game.1 運命の再会!?
何で……こんなに息が苦しいんだ……。 あと1本さえ入れば!! 足も手も今だけでいい……動けーーー!
「果苗!!」
その瞬間、全てがスローモーションに見えた。悠飛が相手のボールをスティールし、苦しまぎれに俺にパスを出した。悠飛に対するディフェンスもかなり厳しい。相手もこの一点差を守るのに必死なのだ。
絶好のポジションで悠飛のパスが俺の手に渡った。これを決めれば! ボールは俺の手を離れゴールに向かい弧を描く。
入れっ! 俺は心の中で強く思った。
「……なえ! 果苗ってば!」
ふと隣を見ると女バスの北浦わかばが俺の名前を呼んでいた。
「何だよ、新学期早々」
北浦は1年のときもクラスが同じでバスケ部とゆう共通点もあり、近すぎず遠すぎずのいい感じの距離感で過ごしてきた。周りの男子は明るく可愛いらしい?この北浦推しのヤツも結構いて、俺は何かと噂をたてられたり、やっかまれることもあった。
「何だよ、じゃないわよ! 新学期早々居眠りなんて、2年だからってたるんでるんじゃない?」
確かに勉強も部活も努力しているところ、俺にはないクラスでの信頼性には感心させられる。……が、俺はこの級長感がどうも苦手でこうゆうときは逃げることを優先している。適当な返事をし、席を離れ教室を出ようとすると後ろから『全く! もうっ!』という小言が聞こえてくる。
俺は素知らぬふりをして廊下へと出た。すると、廊下の向こうに俺の1番の理解者を見つけた。夏目悠飛だ。悠飛は小学校のとき所属していたミニバスのチームで出会った。よくありがちだが、悠飛との出会いは最悪でこんな高校生にもなってつるむなんて、あのときの俺たちでは想像も出来なかったくらいだ。
「悠飛!」
俺の声に気がついてこちらを向く。が、俺を見やると一緒にいた彼女らしき女とまた話し始めた。昔はバスケしか興味なかったのに、いつの間にか彼女なんて作りやがって。そんなことにうつつを抜かして、全国なんて行けんのかよ! 内心悪態をつきながら2人に近づく。
「永井くん、久しぶりだね」
悠飛の彼女らしき女が馴れ馴れしく話しかけてきた。怪訝そうな顔をしていると悠飛が哀れみの表情で俺を見る。
「ほんとお前はバスケ以外興味ないんだな。まぁ、無理もないか、月南に会うのは小5振りだし、なんたってこんなに美人になったんだからな」
少し茶化すように悠飛がそう言った名前に俺は聞き覚えがあった。まさか、あの月南なのか!?
「もう、からかわないでよ夏目くん!」
「何で、月南が?」
俺は勢いあまって月南の肩を掴む。月南は少し驚いた表情で俺を見た。あの頃は身長も月南のが高かった。髪もショートで男みたいだったのに、今目の前にいる高2の月南は髪もロングになりスカートを履いている。まぁ、制服だから当たり前だけど……とにかくどこからどう見ても女子高生である。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「ふふ、永井くんは相変わらずだね! 父の仕事の都合で帰国して4月からこの水瀬に転校してきたってわけ。そしたら同じクラスに夏目くんいて、永井くんにまで会えたってわけ」
月南はずっとミニバスで一緒に練習してきた中だった。しかし、小5のとき親の転勤でイギリスに行ったのだ。
「バスケは!? バスケはまだしてるのか?」
そう聞いたとき月南の表情が一瞬曇った。
「……それが、イギリスの学校に転校してバスケも続けてたんだけど、中2の夏に足やっちゃって……それからはマネージャーとか選手としてはもう……」
悠飛に横から小突かれる。
「そっか……なんか悪りぃ」
「ううん、もう2年前の話だし。とっくに吹っ切れてるよ。それより、永井くんも夏目くんもまだバスケしてるんでしょ? 今度見に行ってもいい!?」
部活見学の約束をすると月南は新しく出来たと思われる女友だちと教室に入って行った。
「おい!」
俺が何を言おうとしているのか察して悪びれる様子もなく話し始める。
「こうゆうのは偶然あった方が運命感じやすいだろ? 俺はお前のこと思って……」
「そうやって、俺を月南に近づけないつもりだったんだろ! お前も好きだったもんな月南のこと」
「え? 俺は今でも好きだよ月南のこと。まさか果苗も好きとかじゃないよな?」
「そ、そんなわけあるか! 何年前の話してんだよ!?」
「じゃー、俺に協力してよ? 月南は俺のものにする予定だから」
「は!?」
月南を? 悠飛が? 冗談だろ!?