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チェンジ・オブ・ペース  作者: 藤井 頼
15/18

game15 鈍感

ついにGWが始まり、水瀬高校バスケ部は例年より長い合宿に突入した。


「はぁー、世間は超大型連休で浮かれてるのに、俺たちはこんな山奥で合宿かーーー!!」


「おぉ、滝本いい声出しだな! やる気があってよい、うん」


「モーリー、勘弁してよー」


「こら滝本、森川先生と呼べ。先生と! 先生だってなー、こんな野郎どもと一週間もなんて! 飛行機乗って南の島でナンパ三昧がよかったよ、はぁ」


バスを降りると、大きな宿泊施設を併設する体育館が見えた。小高い丘の上には大型の望遠鏡があるってパンフレットか何かに書いてあったな。


月南るな、荷物半分持つよ」


「あ、ありがとう。夏目くん」


そんな2人の会話をぼーっと後ろから聞いていた。あれから月南とも悠飛ともほとんど話をしていなかった。


「おい、果苗もこれ持てよ」


悠飛が振り返って月南から荷物を一つ寄越した。無言で受け取ると月南と目が合った。


「ありがと」


素っ気ないけど月南は必要最低限の会話はしてくれていた。まぁ、実際あのときは小湊さんとは付き合ってなかったし、月南のことが気になっていたのは嘘ではない。が、月南からしたら、彼女がいるのにあんなことした軽いやつだと軽蔑しても仕方がない状況だった。悠飛は俺と月南のその様子を最近では見て見ぬ振りをしている。


「水瀬高校バスケ部です。今日からお願いします」


「お願いしまーす!!」


標高の高い山だけあって、日がかげるとかなり涼しい。夜は結構冷えると聞いた。バッシュを履いてフロアを踏む。キュッキュッと手入れされてるいい音がした。


「集合!」


キャプテンの掛け声から一週間という長い合宿が始まった。午前中は少し短かったものの、みっちりフットワークと基礎練が詰め込まれていた。


「ふぅ」


体育館の外のテラスで休憩する。タオルで汗を拭うとスマホで時間を確認した。13:37、練習までは20分弱残っていた。メッセージを確認すると小湊さんの名前を見つけた。


『全国に向けて合宿頑張ってください』


『了解』


短く返信し、体育館に戻ろうと立ち上がると後ろから声をかけられた。


「果苗ちょっといいか?」


「あぁ、俺も話がある」


もう一度腰を下ろすと悠飛が話すのを待った。


「この前の朝練のときさ…保健室から帰ってきた月南が、体育館の前で泣いてたことがあって。その後、果苗となんかギクシャクしてるし、これ以上何もなかったなんて言わせないからな」


「月南が泣いてた? 怒ってたじゃなくて?」


なんで月南が泣くんだ? それほど傷ついたってことか? 少し腑に落ちない感じはしたが、その日あったことを端的に悠飛に伝えた。


「はぁ、そうゆうことか…」


悠飛は頭を抱えるとうなだれた。呆れ返ったその様子と俺だけ状況が理解出来ていないことにすごく苛立った。


「俺に彼女がいるとどうして月南が泣くんだよ!?」


「は!? お前は月南のことずっと好きだと思ってたよ。それがいきなり彼女が出来た!? わからないならずっとわからないままでいろよ!」


珍しく感情をむき出しにする悠飛に何も言い返せなかった。


「悠飛、果苗、練習始まるよ〜って、何か取り込み中だった?」


体育館から翔が覗く。


「いや、行こうかける


そう言って悠飛は翔と体育館へ行ってしまった。クソっ! 俺が何かしたのかよ!?

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