三人での、帰り道
「今日も、道案内お願いしていい?」
藤宮の口にしたその言葉は、色々とまずかった。
勿論それは周りの人に聞こえる声の大きさなので、案の定、夏希には聞こえていた。
「は?!春也アンタいつの間に藤宮さんとそんなに仲良くなったの?!」
夏希はすぐに振り向いて、俺に向かってそう言った。
別に隠すことでもないので昨日のことを話した。
「いやさ、昨日藤宮が家までの道わからなかったから送ってったんだよ。あと藤宮の家、俺らの家からすげー近い。」
「嘘!?知らなかった!どーして昨日言わなかったのよ!」
「別に理由はねーよ。言うの忘れてただけだって」
というか、お前の髪型の方が衝撃強かったし。
「....えっと、春也くん」
すると、藤宮が口を開いた。
つい俺と夏希は、藤宮を爪弾きにして会話をしてしまっていた。
「あっ!ごめんね藤宮さん、蚊帳の外にしちゃって」
夏希は、急いで藤宮の方を向き直し謝罪した。
「別に...そんなことは、無いけど」
藤宮は、少し困った様な顔をした。
なんだ、そっち系の表情はあるのか。
そんなことを考えていると、夏希が皆で帰ろうと言うので、
俺、夏希、藤宮の三人で帰ることになった。
× × ×
「そいえば夏希、藤宮に自己紹介しろよ」
帰り道で、俺は昨日の経験を活かし、夏希に名乗ることを勧めた。
だが藤宮はもうすでに、ご存知だった。
「大丈夫、知ってるから。山寺夏希さんでしょ?」
「おいおい、何で知ってんだよ。俺の覚えてなかったのに...。」
「覚えてなかったんじゃなくて、知らなかったの。山寺さん春也くんの前の席だし、よく喋るとこ見るから知ってた」
なんだよ、最初の挨拶で俺の名前教えとけば良かった...。
「えー!やった!それじゃ、これから仲良くしようね、
ちーちゃん!」
夏希は喜びながら、言う。
「えっと、ちーちゃんって??」
いきなり、多分自分のであるだろうあだ名を呼ばれた藤宮は、少し驚いたように見えた。
なんかあれだな、今日で藤宮の表情読めるようになってきたな。
「千秋だから、ちーちゃんだよ!あっ、私のことは下の名前で呼んでもいいよ!」
「....うん、わかった。
...夏希」
「よし!これで私達友達だね!」
そんな二人を見ながら、夏希と藤宮が、仲良くなったのが嬉しかったのと同時に
何故だか不安を感じた。
× × ×
それからしばらくは、夏希と藤宮の二人だけで会話をしていた。
今度は俺が蚊帳の外みたいだな。
そんな冗談を思いながら、二人を後ろから眺めて歩いていると、夏希は何か見つけたようだ。
「あっ!花火大会のポスター!今週末に祭りあるのすっかり忘れてた!」
「あー翔琉達も話してたな、今年どーする?」
「そーねぇ、今年三人で行こうよ!ちーちゃん、いいでしょ?」
夏希そうが言うと藤宮が口を開いた。
「私はいない方いいんじゃ...、二人とも付き合ってるんじゃないの?」
やはり周りからはそう見えているのだと思った。
きっと、俺はまだ無自覚のうちに夏希で、周りから逃げていた。
そして、当の本人からも...
次回から少しペース遅れます!!