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まぁなんだ、酔ったノリみたいなもんだ。

作者: スルメねこ。

最初に言っておくが、今回はなんだか堅い文章になってしまった。

文豪作品の朗読とかそんなイメージがわかりやすいか。

まぁ、読む際のイメージなんか個人の自由だ。

好きに読んでくれ。

 はて、オープニングはなんだったか。

 あぁ、確か「寝付けない」、そんなどうでもいいことだったはずだ。

 ここ数日の暑さで最近は上手く寝付けず、疲れからか顎や首が痛くなっていた。その痛みによる違和感もあってか、今日は全く眠れなかった。

 そういえば最近飲んでいなかったな、などと思い、催眠にでもとキッチンで芋焼酎をコップに注いだ。もうほとんど残っておらず、そのままでは流石に物足りなさそうだった故、適当にお湯を沸かしてコップ一杯あるかないか程度のお湯割りにする。

 できたお湯割りを片手にスマホを弄りながら自室への階段を昇り、肴は何にするかなぁ、などと考えていると、珍しく飼い猫が一緒に昇ってきた。あぁ、そういえばソファには弟が寝ていたから寝る場所も取られて暇だったのか、なんてことを考えながら自室に入り窓を開けた。

 開けた窓のサッシに飼い猫がちょこんと座り、ふむ、今日はこれを肴に飲むか、などと思いつつふと空を見ると、雲に見え隠れしながら満月がちらりちらりとっていた。

 俺は視力が悪い。折角久しぶりに飲むのだからハッキリ月を見ながら飲もうじゃないか、と眼鏡をかけた。

 まぁなんだ、夜なのもあり、酒を飲んでいるのもあり、段々と感傷的になっていくわけだ。

 上ばっか見てないで下も見よう、と夜の景色に目をやると、なんだ中々エモい雰囲気があるじゃないか。丁度寝れないのだ。軽く運動がてら散歩をすることにした。


 一応軽く着替え、なんとなくラムネ菓子を手に取り、弟や家族を起こさぬよう静かに階段を降り、玄関を開ける。

 いつの間にやら俺の部屋から出て一階にいた飼い猫は、散歩には興味がないらしく見当たらない。ガラガラうるさい玄関を、なるだけ静かに閉めながら、とりあえず何の策無しに外へ出た。


 家は大通り沿いにあるのだが、なんとなく裏の路地を行くことにした。

 普段は眼鏡をかけずに生活しているため、眼鏡をかけてまま外に出ることは少ない。いつもと違って眼鏡をかけているからか、なんだかいつもと違う感じがした。

 まぁ、酒の影響もあるかもしれんが。

 どうも俺は酒が入ると感傷的になるらしくてな。

 この裏路地を歩くと再従姉妹の家がある。とは言っても、漫画やラノベのように美人なわけではなく、むしろどっちかと言うと不細工に近いものなのだが。

 先程から照れ隠しのように雲に隠れる月を見上げながら、なんとなく「上を向いて歩こう」などと口ずさみ、「実際、下も見なければ前には進めないよなぁ。何もかも基盤がしっかりあってこそだし、自分の歩む道は、しっかり自分で見て選ぶべきなのに、この歌は夢ばかり見て非生産的だなぁ」となんとも多方面を敵に回しそうな考えが頭をよぎる。

 そんなことを考えながら分かれ道もないただの一本道を、∞.∞chでサラウンド再生される鈴虫の声を聴きながら歩いていた。

 一本道を抜けると、十字路が二つ連なり、表すならキ字路といった具合になっている場所に出る。そういえばこっち側には友人の家があるなぁ、などという軽い理由で、そのキ字路を右に曲がり、川沿いであるその道をのんびりと歩いていく。

