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梓発見。そして…

「いないなー」

「いないわねー」

「いませんね……」


俺、夏希、野田さんの三人はそれぞれの心中を口にする。それらが見事に一致したところで俺達は出店がたくさん並んでいる道の横にあったベンチに腰を掛ける。


健ちゃん捜索隊を結成して早くも四十分。

もう少し簡単に発見できるものだと思っていたが、健人はなかなか見つからない。


マジでどこにいんだよあのデカブツ。

……なんてことは本人の彼女の前では言えず、黙り混んでしまう俺。


「なんかスミマセン……。お二人にまで迷惑かけちゃって……」

「いいのよ、別に。困ったときはお互い様……なんて、私そんな柄じゃないかー」


 肩を落として言う野田さんに夏希は慰めるように答える。

 俺もそんな夏希に便乗して、

「そーそー、別に変な気遣わなくていいよ」

「ちょっと、私を巻き込んだの春也でしょ! あんたは少し反省しなさいよ」

「なんだよ、物で釣ったらすぐに満更でも無さそうにしてたくせにさ」

「あ、あれは、別に……あんたが……」


 夏希が何故か顔を赤くして言い淀んでいると、野田さんが口を開いた。


「お二人って、すごい仲が良いんですね。あの、やっぱり、お付き合い……されているんですか?」


という野田さんの台詞に俺と夏希は一瞬固まる。

藤宮に言われた時もそうだったが、その言葉は俺と夏希の間では一番答え難いものとなってしまっている。


そんな質問に先に開口したのは、


「まさかー、ぜんっぜんそんなんじゃないわよー」


夏希は笑いながら答えた。


「どうしてか、皆にそう言われるのよねー。別に仲が悪いわけじゃないんだけどさ」

「そうなんですか。ごめんなさい勘違いしちゃって」

「いいのよ別に。多分、私のせいでそう見られちゃうのかもしれないし。……あの、えっと、だからね」

「あ、大丈夫です。ちょっと分かっちゃいました」


続けようとする夏希の発言に野田さんは手でストップを掛ける。


そして、その一連のやり取りを見ていた俺も、夏希の言っている意味が分かってしまうのだった。


俺は二人から視線を外して前に送る。すると、


「おーい、梓ぁ」


気の抜けたような低い声と共に、元塗り壁が姿を見せた。


「あ、健ちゃんだ」


夏希の隣にいた野田さんがそう言って立ち上がると、健人に向かって駆け足で近付いていった。

健人の下へ野田さんが辿り着くと、彼は安堵したような表情をした。きっと、健人も野田さんを探していたんだろう。

そして健人は俺達に向かって手を振り、俺と夏希もそれに振り返した。その後、二人は手を繋いで行ってしまい、俺はその後ろ姿をしばらく眺めていた。


「仲良しなんだろうね、あの二人」


こちらを見ずに夏希はそう言った。

しかし、


――じゃあ、私達は?


俺は、そんな風な解釈を勝手にしてしまう。

ついに思ってしまったのだ。もし夏希が俺のことを本当に好きなのだとしたら、俺は今まで彼女を傷付け続けたことになる。

夏希は傷付きながら俺を甘やかし、俺は自分のために俺を甘やかした。


ちょっとしたきっかけで、自分の馬鹿さに気付けて良かった。



『――きっと、春也は何もわかろうとしてないだけだよ』


昨日、藤宮はそう言った。

それなら、俺がわかろうとすることで夏希の為になるのならそうしよう。

中二の夏の時と同じ過ちをしないように。


「なぁ、夏希……」


そう考えた俺は小さく決心をした。


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