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文化祭準備6

× × ×


「――はい。これでよかった?」


藤宮千秋は缶コーラを俺に渡しながら、そう質問する。


日が落ちかけた頃の中庭で、俺逹は、二人でベンチに座っていた。俺は藤宮から缶コーラを受け取ると、どういうことだろう? と疑問に思い、聞いてみる。


「……あれ、貸し借り無しじゃなかったっけ?」

「別に……貸しを作ってるだけだよ」

「そっか」

「それより、春也はよく炭酸飲料買うけど、そればっかりだと体に悪いよ」

「ゆとり世代の生き残りだからな。……まあ、気を付けとくわ」

藤宮に軽く注意をされ、俺は苦笑いをする。


「それで、話って何?」

「うちのクラスに三浦っているだろ? 分かるか?」

質問すると、藤宮は軽く頷く。

「うん。あのチャラそう…? な人でしょ?」

彼女はそう答えた。微妙にマイナスな印象を持たれていた三浦に、心の中で少し同情をした。チャラそうだってよ……三浦、ドンマイ。


「で、その人がなに?」

「それで、その三浦がさ、……えっと、その……」

俺はつい、ごもってしまう。彼女に関してのプライベートな質問をしようとしていることに緊張してるのだろうか。


そうしていると藤宮の方が先に口を開いた。

「つまり、告白ですか?」

と、藤宮は真顔で言う。君の予想はまあ分かるが、まぁ落ち着きたまえよ……。


「……いや、そこまでじゃないんだ。ごめん、ちゃんと言うから」

藤宮は「わかった」と言って、俺の言葉を待つ。


「えっとさ……藤宮って、彼氏いるの?」

「いないよ」


……即答。


三浦にとってbadな展開をある程度は予想していたが、大丈夫な様だ。


「というか、恋人作れるんだったら、前の学校でも人間関係しっかり出来たよ。彼氏どうこうより、友達作れてもいなかったし……」

「あー、まあ、そーなんだ……」


何だろう、ここでも慰めの言葉はドンマイだろうか?


「……それで、三浦くんは、私からそれを聞いてどうするの?」

「どーだろうな。それこそ告白じゃないの? お前のこと気になってるらしいし」

「そっか……」

藤宮はそう呟いて黙ってしまう。そんな無表情な彼女に俺は、「モテますね、藤宮さん」と軽く茶化してみると彼女は小さく口を開いた。


「……やめてよ」

不服そうに藤宮は拳を俺の二の腕に、ぐりぐりと押し付けてくる。


「やっぱり、こういうのあると、私って可愛いのかな? とか思うの?」

「んー、どうだろ。私、自分の見た目とか興味ないし」

「それって、他の女子に対して嫌味になんない? 転校当初とか周り、凄かったじゃん」

「自分のこと可愛いなんて言ってる方も嫌味だよ。そもそも、自分で自分評価しても、まんまり意味無いでしょ」


確かに。彼女の言うことには納得が出来た。


「でも、どーなの? 女子ってやっぱ、彼氏は欲しいもんなの?」


「……一概に、皆が皆とは言えないけど、過半数は恋人が欲しいんじゃないかな。私たち、まだ高校生だし」


「藤宮も、そうなん……?」


俺が質問すると、しばらく沈黙した後に、

「……まあ、どちらかと言えば」

と藤宮はそう答えた。


「じゃあ、俺とかどうすか?」


「……また、そんな冗談言って……」

藤宮は俺の肩に、自身の握った拳を今度は少し強めに当てた。


「そういうのは、夏希の前では……やめてあげて……」

彼女は真っ直ぐに、俺の目を睨み付けるように見て、言った。


「多分、夏希は色々我慢してる。でも、二人の関係をもっと明瞭にしないと、その我慢も終わらない。……そういうの、夏希が可哀想だよ」


「でも、今、夏希が俺の事どう思ってるかなんて分かんねえだろ」


「わかるよ」


彼女はそう呟いて立ち上がる。


「言われなくても……わかる。……わかっちゃうんだよ。きっと――」


言いかけて、藤宮は数歩前に進む。俺が眺める彼女の後ろ姿からは、どんな感情も読み取る事は出来なかった。


俺を見ないで、彼女は言った。


――きっと、春也は何もわかろうとしてないだけだよ。



その瞬間、少しだけ強めの突風が吹いて、藤宮は自分の長い髪の毛を押さえる。


そして、同時に彼女のスカートも捲れ上がる。


未だに開けていなかった缶コーラを俺は地面に落とし、一瞬のその光景に目を奪われていた。


白。いや、薄いピンクか……


俺は呆けながら色を確認する。

それに気付いた藤宮は、髪を押さえていたのと逆の手で、慌ててお尻を隠した。

彼女は振り向き、俺と目が合う。

恥ずかしさからか、夕焼けのせいか、彼女の頬は若干紅潮しているようにも見える。


「見たよね……?」


俺は頷いて、恥ずかしさに我慢できず照れ笑いをした。


「ごめん。……見ちゃったわ」

俺は正直にそう答える。



「……まったく、風のくせに空気読めないんだね」

藤宮は俯いて、乱れた自分の髪の毛を撫でて直して、顔を上げる。




「これで、貸しがふたつだね」


そう言った藤宮は目を細め、歯を見せて、ニカッと明るい笑顔を見せる。


彼女のそんな表情は初めて見た筈なのに、藤宮にはそんな、はにかんだ笑顔がとても似合っていた。



――そして翌日、高校初の文化祭が開催された。



今回で準備編は終了です。次回から文化祭本番です。

まあ、事件らしい事件は起きませんけど。

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