勉強会(前)
「――よし! テストも近づいてきた事だし、みんなでお勉強会だー! 」
「いいなそれ、賛成! 」
永瀬と翔琉がそんなことを言い出した。
HR後の10分休憩でクラスの皆は、集まって談笑したり、一時限目の授業の準備をしたりと教室は少し賑やかだった。
そして、俺と夏希と藤宮の席の周りにも、翔琉と永瀬、健人が集まり6人で会話をしていた。
「え、俺一人の方が捗るんだけど…」
きっと翔琉と永瀬のことだ。途中で飽きて「遊びにいこう! 」とか言い出しそうだ。
そうなると自分の勉強が出来ないわけで、正直困る。
「おいおい春也…。お前空気読めよ」
「そーだよー。こーゆーのは皆でやるのが重要なの! 」
だが、俺の意見は翔琉&永瀬のハイテンションペアにダメ出しされてしまった。
おぉ、勉強に重要なのは皆が集まることか? 程遠いな。
しかしこの二人はイベント作りに積極的だな。屁理屈を並べながらもみんなをまとめている。
中学の時にそういう立場にいた俺もその時はこんな感じだったのだろうか。
会話の中心の翔琉と永瀬を頬杖を立て眺めながら、そんなことを考えていた。
「そんなこと言って、二人とも勉強教えてもらいたいだけなんだよね? 」
「べ、別にいーじゃねーか! 赤点取ったら平均点取るまで再テストとかやってらんねーよ」
「赤点なんて滅多にとらないよ~。」
健人は翔琉の図星を突くと、笑いながら続けた。
「それに今回中間は5科目だし、範囲もそこまで広くないしね」
成績が良いからなのか健人は余裕そうに見えた。
うちの高校は校則がユルい割に勉強には厳しく、赤点を取ってしまうと週一で補習が行われる。
「……みんなはどれくらい勉強出来るの? 」
健人と翔琉が話していると、藤宮が皆に質問してきた。
「んー、この中だったら春也が一番頭いいよ。」
「ほんとに、なんでこんなのが学年十位以内に入れるのかしら……」
健人が藤宮に答えると、夏希も続けた。
因みに、俺の高校に入ってからの定期テストの結果は、一学期中間が六位で期末が八位と今のところは問題はない。
そう言う夏希も一学年三百人中の三十位以上だし、成績は良い方だ。
てか、こんなのとか言うなよ……
「んーと。期末の結果良い順だとー、吉田君>夏希>佐倉くん>私でー…」
そこまで言うと、永瀬は翔琉の方に目だけを然り気無く向ける。
「ダントツ最下位が翔琉だな」
「おい!」
俺が言うと翔琉が突っ込んできた。
すると、
「それより千秋ちゃんはどーなの? 前の学校での順位とか」
「前の学校は中間期末どっちも1位だった……」
永瀬に藤宮がそう答える。
へぇ、トップか。だからうちの高校レベル高いのに、藤宮は入れたのか。
……だとしても負けたくはねぇな。
予想以上の藤宮の実力にみんな驚いていた。
「え?! そーなの? ちーちゃん凄いじゃん! 」
「勉強出来るとは思ってたけど……、これはもう即戦力ね! 」
即戦力って、藤宮に教えてもらうの前提かよ…
「そんじゃあとりあえず、明後日の土曜日に春也の家な」
そう言って翔琉は俺の肩に手を置いてくる。
「は? 何で俺ん家なんだよ……」
肩の上の腕を払いながら俺は反した。
どうしても駄目と言うわけではないが、自分の家に人が集まるということは何故か嫌だった。
「広いからに決まってんだろ。あと親いないし、うるさく出来んじゃん! 」
「いや、ふざけんなよ」
五月蝿くしたら勉強が出来ないんですが……、それは良いのですか? 結論からすると非常に良くないですね、はい。
しかし俺の考えとは裏腹に、翔琉の提案に周りは納得したようだ。
「いいんじゃない? 私も隣だし行くの楽だわ」
「僕も行ったことがないから春也の家に興味あるな」
「私も行ってみたーい! 」
それぞれ賛成の声をあげると、もう一人も口を開いた。
「……私も見たことあるだけだし
……ちょっと行ってみたい」
藤宮の言葉を聞くと、翔琉はニヤニヤとこちらを窺ってくる。
「はい決まり~! じゃあ11時に春也の家な!」
「……」
マジかよ……
日時場所が決定したところで、この話しは終了となり、完全なる多数決の敗北に、俺はもう反論など出来なかった。