道
目の前にはそれぞれの道に進む交差点が広がっていた。どこも先は見えず、ただただ暗闇が手招きしていた。
時刻は一体いつだろうか。これから朝が来るのか、それとも夜が来るのか、どっちともつかないオレンジ色の光がぼぅっと空を包んでいる。
どこに進もうか。足を踏み出そうとしたが固まって動けない。まるで氷漬けにされたかのような冷たさとそれに対する焦燥感が生まれた。焦れば焦るほど身体は凍る。
気がつけばたくさんの自分がそれぞれの道の前に立っていた。後ろにも道があることを知った。みんな迷っている。前に進むべきか後ろを振り返るべきか。まるで過去と未来を見つめているような気分だった。
この道が本当に過去と未来への道だったら、自分はどちらを選ぶのだろうか。
ーー光なら自分で燈せばいい。
心の奥底で小さな炎が生まれた。あれだけ固く身動きがとれなかった氷がいとも簡単に溶け始めた。それを合図にぐにゃりと視線が歪む。今まで無数にあった道が消え、目の前にはまっすぐの一本の道しかなかった。