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緩やかな自殺  作者: あぜ道 流
4/11

逢魔が時

「ただいま」

 夕方十八時。逢魔が時。

 僕の溢した帰宅を知らせる言葉は返答されることもなく、誰もいない薄暗い廊下に空気のごとく溶けていった。この反響具合から察するに、まだ誰も帰ってきてはいないらしい。おそらく母は仕事で、弟は部活だろう。僕が一番乗りというわけだ。

「はぁ……」

 僕は疲れからなのか、それともたいして嬉しくもない一番の称号を得たからなのか、自分でもどちらかわからないような溜息をひとつ吐くと、台所へと向かった。台所には、まだ朝の分の食器が残っている。

 僕は食器を手に取るとそれらを洗い、ついでに手も洗った。十月も末、蛇口から出る水は少し冷たかった。

 手を洗い終えた僕は、そのままの足で二階の自室へと向かう。

 部屋に入ると僕は椅子に座り、勉強机の引き出しを開けた。そして、そこに隠してあった あるモノを取り出す。

『安楽死願い(・・・・・・)』――――と書かれたその紙を。

「…………」

 僕はそれを手に取り、なんとはなしに見つめた。

 そこには難しい文章や、聞いたこともないような単語がツラツラと並べられていた。中には教師が話していなかったことも書かれており、その情報量の多さに、内容を理解するだけでもかなりの時間を有してしまいそうだった。

 しかし――――

「まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど」

 僕は思ったことを口にした。

 そう、僕にとって書いてある内容など大したことではないのだ。大切なのは最後の部分。

「…………」

 本人記載の署名と捺印。僕はまだ、その部分を埋められずにいた。


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