入学式
処女作です!
文章は拙く中身は趣味全開、プロット作らず書いてるので取り留めなくなってしまってるかもしれませんが趣味の延長ということで
とある日、母はまだ幼い私に言いました。
恋をしなさい、愛ではなく恋を
私は驚きました、母はこれまで私を見守りはしても道を与えることはなかったからです
恋は相手を思うこと、愛は相手を包むこと
恋は情熱的で愛は理性的
そう言う母は私の頭を優しく撫でて話を続けました
恋は幼い頃の幻、歳をとるとその魔法は解けてしまう、そして恋には仕上げのスパイスが必要なの、なんだかわかるかしら?
私は首を大きく横に振りました
それはほんの少しの秘密と嘘よ
「あぁ、母上。あなたの言うことが10年越しに身に染みております。」
恋とはかくも美しく、そして胸を締め付けるものだったのか、 しかし不思議とそれが心地良い。
思えば私は彼に一体どれほどの嘘をつき、そしてこの先秘密を重ね、そしてそれらを守り通すのか。
「まったく、あなたは罪づくりな男ですね。貴方を慕い、誰よりも貴方に恋していた乙女が散るその瞬間さえこうぐっすりと……。」
そう言って私はわずかの損傷も無い、しかし温もりを失った体に手を置く。
本当は理解している、これは散るなんて生易しいものではない。私が今最も大事にしているこの気持ち、大事にしていたあの環境、その全てを原点に還す行為。
「私は頂に辿り着いてしまった。それでも不可能なことだらけです」
力があれば全てを守ることができる、そんな幻想にうつつを抜かした成れの果てが今の私。
力では、強さでは表面的な敵からは守れても奥に潜む悪意から守り通すことはできない、そんな当たり前のことに気づくことができなかった愚か者。
「あなたは優しい人ですからね。今の私がいなければ取り巻く環境を全力で守り抜こうとするはずです。」
優しすぎるあなたが壊れてしまわない世界、その世界はきっと私がたどり着けなかった世界へ通じてる。
そしてあなたがこの世界を一から構築し直すの。
「そろそろ時間ね。」
私は重い腰を上げひどく醜いそれと向き合う。
「我が名、◯◯◯◯をもって命ずる。」
願いを告げる、そして世界は真白の閃光に包まれた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「兄さん、早く起きないと入学式遅れるよ。」
そんな淡々とした声が聞こえる
「あぁ、入学式な。はいはい、分かってる、今起きる、今起きるぞ、さあ!」
駄目だ、夜更かしのせいで重い瞼が持ち上がることを拒否している。致し方ない、もう少し休息を取ろう。
「起きる気は無いみたいだね……。ま、入学式に遅れようと兄さんのことだから僕には関係ないから先行くね。でもそうだな、兄さんの恩人の椿先輩は悲しむだろうなぁ。繰り返すようだけど僕には関係のないことだ。」
「よし、今起きた!さあ、行こうか!!」
俺、舞鶴唯翔の弟である舞鶴涼太の台詞半ばで俺の体はムクッと起き上がっていた。
そうだ、なぜ忘れていたのだろう。昨晩は今日のことが待ち遠しく遠足前の子どもさながらの寝付きの悪さだったというのに。
「兄さんのことだから憧れの椿先輩と同じ学校に明日から通うことを思うと夜も眠れないほど楽しみにしていたせいで朝起きられなくなったんでしょ。」
やれやれ、とでも言いそうな表情で唯翔を見る涼太に唯翔は口を尖らせて反論する。
「仕方ないだろ、椿先輩は俺の全てなんだから。イメージで言うとだな、大好きなバンドの推しメンと同じ学校に通えるのと同じようなものだ。」
心なしか弟の目が冷たい。いや、むしろ憐れみの念すら感じる。やめて、兄をそんな目で見ないで!
