは残念だったな。
暗く淀んだ空を眺めてると、頭だけは澄んできた。
まだまだ、深夜みたいに、本調子とは言えないが、周囲も見えて来た。
寝かされていた場所を良く見てみると、何か俺以外の足跡がある。
足跡は、こっちに向かって来てるのと、離れていっているのの、2種類があるな。
それも、こっちに来るのは沈みが深いな。
さて、特に神の啓示とかもないし、足跡でも追って見よう。
どっちを追うかなんて、聞くなよ。
俺は前しか見ていないんだ。
あぁ…、結論から言おう。
ここは異世界なんかじゃなかったぜ。
抜かるんだ土には、1本の包丁と、手紙が置いてあった。
どうやらここは地獄らしい。
当たり前にかまけて、罪を重ね過ぎたようだ。
今までありがとう。
きっかけをくれて、ごめなさい。
読んで下さってありがとうございます。
他にも気になられたなら、他の作品も読んでもらえると、エナドリで乾杯します。