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『金儲けの出来る場所』

『いつの日か』

闇に赤黒い血液が地面を這って徐々に広がって地面に染め、血生臭さを周囲に充満させながら空気に揺られて別の場所に臭いを流す。

蝿達は餌に集って皮膚を千切りながら背の高い茶髪の青年を貪っていた。

其処から数メートル程離れた場所に一人乗りの小型空挺船が一台鎮座して、時間が経つごとに原型を失っていく肉片を見つめていた。


『金儲けが出来る場所』underneath it all.

雲一つない晴天に、陸の一切見えない地平線の彼方まで続く海が視界に映る。

前後に小型のプロペラが半球体に包まれて、人が乗れるようにパイプと座席が用意された小型空挺船が沢山の旅荷物を満載して蒼白い空と、海の青さの中飛んでいた。

「あっ....駄目だ!」

『わぁ、ビックリした!忘れ物でもしたの?』

「そうなんだよ!前の空挺船で地図を忘れた...戻るしかないかなぁ」

『また⁉︎忘れ物はこれで何回目だったかな?』

他愛ない話が運転手と小型空挺船で飛び交って、結局論されて仕方なく次の空挺船を目指す事になった運転手は溜息を吐いた。

『ねぇ、アレ!空挺船だよ!』

突然下から響く声に驚嘆の声を漏らして視界を正面に向けると、流線型の鉄の塊の影が不知火のように揺らめいて、表面には幾つもの太いパイプが少し離れた表面と繋がりあった『空を飛ぶ鯨』を見詰めて言葉を奪われた。

「何だアレ...いや、存在する事自体は聞いてた...けど、本当に見れるとは....」

『いい物も拝めたし、旅やめる?』

「旅をやめるつもりはないよ」

『意気地なし』

「甲斐性なし」


徐々に船体後部に迫るにつれて、想像を遥かに超えた巨大な空挺船だと気付かされた。

薄ぼんやりとしか見えなかった物が徐々に鮮明に見えて恐怖することはよくあることで、表面には幾つもの窓硝子が張られて、昼寝や娯楽、勿論仕事をしている人々が窓硝子越しから蟻の群れを見るように忙しなく動いていた。

空挺船が此方に気付いたようで、船体後部が鯨が口を開けたように開いて、数人の乗組員の誘導に従って空挺船内部に入った。

内部も遥かに大きく、都市一つ収納しても余る程で、収納庫でさえ村一つは飲み込めそうだった。

他にも旅人達や商人達の大中小様々な空挺船も動き、荷物を運び、修理されて、様々だった。

「どうも旅人さん、『空飛ぶ鯨』にようこそ!歓迎しますよ!」

「どうも...えぇと、噂には聞いてましたけど、これほど巨大な空挺船とは思いませんでした」

「あはは、此処より巨大な空挺船は中々ありませんよ」

小型船の運転手の質問に胸を張って自慢するように述べる乗組員に、小型船がもっと巨大な物を見た事あるけど、と張り合うように踵を返せば運転手に軽く座席を叩かれて黙り込んだ。

その後、乗組員の非常に簡単な説明を受けて収納庫から船内街に運ぶ為の貨物エレベータに乗せてもらって、数秒程鉄の壁を見詰めてると突然壁が消えて街が見えた。

ビル群が街中央に建ち並んで、それを囲むように小さな住宅地と集合住宅が心狭しと建てられて綺麗な街並みを保つ為に郊外は草原のように草花達と樹木が場所を取り合ってた。

「凄いな...」

『これほど大きな空挺街だとトラブルの一つや二つあってもおかしくないね』

「確かに...巻き込まれないようにしないと」

突然エレベータは止まって、機械音の自動音声が響けば空挺船と運転手が街を褒め称えながら降りて草花を踏みしめた。

降りた場所付近には建築物や住宅地はなく、巨大な蛍光灯が太陽のように光輝いて肌を焼いた。

『今は夏だから季節感を忘れないように態と暑くしているのか』

空挺船の解説に生返事しながら、照りで微かに熱持った座席に跨がれば舳先を街に向けて、緩やかな草原に一本伸びた舗装された白い道に沿うように空挺船を走り出させた。

過ぎ去る樹木を横目に時折丸太で作られた丈夫そうなログハウスと子供や老夫婦達が楽しげに生活している姿も見えて空挺船が"羨ましいね"とひとりごちた。

その日は街並みを眺めながら必要な消耗品や燃料の購入、衣類の洗濯で時間を費やして観光は次の日に回す事にして、ビル群の中に聳える国営の格安ホテルで休息をとった。

次の日の明朝の蒼白い空と共に運転手は起きて、ゆっくりと大きな伸びをしてから寝間着から深緑の頭部を覆い隠せる布地が付いた旅人間では"パーカー"と呼ばれて愛されている衣類に色を合わせたような木綿の深緑のパンツに着替えて、腰元から黒色のプラスチック製のホルスターを右腿で固定して茶色のグリップの目立つ拳銃を収納した。

「今日も頑張ろう」

と薄暗い部屋でひとりごちて街に出かけた。

人工的に作られた雲が空を漂い人工太陽を時折隠して突き通る日光が空挺船と運転手を照らして熱く焦がす。

『観光っていっても...こう暑いと萎えるね』

「そうかな、僕は暑い方が好きだけど」

『変わり者』

「何か言った?」

『なんでも』

ビル群と住宅地が密集する鉄の森から離れた場所の草原に場違いな茶色のコンクリートが敷き詰められた道路が草木達を抉って伸びて、そこに一人と一台が言葉が交わしながら走っていた。