 道なりに歩いていると、小さな踏切があった。まぁ、知っている道なので「おぉ、踏切だ」とかいうニュアンスではないのだが。

 踏切の目と鼻の先……というかまぁ踏切の場所に、街灯が一本ポツンとある。

 暗い夜道の中、郊外な上川沿いにある故に踏切の周囲を限定的に照らす街灯は、なんだかアニメや漫画の世界でのしょぼーんとしたシーンに出てきそうな雰囲気があった。

 踏切を渡ってすぐ、分かれ道がある。とは言ってもこの分かれ道はすぐに合流する、車がすれ違えるようにする為の分かれ道だ。

 この分かれ道にも、道がわかりやすいように街灯があった。分かれ道の間の小さな空き地には草が茂り、その左は川である。暗い中、しんみりと佇む街灯の明かりを見て、なんだか写真を撮りたい気分になった。

 ポケットからスマホを取り出し、街灯にピントを合わせるも、暗くて思い通りには映らない。目で見ると案外明るいのにカメラだと暗く映るのはなぜなのだろうか。やはり一眼が手元に欲しいな、と脳内で独り言を呟く。祖父が写真をやっており、小学生にもなってないうちから一眼レフなどで写真を撮ったことがあった。今でも写真を撮るのが好きで、祖父の元へ遊びに行くときはよく写真を撮らせてもらう。

 自分では一眼を持っていない故、今度遊びに行った時に古いのを貰ってみようか……。

 そのまま友人宅の前の大通りまで歩く途中、街灯と河川敷なんかも良い雰囲気で、何枚も撮りたくなった。

 ふと立ち止まり、後ろを見る。先程通った踏切が見える。

「つい先程まであそこに居たんだな」

 のんびり歩いていたのもあり、その距離を歩くのにそれなりの時間が経っていた。なんだか時間の経過を感じ、少し左に視線を移した。

 視線の先は駅周辺になっており、高いマンションが何棟か建っている。500mは確実に離れているその場所は、マンションの廊下の電灯などで「夜景」と呼べる程度に煌めいており、思わずスマホを構えた。

 が、やはりというかなんというか、暗すぎて写真を撮れる程ではなかった。

 川沿いということもあり、この道にはサワガニの類がうろつく。こんな遅い時間にもいるのか。蟹は夜行性なんだっけか。なんて考えながら、度々、車に轢かれて無残な姿の蟹を見流す。

 死を悲しむ、なんていう人間のエゴは知らない。生まれれば死ぬ。自然とはそういうものであり、皆それまでを必至に生きている。俺が今歩いている間にもその辺で死ぬ生き物がいて、また生まれる生き物もいる。微かに自然の営みを感じながら、そろそろ大通りに出るな、とちまちま足を進める。


 大通りに出た。

 流石に少々車通りがある。時間は確か夜中の二時半くらいの筈だ。それぞれの運転手にも各々の知り合いとの会話があり、各々の生活がある。あの人は何を話していたんだろうか、などと答え合わせもできない問題に頭を回しながら、信号待ちをしていた。

 信号が青になり、横断歩道を歩む。渡り終わって、後ろを見てみると、小学生の頃通っていた英会話教室の看板があった。

 まだやってるのか、などと考えていると、その上の階がテナント募集中になっていることに気付いた。俺がまだ通っていた頃―――小学生の頃は、確かそこは塾だった筈だ。それなりに繁盛していた記憶だったが、いつの間に潰れたのだろうか。時間の流れは早いなぁ、とまた時間の経過を感じ、横断歩道の先の橋を渡り、その先を右に曲がって歩いた。

 歩いている時は「いつの間に潰れたのだろうか」なんて思ったが、書いている今思ってみれば、別に潰れたと決めずとも、移転したという可能性もあるじゃないか。まぁ、ぶっちゃけどちらでも良いのだが。

 橋を渡って曲がってからは、また川沿いの道で、何本か柳が植えてある。案外太い柳の木を見て、俺が生まれる何世代も前の人も、この柳がある風景を見てきたのだろうか、と知らぬ時間の景色に思いを馳せた。なんだか今日は時間ばかり感じているな。

