game.18
誰も口を開こうとしない中、月南だけが焦って右往左往している。
「ねぇ、夏目くん、鈴木くんいったい何があったの!?」
「月南、俺と付き合え。そしたら全部解決する」
悠飛のいきなりの告白にその場にいた全員が口をパクパクさせた。
「な、なに言って!!」
「やっぱり私情じゃねぇか! いつまでも子供みたいに果苗のこと無視してんじゃねぇ!」
月南は赤面して慌てふためくわ、翔と悠飛は一触即発のこの状況をどうしたら打開できるのか俺には到底わからない。わからないが、少なくとも悠飛は俺のことで怒っていて、その状況を翔は快く思っていないことは確かだ。
「翔、月南、悪いけど悠飛と二人で話をさせてくれ」
悠飛はしぶしぶ俺と二人で話すことを了承し、翔と月南の目の届かない場所へと移動する。二人になったものの何から話していいかさっぱりわからない。そんな俺の様子を見かねて悠飛が口を開く。
「お前さ、いきなりなんなわけ?」
「はぁ? お前こそ最近意味不明にさけやがって」
「付き合うって、お前は月南のこと好きだったんじゃないのかよ?」
「だから、お前こそこの前からさ。月南を好きなのはお前だろ? 俺には関係ない話だろ!」
その瞬間、悠飛に胸倉をつかまれ反応できずにバランスを崩した。
「本気でそう思ってんのかよ!?」
「ってーな……本気って……」
「月南は、お前のことが好きなんだよ!」
悠飛が手を離すと、脱力からその場にしゃがみ込んだ。悪い冗談かよ。そんなわけ……。考えても考えても、月南が俺のことを好きな理由なんて一つもわかるわけなかった。
「……悠飛の考えはわかんないけど、俺小湊さんと付き合うことになったんだ。だから…」
「それって、果苗はその子のこと好きなわけ?」
「…それは……でも、今はあの子のことを大切にしたいと思ってる。悠飛にも…わかってほしい」
背中を向けていた悠飛が髪の毛をガシガシとかきこちらを振り返り、しゃがみこむ俺に手を差し出す。こんなに取り乱した悠飛を見たのは初めてだった。
「悪かった。何か上手くいかんことばっかで、頭に血がのぼってた。八つ当たりした」
「ぷはっ」
えらく早口だったが、俺はまた悠飛とダチやれるってことだよな。思わず笑った俺をバツが悪そうに見る悠飛の手を取り立ち上がる。
2人のもとに戻ると月南が心配そうに駆け寄ってきた。悠飛が翔に謝ると、翔はいつもの調子で軽口をたたく。悠飛は踵を返すと月南の肩をつかんだ。
「さっきのは本気だからな。俺は月南と付き合う」
「はぁー! 私の気持ちはどうなるの?」
ムキになる月南の頭をぽんっと優しく撫でると、『覚悟しとけ』と言わんばかりの笑みで言葉を制す。なんだかんだ、月南は悠飛に好意をもっているのではないかと思った。そして、キャプテンからは魔の坂道ダッシュ2倍の刑に処せられたのだった。