文化祭準備2
「もう、春也がいるとこの子達が仕事しなくなるからどっか行ってくれない。正直邪魔よ」
苛ついた夏希は相変わらず、恐かった。声音も雰囲気も怒りを孕んでいて、周りの女子達もいつの間にか黙り混んで悶々と裁縫仕事を進めていた。
一方で俺は夏希に怖じ気づいてしまい、「おぅ……」と答える他無かったので、その場から速やかに退散して教室の外に出た。
暫し、廊下をぶらぶらと歩いていると、前方から高校生らしからぬ髪色の二人が並んでいるのが見えた。片方は、まぁ、奴だろう。
「よう、翔琉っ! 」
俺は言葉と共に大門翔琉の尻に、やや強めの蹴りを入れた。
「っいってーな、なんだよ春也」
翔琉は自分の尻を撫でながら俺を睨みつける。
「ちょうど蹴りやすそうな尻が見えたから、実行してみたんだよ」
「アホか、危うくケツが割れるとこだったわ」
「アホめ、ケツはもうすでに割れてんだよ」
いつものように二人でふざけ合っていると、翔琉の隣にいた赤茶髪の女子生徒と不意に目があった。石川優季だ。
初めて石川を近くで見るが、とても背が高く、一七〇センチより少し高いようだ。俺は、美人とはこういう彼女みたいな人のことをいうのだろうと思うが、対して石川は、俺には興味がある様子もなくずっと窓に視線を向けている。
「そういえば、一組はもう文化祭準備終わったのか?」
「おう、だから他のところ見たりしてんだよ。てか四組は終わったのかよ」
「俺らはまだ全然終わってねーよ」
「ならこんなところで油売ってねーで早く手伝ってこいよ」
「いや、夏希が俺のこと邪魔だって怒るから、仕方なくサボってんだけど」
俺が言うと彼は呆れたように息を吐いた。
「はぁ、まったくお前は……あんまり夏希ちゃん困らせんなよ。春也がどれだけガキでも夏希ちゃんがお前のこと見放さない理由、お前だって分かってんだろ。なら、尚更お前がしっかりする努力しないとだって」
こいつ、一丁前に説教しやがって……なんて、勿論口には出さなかった。翔琉が言っている事が図星なんだって、俺はまだまだ未熟なんだって自分でわかってた。
「……うるせぇな、わかってるよ」
それでも、俺はまだまだ大人にはなれていなかった。
俺の返事を聞いて翔琉は頭を掻きながら、「……本当にわかってんのかよ」と呟いた。
すると彼は、何か見つけたように不意に窓に目を向けて、ニヤリと笑ってから口を開いた。
「おい、春也」
「……なんだよ」
翔琉はこちらを向いて俺の肩に、ポンと手を置く。
「今から、お前が大人になる為の『ミッション』を与えてやるよ」
…………は?