 その先の交差点……と言っても道路ではないが、そこからはファミレスが見える。二十四時間営業の店のネオンライトを見ながら、この景色も嫌いじゃないな、と撮りたい景色を増やしてしまった。

 丁度そこには小屋のような小さな建物があった。住める程の大きさではなく、かと言って何かの倉庫にしては少々小さい。その上入口が川の柵の延長で塞がれており、本当に使われているのか怪しかった。

 しかし、柵で囲われて入れない区画の中に、アスファルトで舗装された場所があるのもまた事実であり、何に使われていたのだろう、と心に疑問が残った。

 そのすぐ隣は網柵で囲われており、そちらも謎だったが、少し回り込むと「ゴミ収集所」の文字が見え、そちらの疑問は残らなかった。

 ゴミ収集所のある突き当りを左に行き、ファミレスを背にして歩く。このまま行けば知人の家がある。と言っても夜も遅いし訪問はしないが。

 まさに路地、といった一般庶民住宅街的な道を、特に何か考えるでもなく歩いている。

 案外アパートも多いんだなーとか、この家の人はこんな時間に歌っているのか……とか、そういうどうでもいいことを思いながら足は進んでいる。

 何度か通ったことのある道なのだが、思いの外知らない事もあるもので、ここの神社、結構大きいんだなぁだの、こんなところにも水路があったのかだの、今後一切役に立たなさそうな知識が増えていく。

 知人の家のすぐ横に道があり、そこを曲がろうと思っていたのだが、暗いのもあって見逃したらしい。なんだか見たことの無い景色が流れている気がする。

 長い間貼られたままらしい選挙の貼り紙を見て、これを貼りに来る人も大変だな、何かあった時は剥がしに来るんだろうか?、こういうものの場所って全て把握しているものなのか?、と役所の管理体制に少し考えを回していた。

 なんて言っていると、明らかに知らないアパートが道の傍に建っている。ほら見ろ、言わんこっちゃない。

 やはり知人の家を通り過ぎており、知らない道を歩いていた。

 とはいえまっすぐ歩いているので戻れば解決するのだが、この先に行っても知ってる道には出るはずなので、なんとなくまだ進んでみることにした。

 暫くして、自販機があり、喉も乾いたのでカフェラテを買って、その場をUターンすることにした。


 先程通ったはずの道だが、反対から通ると少し違って見えるな。一度目も勿論新鮮な感覚なのだが、なんだか新鮮に感じる。

 先程通った知らないアパートも、駐車場側から見るからか、少し開放的に感じる。

 そこから少し歩いていると、知らない道に違和感を覚え始めた橋があった。この橋を通った辺りからアレ?と思い始めたのだ。

 丁度橋を渡ろうとした時、夜の暗さに紛れて何か居る事に気付いた。黒猫だった。

 野良なのか痩せ細った黒猫が、橋から水面を覗いていた。突然出くわしたので、少しビクッとなってしまったが、それはお互い様だった。

 黄色い目をした黒猫に、「驚かせてごめんな」なんて言いながら、そういえば黒猫って不幸の象徴だったな、なんて要らん記憶が脳裏によぎった。

 まぁ、結論から言えば何にもなかったのだが。

 橋を通り過ぎてから間もなく知人の家の所まで辿り着いた。

 ようやく道を曲がり、ちゃんと知っている道であることに胸を撫でる。

 俺は割と方向音痴なので若干怖かったのだよ。

 また∞.∞chでサラウンド再生される鈴虫の声を聴きながら暫く歩くと、川―――というか掘割沿いのベンチスペースに着いた。若干足も疲れていたことだし、そこで小休憩を挟むことにする。