辺り一面草原の郊外に一軒の丸太と所々に補強用の丸石が隙間に敷き詰められた古いログハウスが遠くに見えて、空挺船の速度を少し上げた。

「誰か居ると思うかい?」

『気配はするけど...どうだろう』

空挺船を虫達に齧られた大きな樹木に凭れさせて止めて、木々に囲まれたログハウスの木目が所々劣化した扉に近付いて軽く扉を叩いた。

軋み音が数回響いて扉が半ば開かれると、首を覆い隠すような程伸びきった白髭を弄りながら初老の男が顔だけを覗かせて怪訝そうに運転手を見詰めた。

「あんた旅人かい?老いぼれに何か用事でも?」

「この空挺船の歴史を知りたいので尋ねました。都市部の人達は忙しそうだったので」

暫くして、陽樹と陰樹が生い茂る森林に二発の破裂音が響いて消えた。


樹木の表面に小さな虫が顔を出して、空挺船の車体を這い回った。

『あ、こら!やめろ!』

抵抗虚しく猫や鳥達が物珍しそうにやって来ては座席やハンドルに留まって、寛いでいた。

『僕はホテルじゃないんだけどなぁ...』

空挺船がひとりごちて、いつかのある日を思い出していた。

薄暗い暗闇に包まれた路地裏で、運転手だった、陽気で大きな鞄を持った少年の死体と、少年に幾つも穴ぼこを開けた今の運転手の姿を。

彼女は鳥の嘴のように丸みを帯びて、グリップには星マークが刻まれた拳銃を死体に構えて、原型を崩していく前運転手の肉片を見詰めてた。

昔も此れからも、忘れる事はない。

暫くして、人工の太陽はゆっくりと色を変えながら移動して、陽樹達とビル群をゆっくりと塗り替えていった、運転手も微かに緑の服装が黄土色と赤色に染まっていた。

何事も無かったように、空挺船に向かって軽く右手を振りながら、近付いてきた。

『終わった?』

「うん」

『報酬は少ないのによくやるね』

「家内の使える物は全て盗ってきたから、報酬に上乗せすればそれなりの額にはなるよ」

『でもビックリしたよね』

「ん?あぁ...確かに」

『入船するかわりに老人を殺さなきゃいけない、なんて横暴だよねぇ』

『....そうだね』

運転手は日光の照りで熱々のフライパンになった座席に跨って悪態を吐けば、空挺船を走らせた。

ビル街に戻って、運転手を物珍しそうに見詰める住人達を掻き分けて、ドーム型の屋根が目立つ市役所に向かった。

内部はお役所仕事を淡々と消化する役人と、何故か苛立ちを抑えられないように「早くしろ」や「何をそんなに時間がかかるんだ」等の言葉が飛び交っていた。

怒号が飛び交う窓口を横目に、運転手は一人の役人をつかまえて尋ねた。

「あの人達は?」

「あれは旅人に老人を殺されたと訴えてる人々ですよ。貴女も旅人さんでしょうし説明されたと思いますが、我々の空挺船に入るには老人を一人殺さないといけないでしょう?それに反対する愚かな人々です。」

「なるほど...それともう一つ聞きたい事が」

「なんです?」

「...何故そんな制度が?」


「なるほど...大体は理解できた」

『僕は何となく察してたけど、改めて見ると変だね』

運転手と空挺船の視界には、歴史が長々と描かれた絵や書本などが額縁や、本棚に心狭しと並ぶ部屋が映っていた。

役人に案内された歴史博物館は、一つの大広間に書類等を並べただけの簡易な造りで、人払いをするように吹く冷房の風が運転手を震えさせていた。

運転手が目を通した書物には、物語調で歴史が描かれていた。

要約すると、乱暴な王を討ち取って、所持していた空挺船を生活の場として使って暮らしていたが、飢饉と流行病がやって来て沢山の人々が亡くなったので、新国王が若者と比べると価値のない老人達を投票で殺害して病の浄化と食糧の節約に成功した、と。

「入船条件の殺害人数は一人だけだったかな」

『自己申告だから二人殺害してもバレやしないけどね』

「そっか...それじゃあ行くよ」

『新国王を殺害するのはお勧めしないよ?何が変わる訳でもないし...』

「ん?そんな事しないさ」


商人達が頻繁に出入りする姿を横目に、休憩時間を貰ったので珈琲に口を付けながら寛いでいた。

すると、以前手続きを担当した若い旅人が空挺船に大量の金貨が入った絹袋を船体前部に紐で括り付けて出国手続きをしに来た。

四日の短い滞在期間で荒稼ぎでもしたのか、運転手は上機嫌の様子で差し出した書類に記入していた。

「旅人さん...何処でその大金を?」

入国前は旅人故に裕福な物は持ってないとは思ってたが、そんな人物が大金を持って出国する事は不審に思って尋ねてしまった、審査官だから多少の無礼は許されるだろう。

「これは貴方の国の国王を脅して貰ったお金です。何も不審な事はないですよ」

旅人の当たり前の事を述べるような口調に一瞬理解できなかったが、小型船に跨って出国した数秒後に意味に気付いて慌てて無線を取った。


『本当にお金の話になると頭が冴えるね』

「褒め言葉として受け取るよ」

『次は何処に行くの?』

「取り敢えず...当てもなく彷徨うさ」

『それより...地図は買えた?』

「あ...」


他の旅人から聞いた話では『空飛ぶ鯨』には老人を殺さないと入れない制度を使って国王を脅す人々が多出したらしく、国王はすぐに制度を廃止したらしい。

初めましてZUKです。

銀河鉄道999と海外ドラマを見て思い付いた物語で、一週間程飽きては書いてを繰り返したので文法とか誤字あると思いますが、有ればコメントください...。

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