game.5 マネージャー
「果苗さぁ、お前やっぱり月南のこと好きだろ?」
いきなりそんな質問をしてくる悠飛を俺は怪訝そうな顔で見る。
「昼に屋上で鼻の下伸ばしてたらしいじゃん?」
屋上というキーワードで一気に昼の『アスパラの肉巻き』を思い出し思わず赤面した。
「の、伸ばしてないわ!」
悠飛がどこまで知っているかわからなかったが、月南がわざわざ詳しく話している可能性は低いと考えとりあえず否定しておく。納得していない様子の悠飛が先に部室を出ようとする。
「まぁもし、果苗が月南のこと好きだったとしても俺は絶対譲らないから」
そう言い残し体育館へと去って行った。あいつ本当に月南のこと……。俺は月南を好きなのか? ただ昔の思い出に浸っているだけでは? ふぅっと息を吐き思考をクリアにしようとすればするほど身動きが取れずにいた。ガチャ!
「おわっ! いたのか果苗!」
部室に遅れて入ってきたのは同級生の鈴木翔だ。
「ほら、もう練習始まるぞー、行くぞー」
着替えを済ませると俺の背中を押して、まぁそんな日もあるみたいなことを言う。とりあえず気持ちを切り替えバッシュを掴んで部室を出た。
もうすぐGWの10連休。世間では時代は平成から令和へと移り変わるらしいことがかなりの確率で話題に上がっていた。しかし、俺らはその10連休中8日間を合宿にあてたのだった。
「ヤバイな! 今回はかなりヤバイ! 覚悟しとけ1年!」
「鈴木先輩ヤバイしか言ってないし」
「マジなんだってこれが!」
確かに通常4日行程のGW合宿でも死ぬほど辛いのに、それが2倍! 単純に考えてヤバイ! 翔がヤバイと言いたくなる気持ちもわかる……。
「おーい、みんな集合!」
顧問の湯川が声をかける。
「じゃーん、今日からGW合宿中マネージャーとして臨時で来てくれることになった2年の鴻上月南さんです」
一瞬静まり返った部は次の瞬間、一気に盛り上がりをみせた。あちらこちらで、彼氏はいるのか?とか可愛すぎる!という声があがる。
「おい、あれってもしかして……」
隣にいた翔が意味深に話しかける。あれってなんだよ? 悠飛の彼女とでも言いたいのか?
「全日本ユースの鴻上月南!?」
「は!? 月南が全日本ユース!?」