 なんとなくスマホを開き、SNS を見る。

 まぁ、夜中三時なんてそんなもんだよな。暇潰しにもならないくらい静かだよ。

 スマホの画面を閉じながら、電子機器繋がりでゲームのことが頭に浮かぶ。

 広大な自然。モンスターを巡る冒険。

 最近はラノベなんかを読むようになり、まぁなんだ、異世界転生俺ツエーーーーー!!系のワンパターンさにウンザリしてもいる。

 まぁ、男なら憧れるだろう。雄大な自然の中、剣やら鎧やら引っさげて、フリーダムに冒険する、なんてこと。俺もたまに考えるよ。

 でっかい高原を、頑張って手懐けた元野生の馬なんかに乗って?

 スライムやらドラゴンやらトレントやらゴーレムやらと戦ったりして?

 このストレスフルな世界から「さらば現実、フォーエバー~~~」とか?

 お姫様と出会って「偶然だよな……?」とか?

 そういう冒険とかしたいなーなんて……。

 でも、なんだかんだ言って、今の友人とかとは会えなくなるよなー、とか。

 ゲームするのは楽しいんだよなー、とか。

 アニメとかまだまだ観たいのあるしなー、とか。

 色々言っても、この世に未練はあるわけですよ。未練タラタラなわけですよ。

 結局、空想を生み出してるのも現実なわけで、リアルで既に構築されたコミュニティから消えたくないなってのが本心なんだな、うん。

 そこで「行きたいときにだけ異世界に行けねぇかなぁ」みたいな、最大公約数的な考えに落ち着いて、最終的に現実に戻って意気消沈、と。

 まぁそこまでがテンプレになりつつある。

 何もない揺れる水面を眺めながら、そんなことを考えていた。

 さて、そろそろ休憩を終えるか、と腰を上げ、ふと月を見る。どうも完全に雲に隠れたらしく、どんなに見上げてもどこにも見当たらない。

 またゆっくりと足を進めながら、掘割沿いに大通りへ向かって歩いた。


 大通りに出て、掘割沿いの柳が増える。

 この街は掘割とそこに植えてある柳が観光資源となっており、川下りなんかもやっている。

 掘割なのに川下りって言うんだな、というツッコミは置いといて、大通り沿いをまっすぐに歩く。

 道沿いには小学生時代の母校がある。道を挟んで掘割の反対側、向かって右側に母校が見えた。

 久しぶりに見るな。門を見ながらあの頃を懐かしむ。当時は高く感じた門も、今となっては肩くらいの高さだ。こんなに低かったっけなぁ。ついこの前、友人とブックオフに寄った時、運試しに遊○戯○王のパックを買った。その時に、二人して「こんなにカードって小さかったっけ?」なんて言い、あぁ、あの頃は手が小さかったからカードが大きく感じたのか、と自分の成長を感じた。

 小学校の校舎は北と南に分かれ、その間は渡り廊下のようなもので繋がっている。確かその渡り廊下の場所に図書館や職員室があり、何度も通っていたのを思い出した。しかし、その記憶の場所とは別に渡り廊下があるのを確認し、あれ、こんな所に渡り廊下なんてあったっけ、と記憶の中の校舎内マップを開く。

 六年も通っていた筈なのに、所々思い出せない場所がある。歳だろうか……。早くも衰えを感じたが、それ以上に懐かしさを感じ、今度小学校の頃の友人達と遊びに来てみようか、なんて考えた。

 そんなこんなでいくつか交差点を抜け、試しに知らない道へ行ってみることにした。通った道さえ覚えておけば、たとえ迷ったとしても戻れば帰れる。ひとまずの安心感と共に、俺は足を進めた。

 暫くすると、なんだか見覚えのある休憩スペースを見つけた。

 そういえば以前友人とランニングをした時にこの場所を通った気がする。その時はどこがどこだかわからなかったが、丁度今、脳内でランニングコースの位置情報が判明した。ここがわかったおかげで相対的に他の場所の位置も大体わかった。

