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湖の悪魔  作者: ビリオン
4/4

少年と世界

バッドエンドっぽい

 聖女が悪魔に挑んでから長い年月の過ぎたある日。

 湖に、ある少年が近づいて来ました。


 少年は土や泥、更には血などで体を汚し、ボロ切れと言える布を纏っていました。

 元々白く綺麗であったと思われる髪は、土などで黄土色になり、血がこべり付き、一部だけ赤黒く変わっていました。


 少年は湖のほとりで祈りました。


「悪魔様、悪魔様。どうか、自分の前に姿を現してください」


 その祈りに湖は応え、青く光り輝きました。

 その湖の中心から、出て来た悪魔は、蝙蝠の羽を生やし、牛のようなツノを持つ恐ろしい見た目でした。


 そしてそれは、少年が亡き母から聞いた伝承通りだったのです。

 ある時は雨を降らし、ある時は雷を起こし、討伐に来た聖女を返り討ちにし、世界をも滅ぼせるという伝説の存在。

 湖の悪魔。


 その存在が今、少年の目の前にあるのです。

 悪魔は言いました。



「さあ、願いを言え」


 悪魔の態度は、昔少年が一度だけ見たことのある傲慢な貴族のように、自分が偉いと信じて疑わないものでした。


 少しだけ嫌な思い出が頭の中に浮かんでしまい、少年は苦虫を潰したような表情を浮かべてしまいました。

 ですが、悪魔に願いを叶えてもらおうとしているため、すぐに表情を戻しました。


 そして、少年は言いました。


「世界を、世界を滅ぼしてください。悪魔様なら、それができると聞きました」

「何故だ?」


 悪魔はすぐに問いました。


 そして、少年の口から出たのは、怨嗟の声。憎悪の声。人が聞くだけでトラウマになるような地獄の内容でした。


「––––だから、世界を滅ぼしてください。世界に、平等に、滅びを」


 最後に少年は、そう言いました。


 悪魔が答えたのは一言。


「そうか」


 それだけでした。

 悪魔は、少年に同情などしていませんでした。

 仮にも悪魔です。そんな感情など殆どありません。


 悪魔は言いました。


「では、魂をもらおう。前払いだ」

「えっ!?」


 少年は驚きました。

 伝え聞いた話では、魂を取られるのは決まって最後であったからです。


 だからこそ、少年は戸惑いました。


「あ、悪魔様。願いを叶えた後ではダメでしょうか?私は、世界が滅ぶのを見届けたいのです」


 その言葉に、悪魔は答えました。


「ダメだ」


 完全な拒絶。

 地の底から響いてるような声で、悪魔は答えました。


 ですが、少年も簡単には引き下がれません。

何しろ自分の魂です。

少しとはいえ、寿命の長さが決まるのです。


だから少年は悪魔に問いました。


「な、何故ですか!!」


「では、お前は願いを叶えなくて良いのか? 世界を滅ぼさないで良いのか?」


 そう、悪魔に言われて仕舞えば少年にはどうにもできませんでした。


 そして少年は諦め、言いました。


「わかりました。魂は今渡します。ですが!必ず、世界を滅ぼしてください」


 少年のその意思に、悪魔ですら、いや、それを見たことのない悪魔だからこそ、引き込まれてしまいそうでした。


「ああ、約束しよう」


 悪魔はそう言い、呪文を唱え始めました。


 そして少年は魂を取られる直前、言いました。


「約束、ですよ」


 その言葉に、悪魔は答えませんでした。


 少年の体は支えを失ったように倒れ、動かなくなりました。


 悪魔はその少年を見下ろし、空を一度見上げ–––––––




































 ––––––––––湖の中に帰って行きました。


「これで百個目。やっと試験クリアだ〜」


 悪魔と思えぬ軽い声で最後に言い残して。


 〜おしまい〜

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