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チェンジ・オブ・ペース  作者: 藤井 頼
16/18

game16 山の夜

1日目の夜練は合わせの確認とシュート練習がメインで20時以降は各自自主練となった。


帰宅とか宿題とか考えず朝から晩までバスケができるのは俺にとって天国に等しい。ただ、今日は悠飛ゆうひとの一件があってから思うようなプレーが出来ず、今も1人残ってシュート練習をしている。


「メンタル弱すぎ…」


1人体育館でぼやいていると、月南るなが最終の連絡をしに来た。確か21時以降は体育館の使用は出来なかったか…。


「もうあがる?」


「ちょっと走ってから風呂行くわ」


「そ、気をつけてね」


荷物をまとめロビーのロッカーに入れると必要最低限の荷物を持ってランニングに出た。施設周りにはランニングコースが整備されていて、途中あの巨大望遠鏡へと続く脇道があった。


確か23時頃までは利用可能だったな…月の観測が出来るらしい。少し走ったら寄ってみるか。山奥だけあって肉眼でも無数に見える星が今にも落ちてきそうだった。


「はっ、はっ、はっ…」


清々しい山の空気が少し肺を刺激した。40分くらいランニングすると、先程の脇道をゆっくりと登っていく。


古びた扉を開けると、広々とした空間が広がり中央には観測用の望遠鏡が備えられていた。望遠鏡の奥には外の展望デッキに繋がる階段があった。


階段を登りきると360°パノラマの展望デッキだった。


「…やばっ!」


吐く息が少し白くなる程度には気温が下がっていた。澄んだ夜空に広がる星を少しの間眺めていた。この景色を独り占めしているかと思うと最高な気分になった。


「そうだ」


ポケットからスマホを取り出して画像に収めようとするも、肉眼で見ている景色には到底敵わない。スマホは諦め、少し汗が引き始めたこともあり施設に戻ろうと階段を降りる。


「…永井くん?」


「月南…?」


望遠鏡を覗く月南の姿を捉えた。


「えっと、永井くんも星?」


「まぁ、ちょっと気になって」


その後、少しの沈黙があって2人同時に口を開いた。


「いや、俺の話は大したことじゃないから月南から」


「…その、この前は変に突っかかったりしてごめん。あと無視みたいなことして。勝手なこと言ってるのはわかるんだけど、前みたい友だちとして一緒にいてもいいかな?」


「いや、俺こそ月南に嫌な思いさせてごめん。俺もまた月南とちゃんと話したいと思ってたんだ。悠飛に月南が泣いてたって聞いて心配した」


「…そうなんだ、夏目くんに見られてたんだ。恥ずかしいとこ見せちゃったな」


そう言うと、明日も朝から早いんだからもう行こうと月南が言った。俺はまた月南と話せるようになったことに気を取られ、この時の月南の本当の気持ちには気づいていなかったのだ。


施設に戻ると早めに大浴場からあがり部屋へと足を運ぶ。


「あ、果苗、おっせーよ。悠飛はもう寝たぞ」


相部屋のかけるが小声で話す。翔もあくびをしてベッドに横になった。俺が帰ってくるのを待っていてくれたようだった。


「ごめん。待っててくれてありがとう」


「おーす、じゃおやすみ」


俺も髪をタオルで乾かしベッドに横になるとものの数分で眠気に襲われた。明日も朝早くから練習だし、悠飛とももう一回話さないと…そんなことを考えているといつのまにか眠りについていた。

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