 線は二点がわかればグラフが描けるではないか。それと似たような感じだ。

 ちなみにこの道も掘割沿いになっており、なんだかんだずっと掘割の傍を歩いている。

 川下りのコースには、船に乗ったまま買い物ができる店なんかがあるのだが、俺の記憶の中では、結構大通りに近かったイメージがある。だが、歩いていると、意外と大通りからは離れた路地裏にあり、またしても記憶違いをしていたようだ。

 そこを通り抜け、また別の大通りへと向かう。その道路はこの辺では珍しく、六車線程ある。

 そこまでの道は少し上り坂になっていて、暗いせいもあって道路の白線がハッキリ見える。

 この道、眼鏡を外すとスマホの音ゲーのレーンにしか見えず、暫くの間頭の中にその事しか浮かばなくなる。

 そういう場所、貴方にもないだろうか?


 六車線ある大通りに出ると、深夜だというのに結構な数の車が通っている。

 もっとも、この時間に散歩している俺の方が不思議なわけだが。

 大通りを横切り、また路地に入り、そういえばこの辺に住んでる友人もいたな、などと他愛もないことを考える。

 何度も「友人」という言葉が出ているが、念の為言っておくとこれは同一人物を指しているわけではない。流石に個人名は出せない故、代名詞として使っているだけだ。わかりにくいかもしれないが、我慢してくれ。

 歩いていると、当然だがいくつも自販機が目に入る。飲み物のラインナップを見てみると、どの自販機もあまり変わらない品揃えのようだ。それなりに広い範囲を歩いている筈なのだが、割と大きな地域で需要の傾向が同じなようだ。

 自販機やコンビニを見ていると、その地域の特色などが掴めて面白い。お茶だらけの場所もあれば、水の方が多い場所もある。その地域がベッドタウンなのかワークタウンなのか、その辺もコンビニを見ればわかったりする。

 ふと右を見ると、それなりに高いマンションがあった。

 実は、一人暮らしをしたいな、などと考えており、散歩の最初から色々な物件を見ていた。

 別段今すぐ越すわけじゃないのだが、なんとなく色々建物は見たくなってしまう。

 丁度今そこにあるマンションは、すぐ歩いたところに駅もあり、コンビニやスーパー、病院も近いので結構立地はいい所だった。築年数もそんなに古そうなわけでもなく、案外良い物件だ。

 割と視野に入れておくべきかもしれない。

 そのまま歩いて駅前に出た。

 少し腹が減って来たのでコンビニでなんか食べることにしよう。駅前の十字路を左に曲がり、すぐそこのコンビニに入った。

 何を食べようか暫く迷ったが、もうおでんが売ってあったので、おでんを食べることにした。

 大根と、白滝、蒟蒻(こんにゃく)と牛すじを食べることにし、店員に頼む。夜勤お疲れ様だなぁ、なんて野暮な事を思いながら、財布からポイントカードと代金を出す。

 おでんを受け取りコンビニの休憩スペースに座り、スマホを弄りながらおでんを食べることにする。都会の諸君。こっちのコンビニには駐車場もあるし、店内には座って食事できる、コンセント付きの休憩スペース(ガキの溜まり場)もあるのだよ。

 まぁ、スマホは弄ったところで、相変わらず暇潰しにもならないくらい静かだ。

 適当に箸を取り出し、蒟蒻を掴む。流石に食材が食材故、出汁が染み込んでる……ということはないが、この切れ込みの入った蒟蒻が好きなのだ。おでんには欠かせない。

 何口か食べたところで、大根にも手を付ける。この時間、相当長い間漬けられていたらしく、大根の中心まで出汁が染みていてとても美味だった。

 牛すじの串が出汁に浸かってしまっていたため、箸で串を掴み、柔らかい牛すじを味わう。白滝も美味しく、思いの外腹が一杯になった。


 食べたゴミをゴミ箱に捨て、コンビニを出て再び歩き出す。

 そろそろ帰路に着こうか。

 基本的には大通りを歩くのは苦手なので、コンビニを出たらすぐ裏手側の道へと進む。幼い頃お世話になった駄菓子屋を横目に見ながら、あぁ、もう店を閉めてしまったのか……などと呟きつつ、裏道から帰路に着く。

