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チェンジ・オブ・ペース  作者: 藤井 頼
2/18

game.2 集中力

俺は猛烈に混乱していた。6年振りに会ったバスケ仲間がイギリスから帰国していたこと。そして1番の理解者がその子のことを好きだと言い出したこと。


「だああああああああ!!」


「永井のやつ、今日はやたらとダッシュ多くね!?」


「悩みがあると……ってゆういつものあれだろ?」


「あー、あれね」


「永井ー、あんましょっぱなから飛ばすなよ! 今日は明日の練習試合の調整だけなんだから」


キャプテンの葛木大地かつらぎだいちが声をかけた。


「あと1本だけ!!」


「おーい、夏目も止めろー」


「いいんじゃないっすか? 本人がやりたいんだから」


半ば諦め葛木はため息をつくとAチームの練習に戻っていった。


「おい! 単細胞! 何悩んでっか知んねーけど、考えても答えなんか出ねーんだからやめとけ」


「誰が単細胞だ! ほっとけ」


お前のことで悩んでんだよ! と叫びたい気持ちをぐっと抑えシュート練にうつる。案の定、メンタルの乱れで思うようなシュートが打てないでいた。


練習も終わりみんなが帰ったあと、キャプテンに頼み込んで体育館の施錠を条件に30分だけ練習をさせてもらえることになった。


ガッ!!


ボールはことごとくリングに当たりあらぬ方向へ散乱している。やばい、明日は大事な練習試合が控えていると言うのにこの現状……。どうにかこうにかメンタルを整えようと、コートに大の字に寝転び目を閉じた……。外からは虫の音とナイターを使っている野球部の声が聞こえる。少しするとそれさえも耳に届かないくらい集中し始めた。


「よしっ!」


そう言って起き上がると鼻先数センチのところに思わぬ人物の顔があり身動きが取れなくなった。何故だか胸が急に苦しくなるのを感じた。彼女の瞳に映る自分が鮮明に見え、永遠とも思われた時間も彼女の声で現実に引き戻された。


「ご、ごめん! まさか急に起き上がるなんて思わなくて」


そう言って少し身を引いたのは、昼間再会した月南るなだった。


「いや、俺こそごめん! 集中しすぎて音入ってこなかった」


思わず土下座をし頭を下げていた。何だったんだ、今の動悸は!? 俺の心臓……まさか! どっか悪いのか!? そんなことを考えていると頭上から笑い声が聞こえてきた。


「今でもやってるんだね! 昔っから集中したいときよくやってたよね、それ」


そういうと俺の隣に月南が大の字に寝転んだ。おい! そんな短いスカートで! って俺も何考えてんだ! そんな破廉恥な妄想いっぱいの俺をよそに、穏やかな表情の彼女に見入ってしまった。


「そんなに見られると視線が痛いんだけど……」


目を閉じたまま彼女が恥ずかしそうに呟いた。


「ご、ごめん! そのつい!?」


って何言ってんだ、俺! 月南が起き上がると笑いながら『もういいよ』と呟く。


「てか、こんな時間まで自主練? 明日練習試合じゃないの?」


「おぉ、何で明日練習試合って知ってんだ? てか、お前こそこんな遅くまで何やって?」


月南はスカートを払い立ち上がると座り込んでる俺に手を差し出す。


「イギリスと日本じゃ、履修が全然違って三門みかど先生に補習受けてんの。あと練習試合は夏目くんに。見に来てって誘われた」


そうゆうことかと思ったら、掴んでいた月南の手を放したくなくなった。なんなんだこの感情は? 不思議そうに俺を見る月南がぐっと手を引いて立ち上がらせようとするが、彼女の腕力ではビクともしない。


「……永井くん?」


「月南ってもしかして悠飛のこと……」


そこまで話したところで体育館の入り口から日直の先生に声をかけられた。


「もう下校時刻過ぎるから、そろそろ片付けして施錠してくれるかな?」


「はい、わかりました!」


俺は月南の手を離すと立ち上がり、日直の先生に返事をした。そうだ俺はこんなところで無駄な時間を使っているわけにはいかないんだ。全国とゆう大きな目標のもと日々練習しなければ!


「月南、ごめん送ってくから片付けるまでちょっと待ってて」


「うん、わかった」


そのあと着替えを済ませ電車通学の月南を駅まで送った。


「ここで大丈夫?」


「ありがとう。少し遠回りさせちゃったね」


「いいよ、別に10分もかわらないから。それより明日来るんだろ試合? 俺、まじで勝つつもりだから見ててよ」


そう言ってあいさつをすると俺は全速力で自転車をこぎ、自宅まで帰った。

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