「末期だね。」
「いや、もう少しオブラートに包めよ。」
こんなやり取りはともかく早く準備しないと本格的に入学式に遅れてしまう。
そんな兄の考えてることを読んだのか涼太は「じゃあ玄関で待ってるから早めに支度終わらせてね。」と言い唯翔の部屋を後にする。
「待たせたな。」
十分後、ようやく家を出た唯翔は涼太に詫びを入れ通学路を歩き始める。
涼太は四月生まれの唯翔に対して二月生まれの同級生でもある。同じ学年の中に兄弟がいるという状況はなかなかに面倒だ。兄と弟という上下の括りが校内では同級生という横の括りになる。他の同級生にとっては唯翔と友達であれば涼太にとって兄の友達、同時に同級生という対等の立場でもあり逆もまた然りだ。
それも踏まえて涼太には自分と別の高校を提案したんだけどなぁ。
まあ涼太が決めた以上自分にはどうすることもできなかった。
涼太にこの提案をしたのはもう1つの理由があるのだが。
「ねえ、あの人カッコよくない!」
「え、どれどれ。うわ、ホントだ!芸能人かなぁ。」
少し離れたところを歩いている女の子二人からそんな話し声が聞こえる。
「はぁ……。これだから外はあまり歩きたくないんだよな。」
そう言い大袈裟にため息をつく涼太。
そう、これが2つ目の理由涼太はモテる。とにかくモテる。大きな目、綺麗な肌、均衡の整った顔にそこそこ高身長、脱いだらすごい典型的な細マッチョに付け加えて家族の前ではそこまででもないがクールな雰囲気。家族の贔屓目を抜きにしてもトップモデル並みだ。そして涼太はどんな格好ですら似合ってしまう。中学の文化祭で女装をさせられた涼太は何も知らない他校の男子の心を次々と奪い計13回もナンパをされた。もちろん全て断ったが。
今ではそれほどでもないが中学二年の頃までは兄弟間の格差にコンプレックスを抱いたものだ。
「まあそう言うなって。あの子達も悪気は無いだろうしさ。」
「学校に着いてからもこうなると思うと先が思いやられるよ。こういうこと喜ぶ人と迷惑に思う人がいることをわかって欲しい。」
唯翔たちがこれから通うことになる私立雪椿学園高等部は簡単に言うとお嬢様、お坊っちゃま校だ。
俺がここを受けたいって言った時の両親の顔はすごかったなぁ
聞き間違いだと思われ三回言い直したのだが徐々に顔が引きつっていく様はきっとこの先忘れることはないだろう。
やっぱり涼太がこの学校受験したのは品のある学校では中学の時のように変な騒がれ方をしないと踏んだからだろうか。
唯翔はふと湧いたそんな質問を涼太に投げかける
「涼太、お前が俺と同じ学校受けたのってやっぱり金持ちが通う品のいい高校だからか?」
「違う。」
即答だった。
「彼女がこの学校に通うって言ったからだよ。第一いくら品が良くても今度は遠回しにアプローチをかけられるだけだ。建前の時間だけ拘束時間が増えて断る時にこちらもキツく断ることができないあたりタチが悪い。」
まあ言われてみればそう言えなくもない。しかし彼女が理由とは驚いた。涼太は良くも悪くもそういうあたりは冷めていて別々の高校でも気にならないタイプだと思っていた。むしろ彼女の方は一途さが滲み出るタイプだから彼女が涼太に合わせたのだとばかり思っていた。
「人は見かけによらないってことか。」
「どう言う意味?」
「いや、なんでもない。こっちの話だ。」
車のエンジン音が近づく。
道の端に避けると運転手から軽い会釈をされた。
ここ雪美町は非常に長い坂と平坦な土地で構成されている。坂の一番上にある雪椿学園は登校するにはずっと登り坂、下校するにはずっと下り坂ということもあって車での通学も少なくない。
「さっきから外車率高いなぁ。」
体感十台に一台は外車な気がする。
「そういう学校だからね、仕方ない。」
そう言う二人の横を大名駕籠を水平に保ちながらスタスタと歩き去る二人の男。
よし、見なかったことにしよう。突っ込んだら負けな気がする。
「って、なんだアレ!?江戸時代かよ!」
無理だった。いや、でもあれは仕方ない。大名駕籠なんて初めて見たよ。
「……きっとあの中にいる人は学園の中でもトップレベルで関わりを持つべきでない人だね。」
普段は冷静な涼太が珍しく取り乱している。
そんなこんなでたどり着いた雪椿学園は想像を絶するほど広かった。
「じゃあ僕はある程度設備を見てから会場へ向かうから兄さんは先へ行っておいて。」
「俺も学校回ろうか?」
「ごめん、先約があるからそっちと回るよ。」
あぁ、彼女と約束していたのか。なら邪魔するのも悪いな。そもそも俺あいつの彼女苦手だし。
「わかった、じゃあ俺は椿先輩探してくるわ。」
椿先輩はおそらく会場にいるはずだ。そこから探してみよう。
「それでは閉会の言葉、和歌月椿さん。」
結論から言うと唯翔は椿先輩に会うことはできなかった。
「それにしても新入生総代が涼太の彼女で閉会の言葉が椿先輩ってどうなってんだ。」
そうため息をつくも唯翔の胸には虚しさしか残らない。
「そう悲観するな、周りに煌びやかな人が多く劣等感に苛まれるのは分からんでもないがこの私がただのつまらない人間をそばに置くと思うか?」
背後から突如かけられたその言葉に唯翔の思考は刹那の間停止する。
懐かしい声、自分が何よりも求めていた人、会うことのできなかったわずか数ヶ月の間でさえも毎晩想い続けた人。
その声を聞き間違えるはずはない。
「椿さん!!」
振り向くと同時にその言葉が口を出た。
「入学おめでとう、唯翔くん。約束通りこの世界から連れ出しに来た。」
読みたい作品と書きたい作品ってやはり違いますよね
ちなみに自分は書くにはご都合主義で無双させて気分よくやりたいけど読むにはハッピーエンドだとしても胸を締め付ける展開がある方がいいです笑
さっぱりと終わりを迎えるより燃え尽き症候群になる方が好きです
どちらにしようか迷った結果書きたい作品というより後で自分で読んで余韻に浸れる読みたい作品を作ろうと思います