 特に何を考えるわけでもなく、ぼーっとしながら道を歩く。少し歩くと高架の沿岸道路の下に来た。

 そういやこれの建設が始まったのは小学生の頃だったか。中学生になってからはこの道は通学路じゃなくなり、いつ完成したかはわからないが、中一の終わりには確実に完成していた筈だ。小学二年か三年の頃から建設は始まっていたから、かれこれ五年くらいは工事をしていたわけだ。

 高架道路を造るのは相変わらず時間がかかるのだな。

 当時は高架の柱ばかりを建てていて、一体何がしたいんだ、なんて思っていたっけな。

 それにしても、もう小学校に入学したあの頃から十年経つのか……。早いものだ。

 当時は退屈に感じていた記憶があるが、なんだかんだ楽しんでいた―――のだろうか。

 授業はつまらなかったが、今よりまだ幾分社交性があったあの頃は、まだまだ可能性が沢山あったのだろうな。いつからこんな陰キャになってしまったのだろうか。

 今現在俺が通っているのは高専で、まぁなんだ、奇人変人が集まるような学校だ。当然というかなんというか、自然とオタクや陰キャが多い。俺自身もどちらかというとそっち側の人間だが。

 そうだな……、高専に行って痛感したな。陰キャやボッチが集まったところで集団にはならないんだな、って。あくまでも沢山のボッチだ。合体することは無いのだ。

 かくいう今も、ボッチで散歩をしてるわけだが。

 高架下を抜け、相変わらず裏道をのんびりと歩く。

 もうすぐ自宅だ。大体三時間弱くらい歩いただろうか。距離にすれば五、六キロといったところだ。思ったより短いな。

 なんの見所も無い畑と民家の中、相変わらずサラウンド再生の虫の声を聴きながら、少し残念な気持ち半分に歩く。

 暫くして、一番上最初に歩いた路地に出た。

 ふと振り返って、最初に歩いて行った方向を向く。勿論、そこには誰もいない。

 しかし、その道を確かに俺が通った事実はある。違う時間では、そこに俺がいる。

 そして、今も同じくここに俺がいる。全く同じ道に。

 しかし、俺は同じ状態ではない。勿論、何より時間が違う。記憶が違う。経験が違う。

 そんなことを考えながら、玄関を開け、またなるだけ静かに閉める。

 全く同じ「俺」だが、ラムネ菓子の代わりにカフェラテを持っている。

 全く同じ「家」だが、ソファには弟の代わりに飼い猫が寝ている。

 同じものだけど、少し違う。

 そこには成長がある。もしかしたら退化もあるかもしれない。

 だが、どちらも変化だ。変わらないものは無い。

 変えたくないかもしれない。でも変わるものなのだ。

 変わってしまったものを嘆くより、変わったことを楽しんでみないかい?

 ほら、価値観が変わっただろ?

 ん、なんだ。なぜ楽しむかって?そりゃあ勿論。


『だって、そっちの方が面白いじゃない!』






 そうだ。この作品の文章は、全て「cv.杉田智和」としておこう。

 最後まで読んでくれたような貴方なら、きっと何の苦無しに脳内再生できる筈だ。

 折角だから始めからまた読んでみてはいかがだろうか。

 一度読んだ文章でも、少し新鮮に感じるかもしれない。




 ―――ほら、「同じものだけど少し違う」、だろ?

最近投稿してなかったけど一応生きてるよ。

寝付けなかったから散歩したんだけど、帰ってすぐこれ書き始めたから結局徹夜してるよ。

本末転倒だね。

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